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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

「電柱の地中化」という「じゃない方の言い回し」にちょっと笑う

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街路に並ぶ電柱を無くして送電線や通信回線を地中に埋めるということが、街路の景観や防災上の観点などから全国各地で検討され、実際に工事が行われているのはよく知られた話だと思います。「電線の地中化」と呼ばれる事業ですね。実際私の身の回りでも市街地の中心部などだけでなく、いわゆる街道沿いでもそういう工事が行われて、ふと気がつくと景観が非常にスッキリしている場所があったりします。

大規模な区画整理の中で行われるケースもあれば、たとえば商店街の単位で実施されるケースもあり、災害などの際にも電柱の倒壊による送電網の寸断を防ぐなど効果が高いものですが、実際に道路を掘り起こして共同溝などを敷設して各種の電線を埋めて各家庭やビルなどに引き込む工事には多額の費用がかかる話ではあります。

因みにいわゆる電柱とは送電線のための柱で、たとえばケータイの基地局のアンテナが単独で付いている柱は通信事業者としては「建柱」と呼んでいますが、一般的には「電柱」と言ってしまった方が通じるとは思います。まぁそこは業界の中以外では別にこだわる必要は無い話ではありますが。

思わす口走ってしまう「電柱の地中化」という表現

なんだか自分でも時々口走ってしまいます。「電柱」の地中化。

でも、電柱は埋めません(笑)
埋めるのはあくまでも送電線や通信線などの「電線」であって電柱は抜いてしまいますから。
ただし電柱の上に乗っている柱上トランスの機能は必要なのですが、大きな共同溝でなければ設置場所が地下には設けられないので「電線」を埋めた街路に一定の間隔でちょっと背の低い物置のような箱が並ぶ場合もあります。そして地中の引き込み管から沿線のビルや住宅に引き込まれるわけですが、電力と通信の線を独立して埋めるのか共同溝としてまとめて埋めるのかなどの工法はその場の条件次第なので一様ではありません。幹線として水やガスの配管まで含めた巨大な共同溝になるケースもあるようですが、そうすると非常に大がかりな工事が必要になるので本当に大規模な区画整理などの事業になるようです。

このあたりは通信関係は一応専門ですが土木に関してはただの素人なので詳しく触れるべき話ではないですが、そんな私でも時々あれっ?って思うことがあります。

そう。思わず「電柱の地中化」と口走ったり、そういう表現を聞いたりすることが皆無ではないんです。

当たり前ですが、電線は埋めるけど電柱は埋めない

街路に立つ電柱や建柱は、当然ですが倒れないように地面の下にかなりの長さの部分を埋めています。建柱車と呼ばれる専門の車両のドリルで地面に穴を掘り、柱を立ててコンクリートで周囲を固めるのが一応基本の建て方で、コンクリート柱でも鋼管柱でも根元の部分の基本は同じです。

でも、電線を地中に埋めるからと言って「電柱」は埋めないのは頭でわかってるんですが、なぜか時々うっかり「電柱の地中化」と意味不明なことを口走ってしまいます。仮に電柱を埋めるのなら街路の補強のための柱なのか、実は街路に並ぶトランスの箱の下に基礎として柱を埋めるのか... いや、それは無いです(笑)

架空線が全部埋められて無くなる世界の前に既に死語の世界に入った言葉たちの思い出

因みに通信回線の架空線はもはやメタルの電線を全く新規に敷設することは稀で殆どの場合光ケーブルもしくはケーブルTVなどの同軸ケーブルだと思うのですが、特に区別することなく一括りで「通信線」も含めて「電線の地中化」と言うようです。まぁ別にこだわる話ではないですが、でもひょっとしたら将来的に「電線って見たこと無いんだけどそれって昭和の遺物ですか?」とか言われる日が来るかもしれません。

ただ少なくとも家庭内において「電線」の類を機器の電源線以外で見たことがない層は存在していて、LANケーブルやテレビの為の同軸ケーブルという存在自体を知らないという人が増えてきているのは知っています。これらの話、もう近いうちに「あの頃は...」的な番組の中でのネタや古い歌の歌詞の世界だけに残るような時期が来るんでしょうね。

いわゆる死語の世界。たとえば通信周りでもざっとこんなのはすぐに思い出せます。

  • 受話器を取ってダイヤルを回す
  • 女子高生のベル打ちには勝てない
  • でも地下に入るとポケットベルは鳴らない
  • カフェバーのテーブルにゴットンとティッシュの箱くらいの巨大な移動電話を置くと羨望の眼差しが向けられた
  • ショルダーホンは肩からぶら下げるには本当に重いので持ち運ぶのは通話する偉い人ではなく横のお付きの人
  • 市外通話は電話局の交換台を呼び出して相手に繋いでもらう
  • 「この電話は市外通話できます」と表示されている市外通話を直接かけられる青い公衆電話
  • 会社の机の上の電話は全部普通の黒電話で音も同じなので、どれが鳴ってるかは手を置いて確認してから取る
  • ISDN公衆電話にPCとか何かの端末を繋いでデータを送ると64Kbpsという光のように早い速度でデータが送れる
  • 黒電話は玄関とか廊下の途中、あるいは居間の一番目立つところにレースのカバーを掛けて置いてある
  • 事前に決めた時間に彼女の家に電話をかけるけれど親が出たら心臓が止まりそうになる
  • 携帯電話は地下では繋がらないがPHSは「ここ繋がります」表示のところなら繋がる
  • PHSは本当はちゃんと繋がるのに都合が悪くなると「あれ?PHSだからかな?ちょっと電波状態が悪くてきこえなくぁwせdrftgyふじこlp」と言って電話を切れるから便利という話がPHSの法人需要の下支えになっていた(という噂

あ、通信以外だと、こんなのも思い出しました。

  • 冬場はチョーク引いてからエンジンかけないと始動しないし真っ黒な排気ガス吹くし
  • レコードのA面とB面
  • 狭い会議室での缶詰会議中に皆がタバコを吸ってたら火災報知器が鳴って流石に総務に怒られる
  • 駅の伝言板
  • 駅のホームのキノコみたいな巨大な灰皿
  • 「サクラサク」電報に一喜一憂
  • クラス全員の住所電話番号親の氏名(更に下手すると親の職業まで)が入った名簿の配布

などなど。
思えば遠くへ来たもんです。

笑いが取れたらエエやんという自分の気質ってどうよ

よく言われる話ですが、形を変えて残っていく表現もあればその場その状態それ自体が過去の遺物となったものもいっぱいある中で、それこそ物言いに気をつけないと「昭和の生き残り」とか「前世紀の生き残り」とか言われるのは目に見えてるんですが、それもまた時代の流れだとは思ってます。仕方ないです。その表現が普通に目の前にあった時代にいたんですから。
因みに昭和一桁生まれの私の父は80ちょっとで亡くなる直前までテレビのチャンネルを回すという表現が抜けませんでしたが、私と妹はそんな父の眼の前でリモコンをくるくる回してたりして、まぁ嫌な子供でした。

でも電柱は埋めません。
それは間違いない。

でもそういう方向の言い間違いが増えてきたらちょっと各方面に相談を始めたほうが周囲に迷惑をかけずに済むという時期がもうすぐくるかもとは思っています。寄る年波には勝てないとは言いますが、でもどうせならそんな表現で笑いを取れたらエエやんとか思うのは体の根っこに染み付いた関西人気質だと思ってるんですが、とはいえ笑えない「誤解してる言い回し」とか「今の世の中的には不適切極まりない言い回し」とかには気をつけたほうが良いよなと改めて思っています。

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