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ソフトウェア製品開発現場の視点

ソフトウェアの国際化

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最近、日本全体が内向きの経済になりすぎているので、もっと世界のマーケットを目指すべきだというような話を良く聞く。自動車など早くから海外に進出して、世界各地で成功している例はあるが、携帯電話やコンピュータなど、旗色の悪いものが多いように感じる。ソフトウェアにいたっては、輸出入の比率が、1対100だとか言われていて、正しい数字は分からないが、大きく輸入超過であることは明らかである。

ソフトウェアにでは、輸出に際して大きなハードルがある。日本で作られたソフトウェアをそのまま海外に持っていっても、ほとんどの場合受け入れられない。マニュアルだけ各言語に翻訳すれば使えるとういう簡単なものではない。製品を使うといたるところに出てくるメニューなどの翻訳に始まり、各地域の文化にも対応しなければならない。「文化」というと大げさに聞こえるが、数字や時刻の表記方法など画面に表示されるものは、実は地域ごとに微妙に異なる。日本で使っているコンピュータで午後5時の表示は、24時間制で 17:00 と表記されるが、アメリカでは、5:00 pm という表記が普通である。こういった「文化」の部分は、言語と違って対応しなくてもなんとか使えるが、使っている人には大きく違和感が出て、「やっぱり外国のソフトだね」と思わせてしまったりするので、競争力のある製品を作るうえで非常に重要である。

ヨーロッパでは、車で少し移動するだけで、別の言語や文化を持った地域に入ってしまうので、人々は複数の言語を使うことも普通のこととなり、ソフトウェアの「国際化」がかなり早い時期から発展した。日本では、海外で作られたソフトの「日本語化」に苦労していたが、ヨーロッパは、その時点で一歩先に進んでしまっていた。ヨーロッパで開発されたソフトは、国際化しているため最小限の変更で、新しい言語に対応できるが、日本で作られたソフトは、「英語版」「中国語版」を毎回結構なコストをかけて作らなければならないという状況である。

ヨーロッパやアメリカでは、ソフトウェアを設計の段階から国際化するための手法が、早くから研究され、製品で実現されてきた。Windows は、Windows 2000 くらいから国際化の成果がでてきており、現在は Vista Ultimate というバージョンを購入すれば、自分の好みの言語を選択できる。複数のユーザがいるときは、ユーザごとに言語を選ぶことができる。Macintosh は、もっと進んでいて、世界で売られているバージョンが、標準で多言語に対応している。Apple の国際化の思想は、全ての製品に及んでいるので、Apple の製品はどこの国でも基本的に同じものを売っている(初期設定は変えてあるが)。

日本でも、これらの製品と競争できるレベルの製品(アプリケーションであっても)を作っていくためには、製品に最初から「国際化」の設計を入れておかなければならない。日本で開発されるソフトウェアの国際化を支援するため、友人の末廣氏が昨年「国際化JP」という会社を設立した。末廣氏は、これまで長期にわたってソフトウェアの国際化を担当してきた経験を、日本でソフトウェアを開発しているエンジニアに伝授することで、日本のソフトウェアが世界で戦うための基礎を作ることを目指している。製品が世界で戦えるかどうかは、当然製品の競争力の勝負になるが、国際化を理解した上で製品を開発することで、競争の前に「国際化されていない」ことが理由で戦いの場にも立てないという状況は、回避可能だし、回避して欲しい。

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