事業部の壁
「事業部じゃなくて会社全体として責任をとれ!」
プロジェクトでたまにこのような言葉を聞きますが・・・果たして本当にそれでいいのでしょうか?
ベンダーさんの多くは、
金融、製造、流通、・・・のような業界別。
ERP、SCM、CRM、・・・のようなソリューション別。
「事業部制」で経営しています。
いくらか企業の特徴で事業部の単位は異なりますが、事業部制というのはこの「事業部」の単位で取組(事業)を企画し、予算を組み、人を手当てし(配置)、そして取組から得た収益で採算をはじいていく、のが基本です。
ベンダーさんの取組で問題が生じたとき、当然事業部はその「トラブル」のシビリティ『深刻度合』やダメージ(被害額)等から、果たすべき責任をとるためにその問題解決に奔走することになります(まあ、これをやらない姿勢にしかみえなかったらそのベンダーさんはどうしようもないわけですが・・・)。事業部長もしくはその案件の責任者たる部長は当然どうやって少しでも問題が大きくならないよう、そして少しでも早く解決するように施策を考えては実行していくはずです。
ここで冒頭の話に戻ります。
ベンダーさんが期待に応えてくれないことは、(残念ながら)結構起こり得ます。それが起きて、「問題」として改善を迫っていくときに、「事業部の壁を超えて」責任を問う方がユーザー企業さんを結構数、目にしました。
・・・まあ口頭で話の勢い、発言するのはまあよしとしましょう。ですが公的文書にしたためるようなやりとりまでは、しない方が有効だと私は思っています。
(犯罪等、法的損害著しいときは、もちろんこの限りではないと思っておりマス)
そのベンダーさんは、経営の効率、すなわち収益性の最大化や、サービスレベルの最大化、そしてビジネスモデルの崩壊防止、等のために「事業部制」を取り入れているはずです。
ですから、「事業部を超えた」対応を迫るということは、そのベンダーさんに対して、収益やサービスの最低目標レベルを損ない、ビジネスモデルを崩壊させ、企業として経営存続を不能にしてでも「責任をとれ」と言っているようなものです。
問題を起こされたユーザ企業さんのお怒りはごもっともです。
大きく問題を起こしたら社長が直々に謝罪に来るとか、「会社としてのアクション」はあるでしょうが、私もそれなりにSIベンダー的な活動も過去たくさん経験してきましたので、その体験談からもあえて申し上げます。
「事業部として全面的に責任とれ」と強く言われ続けた方が、「会社として全社をあげて責任とれ」と言われるよりよっぽどこたえます。
というのも「事業部責任は持っていても全社として経営責任を問われるような責務は負っていない」からです。
「事業部責任と言われ続けている限り、どこにも逃げ場がない」のです。
「全社」と言われれば「事業部だけじゃなく会社全体で責任とればいい」から、いくらか肩の荷が心理的に降りてしまうことがあり得るのです。これでは責任の問い方として効果的じゃないじゃないですか。
・・・まあこんなこと書いてる私もたまにですが「貴様の事業部じゃなくて会社として誠意を示せ!」とか言われて、ひーっ!っていうときも実際はあるんですけど・・・
なお、ITmedia Executiveにもエグゼクティブ向けエントリを書いていますので、ご興味のある方はあわせて参照いただければ幸いです。