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ソフトウェア製品開発現場の視点

ブラウザで編集中の文書を消してしまった

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また、やってしまいました。編集中の文書を操作ミスで消してしまったのです。ブラウザで編集をしていたのが失敗でした。

昔のコンピュータは動作が不安定だったこともあって、文書やプログラムを編集するためのエディタと呼ばれるソフトウェアは、突然電源が切れても作成中の文書を可能な限り復元できるように設計されていました。編集中にこまめに保存する check pointing と呼ばれる機能や、編集過程を連続的に記録しておいて後から再現できるようにする、ジャーナリングという機能が備わっていました。今でもワープロのようなソフトでは、自動保存という機能があって、定期的に保存しています。

ところが、Web (ブラウザ) を使ったソフトウェアでは、ほとんどの場合、途中の段階を自動的に保存するような機能もなく、うっかりブラウザの閉じるボタンを押したり、戻るボタンを押したりしてしまうと、保存していなかった変更はすべて失われてしまうのです。いつも注意しているのですが、ときどきこのミスをしてしまいます。同じような失敗をした方も多いことと思います。

Google の Google Docs は、Web アプリケーションですが、こまめにドキュメントを保存して、操作ミスをしても編集した内容が失われないようになっています。Google Docs は、特定の要望に基づいて作られた物ではなく、Google がサービスを提供するプロダクトとして作られた物です。プロダクトとして作られたソフトウェアは、使われ方が決まっている訳ではありませんので、 編集中の内容が操作ミスで失われるということは、致命的です。説明書に注意書きをするのではなく、プロダクトの機能として、重大な問題が起きないようにしておくことが必要だという意識がよくわかります。

Google Docs などによって、少しずつ良くなってきているものの、Web アプリケーションの台頭よって、ユーザインタフェースは大きく後退したと思います。正確な数字はわかりませんが、ショートカット機能がブラウザの制限で使えないなど、ソフトウェアを使って作業を行う時の生産性も、かなり低下しているように感じます。Web アプリケーションは、個別の PC にインストールする必要がないので、企業でのソフトウェアの管理コストを下げるという理屈で広がってきましたが、それによって、実際にソフトウェアを使う人の生産性を下げてしまったのでは、本末転倒でした。幸い、ソフトウェアインストールの技術の向上によって、インストール作業を自動で行うこともできるようになってきました。個々の PC にインストールするアプリケーションの管理コストは、かなり下がっていると思われますので、これからは Web アプリケーション一辺倒の考え方は解消していくことでしょう。さらに iPad などの PC 以外のデバイスという選択肢も出てきましたので、Web アプリケーションからの脱却は、想定しているよりも早く進むことになるのかもしれません。すなわち、インターネットは Web ではなく、本来の「つなぐ」という機能にもどって進化していくことだと思います。

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