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商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

妙な食べ物 その8 ひょん、ひょんと食べた話

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妙な食べ物 その8 ひょん、ひょんと食べた話
 日本大好き、日本食大好きというアメリカ人の技術者を食事に連れていった。郷土料理の店で、様々な食べ物が大きな皿に並んでいた。
「刺身大好きです。私の食べたことのないものを食べたいです」と言いながら、器用に箸を使って食べ、どんどん飲む。
「じゃ、納豆はどうかな」と前に置いた。この臭いを食べるか。
「納豆は大好きです」と、お醤油を掛けてご飯も無しにパクパクと食べる。
「すごいなあ、じゃ、これはどうだろうか」とヒジキの佃煮を出した。全然問題なし。
「まいったなあ。じゃ、これはどうだ」と、イカの塩辛を出した。一瞬だけ、彼の顔が変わったが、私が先に箸を付けて食べると、イカのドロンとした一切れを摘まんでパクっと食べた。
「オイシイデス」
(応えんやつだな)と呆れ出した。以前に、イカの塩辛を見て、外国人の奥さんが戻しそうになったのに。
 イカの塩辛でもっとビールを飲んだ。元気いっぱいだ。
 私は店のご主人を呼んで、
「もっと何か決定的に変わったのはありますかね」と尋ねたら、
「じゃ、待っておいてください」と、持ってきたのがイナゴの佃煮だった。
「さあ、どうだ」とイナゴの佃煮を皿に載せて、テーブルの中央に置いたら、さすがのアメリカ人も顔色が変わった。
 イナゴは、足も胴体も全部が絡まって、団子になっている。真っ黒の上に目立つのが曲がった脚足で、イナゴの大虐殺の丸焼きの団子のようなものだった。コールタールに固めたように見える。地獄の姿だ。

いなごの佃煮 inago01a.jpg

「うーん」と唸っている。「こ、これ、食えるのか。これ食べ物か?」と言う。
「もちろん」
「これは一体何なんだ」と言う。
「これはバッタの大虐殺だ(Massacre of grasshopper)」と言ったら、
「うーん」とまだ唸っている。仕方がない。
「こうして、食べるんだ」と、私はテーブルのイナゴを箸で一匹挟んで、バッタが飛ぶように、テーブルの上を三段跳びで、
「ひょん、ひょん、ひょん、パクっ」と飛ばして食べた。
「うーん」とまだ唸っている。「日本人は何でも食べるんだ。驚いた」そして、ついに彼の箸が動いた。
 一匹を、怖々、箸でつまんで、私と同じように、テーブルの上を、ぴょん、ぴょん飛ばして、とうとうパクっと食べた。と見たら、一口齧っただけで、曲がったイナゴの足は、更に戻した。
 旨いも、不味いも言わなかったが、後に流し込んだビールはすごかった。多分、国に帰って、Grasshopperを食べた話を100回はしているのではないだろうか。

写真を借りたのは、
http://www.chinjuh.mydns.jp/hakubutu/kuirejo/inago_b.htm
素晴らしい記述です。ありがとうございます。



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