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ベンチャー企業の成長について、現場で思うこと

書店はショールームか、セレクトショップか。

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「売れ残った本」半額に 出版社17社、ネットで本格販売というニュースには、いろいろと考えさせられました。返本率が40%、1億冊(返本される本の20%)を処分するのに820億円かかっている、という事実は驚きでした。定価厳守と返本自由の業界ルールが、書店ビジネスを歪め出版不況を招いていることは不幸なことだと思います。

今回、出版社が定価厳守のドグマから解放され、半額販売に踏み切ったのは英断だと言えるでしょう。いわゆる出版不況を打破するには、書店の目利きが欠かせないと思います。それを後押しするのが、値引き容認と返品制限による書店の仕入れに対する意識改革だと思います。現状の再販制度では、一発当てるために書店は全量仕入れを目指さざるを得ません。それは、馬券を全点買うようなもので、大型書店以外に勝ち目はありません。それも外れ馬券は返金あり、という変なルールがあるためであり、本来、全点買いの馬券師はテラ銭分損をするというのが公正なルールだと思います。

実際、ビレッジヴァンガードの様に目利きを取り入れた書店は好調さを維持しています。また、ジュンク堂のようなレア物を揃えている書店は、マニアや専門家等から圧倒的な支持を得ています。Webサイトの検索機能がいかに強化されたとしても、実際手に取って読むことができる書店での本との出会いは永遠に価値を持ち続けることでしょう。ロングテールと言われているアマゾンも、実際は売れている本ほどアマゾンのシェアが大きく(ベストセラーは40%とも)、ヘッド依存度が増しているようです。ネット検索よりも、書店でのセレンディピティに魅力を感じるのは、自然な感情だと思います。

ネット書店が出現する以前、どういう本が世の中にあるのかは、新聞や雑誌の書評・広告以外には、実際に書店に足を運ぶしか知る術がありませんでした。面白い本との偶然の出会いは、本当に楽しいものです。その出会いを演出するのが、書店主の目利きなのですが、目利きをせずに全量仕入れとなると、単なる陳列としてのショールーム化してしまいます。少なくとも大型書店以外の中小型書店は、目利きを生かしたセレクトショップの道を選択すべきだと思います。

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