坂本史郎の【朝メール】より:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 坂本史郎の【朝メール】より

ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

★いよいよ転換期に入ってきました。

導入のたびにトラブルを起こすものが手元にあり、まるで生殺しのような日々が続きます。会社全体がうつ病のようになっていきます。自分もなぜだか元気が出ません。そしてついにその日がやってきました。必死に頑張ってくれていた気のいいインド人プログラマーがうつ病になってしまったのです。

■開発体制のリストラ
背に腹はかえられません。開発体制を変更することにします。その結果、自分が開発陣頭指揮を取ることになりました。他にはいません。自分のプログラムコード経験は学生時代にベーシックを少々、そして社会人になってMS-DOS時代にいくつかバッチファイルを作った程度で、IT知識も文系的です。ただ信じられるのは論理性です。正確にプログラム仕様の内容を説明してもらえば、正しい判断はできます。

いままで付き合った中で一番できると言われたプログラマー、Kumar(クマール)をインドから再招請します。調子が悪くなってしまったインド人プログラマーと仲の良かった人でもあります。なんとか回復をしてくれることを祈りながら、新しい体制に入っていきます。

作り直しかスパゲティプログラムの改修か。この選択肢には後者を選びます。スパゲティとはいえ、今まで起こしてきた品質トラブルを回避するノウハウが積み込まれたものです。費用をかけることもできません。『建て増し温泉旅館型』で行くことにしたのです。

■お客様要望をどの順番でかなえていくのがいいか
「この機能を実現したら買いますよ」というお客様からの要望があります。そして採用規模と時期の見込みとがあります。それを金額に換算し、会社の売り上げと現預金の月末残予測ができる『行動計画表』というシミュレーターをエクセルで作り始めます。

お客様にヒアリングに行く。改修内容をKumarに相談して実現の難易度を考える。そしてシミュレーターで開発の順番を決める。このプロセスで開発を進めて、一つ一つ案件が決まり始めたのが2005年の6月頃からです。

「こんなこと、できるだろうか?」という相談に戻ってくるのは、
「Shiro-san, anything is possible」とニコニコしながらの頼もしい返事です。

実際に開発をKumarとやり始めて驚いたのが、二人の頭での概念シンクロが容易なことでした。Kumarは元々機械工学出身、自分もそうです。英語で打ち合わせをしながらイメージを頭に浮かべてホワイトボードで説明しあうと、ほぼ完ぺきに仕様が両者の頭の中で構築され理解されます。この状態は楽しいです。

■二人三脚での爆発的改善
要望がはっきりと伝えられてそれを実現できるプログラマー、その二人三脚で開発することは、Kumarにとっても楽しい体験だったようです。お客様候補も世界的に有名な日本企業ブランドだったりします。やりがいがあります。不思議な信頼感も両者に生まれます。そして、ついにKumarはいいじゃんネットの社員になることが決まりました。

考えてみると、そもそもつぶれそうでガタガタな会社でのスパゲティプログラム、そこにKumarは結婚式をしたばかりの奥さんを連れてやってくるのですから、勇気があります。ちなみに、インド、ティルパティの結婚式にも参加させてもらいました。とてもいい経験だったので、別途オルタナブログの記事『インド道中 (その6) ヒンズー式結婚式』『インド道中 (その7) ヒンズー式結婚式2』に上げさせてもらってます。

■天才とはモチベーション高く努力が継続できる人
スパゲティの大部分は残していながら、改修が入るところは手直しを続ける。そのようなことをまさに昼も夜もひたすらハードワークでやるKumar。解決の糸口すら見えないなかで、お客様からのクレームを一手に黙々と引き受けるGucci(グッチ・日本人)。その二人を見ていて、自分の天才というものに対する概念が変質してきました。

それまでは天才とは思いつきやひらめきが強い人のことを指すと思っていたのです。しかし実際には『モチベーション高く努力が継続できる人』というのがそうなのだと。そして、モチベーションを自ら維持できるか否かが、天才とそうでない人との違いです。

以下次号・・『伊藤忠関連のベンチャーだったらこの会社はすでに畳んでいます』に

創立10周年を迎えることができました(1)
■東レのベンチャー支援制度を利用した立ち上げ
■当初のビジネスモデル
■当初のビジネスモデルの失敗
■受託時代

創立10周年を迎えることができました(2)
■やはり自社製品にもう一度チャレンジしよう、B2Bで
■「自社製品開発はラストチャンス」の思いで「カチャットサーバー」が誕生
■最初のお客様たち
■3ヶ所で同時に火を噴く

創立10周年を迎えることができました(3)
■相次ぐ品質トラブル
■製品を集中して陣容を縮小して続ける
■スパゲティプログラム

※20100316: 次記事へのリンクを張りました。

Shiro Sakamoto

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坂本 史郎

坂本 史郎

e-Janネットワークス株式会社 代表取締役。
東レ、バージニア大学MBA、IT企業創業とユニークな経歴。コミュニケーションデバイスと組織の理想形を追い求める。

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