海外旅行・出張危険回避講座 (一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) その23 汁掛け泥棒
海外旅行・出張危険回避講座
(一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) その23
汁掛け泥棒
古典的な犯罪手口で、欧州を頻繁に旅する人は、一度や二度は経験している人が多い。
この手口は、知っていると最悪の事態にならずに防ぐことができる。だからこそ、ぜひとも一読しておいて欲しい。
イタリア・ローマの中央駅から、近くのホテルに向かって歩いていたら、後ろから私の肩をコンコンと叩く人がいた。
見ると、一人のおじさんが、私の背中を指さしている。
「あれっ」と思い、背中に左手を回すと、背広の真ん中に、ハンバーガーの汁が付けられていた。
「わー」と思ったが、私はこのインチキを知っていた。肩を叩いた男は、可哀想にという顔をして、横に立っていたが、この男が、スリで詐欺師なんだ。私はあわてて、手を振って、あっちに行けという顔をして、通りの端に行き、周りにだれもいないところで、上着を脱いで、自分のハンカチを取り出して、汁を拭った。
この犯罪の手口は簡単で、分業となっている。一人が通りで、観光客か、あか抜けしていない私のような外国人を探す。後ろから、紙袋に手を入れて、その中の広口瓶にスプーンを入れて、迫って、スプーン一杯の汁を服の背中の真ん中にぶっかけるか、ぶっ飛ばす。
そして、どんどん先に行ってしまう。もう一人が、背中に掛けられて印が付いている犠牲者の後ろから近づき、肩をコンコンと叩く。背中の異変を教えるのだ。
被害者が驚いて、服を脱ごうとすれば、親切にも、その男は自分のハンカチを取り出して貸してくれる。
「これを使いなさい」と、服を脱ぐのを親切にも助けてくれる。さらに被害者が、ハンカチで、汚れをぬぐい取る間、服を支えていてくれるのだ。
ただし、その間に、服の胸の内側の財布を抜き取っていってくれる。
これだけだ。この詐欺師は、もうこの家業を何十年も続けていて、観光客を食い物にしているのだろうが、ヨーロッパではあまりに有名な犯行であるが、犯行の現場が自分の背中であることから、犯行を防ぐことも、捕まえることも難しい。
肩をコンコン叩いた男に食ってかかることも、警察に突き出すこともできない。彼は汁を持っていないのだから。
この犯行では、捕まる危険が分散されていて、安全に、簡単にスリができるようになっている。うまく考えてある犯行だ。
これはもう古典的犯罪である。今も続けられているはず。外国人を狙いやすいから、被害に遭った日本人も非常に多い。犯行の手口を知っていれば、どうってことはない。
ハンバーグの汁、スパゲッティのトマトの汁、クリームのホイップなどが使われることもある。商社マンですら、何人か被害に遭って、財布とパスポートを盗られているから侮れない。
この犯行は英国でも、フランスでも起こっている。20年ほど前に、日本でも発生した。
私も汁は、二度掛けられている。
まったく別の場所で、服を汚される被害に逢った。
スペイン・バルセロナの町を、家族(大人二人、子供3人)で歩いていた時のことだ。天気も気分も良くて、のどかな観光客をしていた。
突然、背中に軽い衝動を受けた。
「あれっ」と、背中に手を回すと、クリームが付いていた。ふっと前を見ると、紙袋を持った禿げてやせている男が歩いている。
「あいつがやったに違いない」
その男を追いかけた。男は左手に大きな紙袋を持っている。あの中にクリームが入っているのだろうと思ったが、彼が背中に掛けるところを見たわけではない。私が後ろから迫って歩いていくと、その男はどんどん早足になって、左に曲がってしまった。声を掛けるわけにはいかなかった。
「どうしたの」と、後ろからヨメサンが来て、私の背広の背中を見ながら、「ああ、ひどい。一人でさっさと行くからよ」と、言ったが、そのヨメサンの背中にもクリームが付けられていて、ヨメサンは半泣きになっていた。
それ以降は、家族で町を歩く時には、私とヨメサンの後ろに、それぞれ子供を歩かせて、
「大丈夫か?」と子供に後ろも見ないで声を掛け、
「大丈夫で~す」と確認させることにした。
ポイント
(1)スペイン、イタリヤ、フランスでは、後ろから接近してくる人にも注意。
(2)特に両手にカバンなどを持っている旅行者が狙われる。カバンを持ったまま追いかけられないからだ。
(3)被害に遭っても、絶対に誰の助けも得てはならない。
アイデアマラソン一口メモ
ノートに、毎日、自分の思考を書き始めたのは1984年1月だった。すでに28年経過している。この間の、仕事も、家族も、自分の生きがいも、出版してきた膨大な数の本もすべて、アイデアマラソンのノートに書いてきている。
すでに403冊になったA5のファイルノート、何冊書けるだろうか。エジソンは、生涯に5000冊のノートを残しているという。エジソンの発明の秘密が彼のノート術にあることは間違いない。
最新刊のアイデアマラソンの本
「仕事ができる人のノート術」(東洋経済新報社)
一読すればあなたも、毎日発想を残すことができる。それがあなたの財産だ。