海外旅行・出張危険回避講座 (一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) その32 水中にひそむバンパイヤ
海外旅行・出張危険回避講座
(一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ)
その32 水中にひそむバンパイヤ
サウジアラビアのナジド砂漠を、サウジ人の友人に案内してもらったことがある。行く先は、砂漠の中の地底湖だった。
砂漠の中を走る時には、ガイドをしてくれている友人が「あっちだ」と指さす方向に行くしかない。
広大な砂漠は堅い「土漠」と呼ばれて、どこでも車で走れる。砂丘の砂漠とはイメージが異なる。
遠くに見えていた山脈の1カ所の麓に大きな洞窟があった。斜めに地底に降りていけた。100メートルも降りていないが、そこに地底池があった。水は予想以上に澄んでいた。
アラビア半島は、西の端が1000メートル以上の高い台地になっていて、紅海の湿った雨雲が東に進めず、雨はその台地に降る。それが地中に潜り、東に1500キロほど流れる地底の川となる。ところどころに、オアシスができている。この地底湖もその一つだ。地底湖に案内してくれるというので、水泳パンツを持参していた。
すでに先客のサウジ人の家族が来ていて、子供たちが池で泳いでいた。私の友人のサウジ人は、その家族のところに言って、何か話していたら、泳いでいた子供たちが、池から上がってきた。私はきれいな水を汚さないように注意したのかと思ったら、友人が、「違うんだ。この水には、ビルヘルチアがいるかもしれないんだよ」
「なんだ、そりゃ」と、後で調べたら、「ビルハルツ住血吸虫」のことだった。これが水中にいて、人間の皮膚から体内に侵入してくる。膀胱系に重大な障害を起こすと言われている。
アフリカや中近東の河川、湖沼、沼沢地はビルハルツの危険地帯である。ナイルの川下りのクルーズ観光旅行の間で、ふざけてでも、ナイル川で泳ぐというのも、非常に危険だ。
米国の東海岸のチェサピーク湾には、フィエステリア(Pfiesteria)という真核生物の寄生虫がいる。これが直接毒素を放出したり、感染した魚が毒素のエアロゾルを出すという。その海岸にいるだけでも、皮膚に炎症を起こしたり、目の痛みを起こすこともある。これが半年ほども続くひどい症状となるという。
フィリピンなどでは、野外で豚の丸焼きをするが、あれは注意しないと、生焼けの肉を酒の勢いと、暗いから食べてしまう可能性もある。豚肉には、強烈なエキノコックスなどの寄生虫がいることが多い。 犬や猫のマンソン裂頭条虫にも注意しなければならない。海外で、やたらと猫や犬とキスをしてはいけない。肝臓をやられて肝硬変を起こす
ベトナムでは、ビアホイというビアガーデンがハノイの市内に何カ所かある。そこではジャンボタニシを、巨大な鍋で炒めて提供している。私も何度か食べたことがあるが、ちょうど、大きな甘栗を焼いているのと同じで、山盛りにした鍋で炒めていると、その中には生煮えのものも出てくる可能性がある。そんなジャンボタニシには、広東住血吸虫が寄生している可能性があると聞いて、驚いた。人に入ると、脊髄や脳に寄生して、髄膜脳炎を起こすというから強烈だ。それを聞いて食べるのをやめた。
以来、18年も経っているが異常はない。多分大丈夫だったのだろう。アフリカでは食べている大きなカタツムリの、アフリカマイマイも同じように住血吸虫の塊だ。
余談だが、日本でも、犬やキタキツネなどの糞には、エキノコックスの幼虫が混在していることもある。北海道での感染が多い。日本の河川やネズミには、色々なダニのようなツツガムシが棲息している。北九州や長野の河川地帯には、ツツガムシの感染の可能性がある。日本だって、危ないことがある。
ポイント
(1)暑いからといって、知らない川に飛び込むまえに、必ず地元の人に、危険の有無を確かめること。誰もやっていないところで、うれしがって、水中で寄生虫に攻撃されるのは避けた方がよい。
(2)生の豚肉、川魚、タニシなどの貝類は、徹底的に加熱しないと危ない。刺身は自殺行為だと思うべし。私はすでに海外では、世界中どこででも、生ガキは食べないことにしている。
アイデアマラソン一口メモ