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商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

世界珍食事体験  ム-ランル-ジュのギロチン

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世界珍食事体験  ム-ランル-ジュのギロチン

パリに寄った時、私とヨメサンは、ム-ランル-ジュのディナーショ-を見に行った。

 行きは地下鉄を利用したが、パリの地下鉄というのは、その駅の通路を通っているだけで、一種独特の殺気を感じた。
 改札のところの自動改札の装置が並んでいるところまでくると、私たちの前を歩いていた若者がひょいと改札を飛び越えた。要するに無賃乗車ということ。それも駅員の目の前で、ひょいと飛び越えている。これを見るだけでも、フランスの公衆道徳が地に落ちているというのがよく分かった。

 地下鉄を降りて、ム-ランル-ジュに入っていった。ム-ランル-ジュというのは、一応のフルコースのディナーを食べながら、色々なショ-を見たり、手品やダンスなどを楽しめる。
  あまり上等ではないけれど、シャンペンもボトルで出る。前菜やスープやメインディッシュの料理が運ばれてくる。舞台の上のカラフルなショーを、2時間ほど楽しめる。

舞台では、美しい女性たちが、不思議にも上半身はだかで踊っている。
「さすが、ヨーロッパ人の足はきれい。日本人じゃ、とても」とかなんとか、足触りのないことを言っていたに違いない。私はもっと上の方をみていたが。

 大がかりな、かなり大量の水を使ったからくりの芸もあったり、けっこうおもしろかった。私たちが座っていたのが、前から2列目の、良い席だった。だから足でも上でも手品でも、何でも、よく見えた。


 食事も終わり、次にアイスクリームが出てくる前に、女性の曲芸が始まった。両手に帽子のつばだけのような大きな鉄の平たいドーナツの輪をたくさん持っていて、それを空中高く次々と投げ上げて、空中で無限の印∞のようなマークを作って、見事な連続技を見せている。

 すぐ目の前、斜め頭上で曲芸をやっているので、迫力満点。

「すごいね」私はシャンペンの残りを飲み干した。すると、当然の連鎖反応か、自然の欲求を感じた。

 ヨメサンの分のシャンペンなんかを、飲んだ為か、シャンペン飲んで、ションベンに行きたくなった。ぎりぎり我慢したが、もうだめ。

「ちょっと、失礼」と、ヨメサンを席に残してトイレに立ち上がった。

 

 排水処理を済ませて、すました顔をして、席に戻ると。
「あなたは運がついている」って、ヨメサンが言う。

「冗談だろう。ションベンだよ。うんがつくわけないじゃないか」
「トイレのおかげで、命拾いしたのよ、あなたは」と、テーブルの下を指さすと、そこに私のアイスクリームがお鉢ごと落ちていた。
「わあ。おまえは、何のうらみで、私のアイスクリームを落としたんだ」
「違うわよ。ほら、あの曲芸師の鉄の輪、一個、彼女が受け損なって、床に落ち、こちらにドカンと跳ね返って飛んできたの。私の横、ちょうど、あなたが座っていたところに、手裏剣のように飛び込んできたのよ。あなたがそこに座っていたら、間違いなく大怪我。だから、アイスクリームの器が吹っ飛んだのよ」

「......」
「彼女、びっくりしていたわよ。急いで駆けつけてきて、私に『大丈夫でしたか、ごめんなさい』と、謝っていたわ」って、言うんだ。それから、間もなく新しいアイスクリームが届いた。
 

 歴史にもしもは無い。だけど、私がそこに座っていて、目と目の間なんかの急所に鉄の輪がぶち込まれたら、急死となって、
「日本人観光客、ムーランルージュのかぶりつきの席で、頓死。なんて新聞記事になっていたかもしれない。もし私がトイレに行っていなかったら今頃死んでいたかも知れない、もしかしたら私はエスパ-かもしれない。小便で占う。尿意占いだ。

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