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ベンチャー企業の成長について、現場で思うこと

オープンソースの思想

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ベンチャー企業が投資を募る際に、特許や権利を声高に主張するケースがあります。以前、ビジネスモデル特許が持てはやされた悪影響だと思いますが、ベンチャーキャピタルの社内の投資委員会でも特許の有無が評価を大きく変える、という話もよく聞きます。技術系であれば首肯できるかも知れませんが、サービス系やクリエイティブ系では、価値の根源はユーザ評価に基づいているので、供給側の利権(特許や著作権)に拘泥するのは、ユーザ無視の自殺行為だとも思えます。

ソフトウエア業界には、オープンソースの思想があり、Linuxを初めとして、権利ビジネスに依拠しない分、クオリティの向上が急速に進み、より多くの人が使うようになりました。権利にかかる争いをする前に、自分自身も含むユーザの利便性向上に集中することで、協働体制が自然に整い、ユーザの強力な支持も獲得しました。視点を変えて見れば、YouTubeなどのサービス系も著作権問題をスルー(軽くかわす)したことで、一気にブレークしました。

本来、作り手もユーザに楽しんでもらうことが重要なモチベーションになるので、最初から権利云々を主張することは作り手のクリエイティビティを減殺しかねません(権利保護が全くなく、安易なパクリが横行するのも、作り手のクリエイティビティを殺してしまいます)。
裁判で勝ったからといって音楽産業を救う役には立たない
現役編集者が怒りの提言「権利ビジネスに頼るな!!」(前編)
現役編集者が怒りの提言「権利ビジネスに頼るな!!」(後編)

情報のデジタル化とインターネットの普及で、情報やコンテンツをシェアすることが非常に容易になりました。違法コピーの大発生は問題ですが、iPodに見られるように簡易で安価な課金ができるのは大きな恩恵です。基本は、オープンソースの思想を貫き、まずはシェアすることの喜びに目を向けた方が、世の中は良くなっていくような気がします。声高に権利主張をし、弁護士に多大な費用を払いつつ、賠償金を受け取る人が増えていく世の中に魅力は感じません。

そもそも、過去のミュージシャン(ビートルズとか)に触発されて音楽を始めた人が、大ヒットを飛ばした場合、権利による収益を独占できるのでしょうか?刺激を受けたミュージシャンへの感謝、音楽で収益を挙げられる平和で豊かなな社会への感謝等々、自分の音楽が他力によっている部分は多々あると思います。少なくともその分を社会還元するなり、無償提供することが権利者には求められているような気がします。最近も興味深い提訴がありました。
「振りつけにパブリシティー権ある」 ピンクレディーが提訴
人気が出るまではパブリシティに乗っかり、人気が出たら権利主張、というのは、人気の源であるユーザの楽しみとは関係のない世界ですし、間に入って搾取を続けるレコード業界に対しては、アーティストから反発を受け、ネットを介してユーザと直接つながる動きが進んでいくでしょう。
そして壁は崩れはじめた―マドンナ、レコード業界を捨てる

権利主張よりもオープンソースの思想を先行させることで、シェアする姿勢が貫かれ、ユーザの大きな支持を獲得できるのだと思います。何事も大らかに、諍いなく、豊かな社会をシェアできれば、と思っています。
楽曲無料化行進曲は鳴り止まない
YahooのIan Rogers、音楽産業に苦言― 「不便の押し付けはいいかげんにしろ」

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