プライベートクラウドは標準化の問題?
前回とりあげた「2009年クラウドでの10の予測」がeWeekでニュースになって、日本語訳も出たようです。クラウドの動向を考える上で、いいたたき台になりそうです。
予測の一つにも出てきたプライベートクラウドについてちょっと考えてみたいと思います。プライベートクラウドは、多くの場合はITを外に出すことができないから、ということで、それでもクラウド的なもののメリットを社内で享受できるよう考えられた概念とも言えると思います。
主には、コントロールとセキュリティーが厳しいアプリケーション、例えば政府が特定業界に規制しているとか、会社としてガイドラインを持つなど、特定のデータなどを外に持つことが禁じられているかリスクが高い場合でしょう。そんな状況でも、ユーザーの本質的なニーズの一つである迅速なITリソースの提供、を満たすためのさまざまなITリソースのプール化、とそれによるスケールメリットの確保がプライベートクラウドの狙いでしょうか。
データ肥大化によるディスクの迅速な増設、トランザクションピーク予測対応のサーバー追加、新しいWebを迅速に開設のためのWebシステム構築、新しいアプリケーション開発をすぐ開始するための開発環境の提供。これらが全社で大規模にプール化された資源から迅速に提供されれば、ユーザーの満足度やコストの面でも今までよりはるかに向上すると思われます。
ただ一点乗り越えなければいけないのが、標準化でしょうか。企業でITのガバナンスが叫ばれて久しいですが、ディスク一つとっても隣のシステムのサーバーに付け替えるのはなかなか大変です。たいていは全く同じ製品を使っているものは少ないでしょうから、OS、ドライバなどの整合性確認といった問題は常についてまわります。サーバー追加だともっと各種設定変更なども係ります。システムまるごとや開発環境ですと、ユーザーのスキルがその環境に一致していなければいけません。
こんな理由からか今まで企業ITでのプール化は限定された領域にとどまってきたのかなと思います。もちろんこれを緩和する技術の一つとして仮想化技術が最近注目されるところではあります。
徹底したITリソースの標準化、それを加速するための仮想化適用、そして最後にクラウドの本質的な価値であるスケールメリットを得られるまでの規模の拡大。プライベートクラウドを構築するには古くから企業ITで叫ばれている標準化の徹底と拡大へのチャレンジが必須のように思えます。