オルタナティブ・ブログ > 読むBizワクチン ~一読すれば身に付く体験、防げる危険~ >

商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

西アフリカ"各駅停車飛行機便"に乗ってしまった

»
飛行機珍体験集
西アフリカ各駅停車飛行機便に乗ってしまった

 ベンツのドアを閉めると「ズン」と響く。

 同じように響くのが、昔の飛行機のドアを閉めた時の音だ。飛行機の気密のドアが締められると、もう乗客は乗ってこない。
 
 ナイジェリアのラゴス駐在の時、家族一緒に休暇を終えて、ロンドンのガトウィック空港から、ラゴスに戻るため、ブリティッシュ・カレドニアン航空に搭乗した時のことだ。長男はまだオムツが取れていなかった。スペアの使い捨てのオムツは2個ほどあったが、夕方にラゴスに到着するなら、2個で十分だった。
 
 私達夫婦と長男の3人が、進行方向右側の3席を占めて、シートベルトを締めて出発を待っていた。独特のタータンチェックの柄の制服の背の高いスチュワーデスが、全員のシートベルトを確認して回っていた。

 機体が軽く揺れた。ゲートから離れたのだ。11時を軽く回っていたので、
(到着は夕方か...)
 機内のアナウンスが聞こえるが、外のエンジン音で良く分からないところもある。
「ラゴスへの、到着は○○○4時を予定しています」
「なんか、良く分からない。何時に到着か聞いてみよう」と、私は通りかかったスチュワーデスに、
「ラゴスには何時の到着予定ですか」と尋ねた。
「はい、明日の午後4時ですが」
「えっ、明日ですか」
「そうです。この飛行機は、今からラスパルマス経由で、西アフリカをまわって、明日の夕方4時にラゴスに到着します」
「ちょっと待ってください。それは大変だ。今日、ラゴスに到着するものだと思っていました。間違ってしまった」シートベルトを外しながら、「我々は降りられますか?」
「残念ですが、もうタラップを離れましたので...、だめです」と、スチュワーデスが言う。

 スチュワーデスの顔は半分笑い、半分かわいそうという感じで、
「今からポルトガルのリスボン、カナリー諸島のラスパルマスまで行って、一晩泊まります。明日の朝、ガンビアのバサースト、シェラレオネのフリータウン、ガーナのアクラを経由でナイジェリアのラゴスに到着しますが」(ここでアフリカ西岸の地図が要る)
「何と、西アフリカの旧英国の植民地を転々と回る各駅停車便だ!そんな飛行機便があるなんて、知らなかった。どうしよう。(ラゴスの)事務所長に叱られるぞ、これは...」もうどうしようもなかった。飛行機は離陸していった。
 
 ポルトガルのリスボンに到着した時、トランジットでロビーに出て、カフェーのカウンターで、電話用のコインを貰って、私は物産のリスボン事務所を呼び出して、間違った飛行機に乗ったことと、明日の4時に到着予定をラゴスに知らせてもらうことができた。
 
 後は飛行機に任せる以外に方法はなかった。ただ、長男のオムツだけが不足していることをヨメサンは心配していた。飛行機がカナリー諸島に到着し、夕方の美しい島の道を、乗客全員がバスに乗って、小さなホテルに向かい、(全部航空運賃に入っているが)夕食をとり、宿泊して、朝食をとり、またバスでとことこと空港に戻った。
 
 ガンビアでは、盛大な儀仗兵が飛行機の横に2列になって並び、我が飛行機の前方のファーストクラスから、当時のガンビアの大統領が降り立った。
 
 フリータウンに到着すると、もうかなりの乗客が降りて、機内もゆったりしてきた。フリータウンでは駐機中は、操縦席も開けっ放しで、機長の席にヨメサンが座って、長男と記念撮影していた。のんびりした時代だ。
 
 まいったのは、飛行する度に、食事が出ることだった。2日目には4回も昼食が出た。
 
 ラゴスに到着して、何はともかく、所長に謝りに行った。
「すみませんでした。頭でも剃りましょうか?」と、自分で言ったのをおぼえている。
「厳罰にしようかと思ったが、故意にやったわけじゃないことと、チビさん(長男)に免じて、今回は許してやろう」と、言われた。

教訓 行き先を確認するのは、バスや電車だけではない。飛行機でも、行き先を注意しないと、米国にもオハイオのシドニーやケンタッキーのロンドンがある。きっと間違って飛行機に乗った人はいるだろう。

Comment(0)