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企業ITもクラウド的な世界に向かい始めた今日この頃を徒然に‥

SaaSマーケットの繁栄とUI

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前回、クラウドではUIや機能が少しずつ変化していくのを、ユーザーが受け入れられることが大事では、という話をしました。でも、SaaSのベンダーがたくさんでてきて、さまざまな考え方のUIが乱立してきたらどうなるかと考えてみました。

企業アプリケーションはコンシューマーが使うアプリケーションに比べたら、その機能の複雑さ、1ユーザーが使うアプリケーションの数は圧倒的に多いのではと思います。それらがたとえUIとしてよく作られていたとしても、それぞれのアプリケーションのUIがばらばらの考え方で作られていたとしたら、頻繁に使わないアプリケーションも多い中で、とまどいは勿論のこと、生産性を落としたり、ミスを頻発したりすることが想定されます。

私も日常、アプリケーションによって、些細な違いですが、承認と却下のボタンが逆の配置、先頭にあったり下にあったり、さらに却下のとき二回確認されたりなどすると、これらの違いからストレスやミスを誘発することを経験します。さらにアプリケーションによって、同じようなビジネスオブジェクトを、階層で表すもの、一覧で表すもの、検索で探すもの、と一種の概念や表現の違いがユーザーを戸惑わせ生産性低下を起こすものもあります。

こう考えると、いくらたくさんのSaaSベンダーが現れてきても、ばらばらの考え方のUIでは、ユーザーがその変化を受け入れる以前の問題がありそうです。

メインフレーム時代からクライアント/サーバー時代をむかえ、特にVisualBasicなどでたくさんのアプリケーションが開発されました。当時の開発でよく聞かれたユーザーの要件は、Windowsのメニューでのプルダウンはできるだけ見せず、メインフレーム端末のようにメニュー形式で階層化された画面にすることでした。

確かにそれまでのユーザーはメインフレーム端末のメニューには慣れていて、メニュー形式にすれば教育もさほどかかりません。これはWindowsですぐにオブジェクトにコマンドを打てるようなUIでのメリットを犠牲にしても、ある意味で価値があったのかもしれません。

ともあれ当時から特に大企業では、UIの社内標準の考え方を作る企業が増えてきました。Windowsアプリケーションもスイートを購入したりする傾向もありました。それらによって、その企業でのアプリケーションの教育コストが下がったり、ユーザーの生産性が高まったりしたことは否定できないでしょう。

さて、たくさんのSaaSベンダーがマーケットに現れて、多くの企業アプリケーションがSaaSでまかなえる時代が、もしやってきたら。UIにはこんなことがおこるのかなと妄想してみました。

まず、ブラウザー上のアプリケーションとして幾つかメジャーなUIのデザインパターンにSaaSのUIが収斂していくシナリオ。これはかなり時間がかかるような気がします。Amazonの変化などをみていても、まだまだUIの世界は未成熟のようにも思えます。

パッケージアプリケーションのように大物のパッケージが中心にSaaS化していく。小さいSaaSは他の大物SaaSスイートの中に買い取られてUIが均一化するかもというものです。上の例とちがってSaaSごとのUIのクセは強くなりそうです。でも吸収は起こりにくいですかね。

PaaSでUIのオブジェクトまで開発環境に持つものがメジャーになり、その上でSaaSベンダーがアプリケーションを開発して流通させる。Windowsがプラットフォームとなったように、特定PaaSがプラットフォームとなるというシナリオですね。SalesforceのForce.comはこのモデルを志向しているようです。

UIをもつPaaSはフロントエンドとして少数が残り、他のSaaSはそのPaaSからWebサービスとして呼ばれるUIレスになっていく。SaaSの機能分化の傾向といったところでしょうか。SOAの世界かもしれませんが、ここまでいくのは随分先ですかね。

以前に比べて、世の中ではマニュアルなしのiPhone/iPodそしてゲーム機が増えてきました。直感的で良質のUIの世界をSaaSにも期待したいものです。SaaSマーケットの繁栄のためにもSaaSベンダーはこのあたりに力を入れていく必要があるように思えてきます。

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