インド道中 (その7) ヒンズー式結婚式2
★【朝メール】20050808より__
結婚式の詳細が書いてあります。帰りの乗り継ぎの空港などで
書き溜めたものです。忘れないうちに文面化しました。
(長文にて失礼します)
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おはようございます。
曇り空の朝です。久々の通勤、体力を消耗します。
いい運動になっているのですね。
===ほぼ毎朝エッセー===
□□結婚式(その2)
■8/7 結婚式
レセプションから一夜明け、いよいよ結婚式の朝です。
結婚式を挙げる時間は星占いによって決められるそうです。
Kumarたちの場合は8月7日の朝8時8分がその瞬間だそうです。
それなので式の儀式の開始は朝の7時半からと言われました。
どのようなプロセスを経るのか、とても興味があったので
朝一番からホールに行くことにします。朝6時にJagadeeshが
タクシーで迎えに来てくれることになっています。ところが
Jagadeesh、待てど暮らせど現れません。
6時45分を過ぎてしまったので、ホテルのフロントにメッセージを
残して、オートリクシャ(タイのTUKTUKみたいな、三輪車、庶民の足)
に乗り込みホールに向かいました。すれ違いに迎えにきてくれた
Jagadeeshには悪いことをしてしまいましたが、せっかくなので
異国の儀式は最初から見たいです。
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昨晩のレセプションと同じホールに到着します。
朝は早いですが、晴天の空、すでにかなり日差しは強いです。
早速ホールの2階へと上がります。昨晩よりは人が少ないように
思えますが、まだ早いからなのでしょうか。
せっかくなのでいいポジションで待ち構えたいです。
どの経路で新郎と新婦が現れるのかを周りの人に聞いてみます。
ところが英語を話せる人は殆どいません。結局は準備中のKumarの
ところに連れて行かれ、直接彼に聞くことになってしまいました。
そう、インドでも英語を話せる人は、教育をしっかりと受けた人たち
だけです。一般の人とはなかなかまともに英語も通じません。
特に自分の英語は早口のアメリカ訛りで、わかりづらいようなのです。
ゆっくりと話すことを心がけるのですがお互いにもどかしいです。
Kumarもどのような経路で現れるのかあまりよく知りませんでした。
そこにJagadeeshが追っかけて現れます。先に出てしまったことを
謝ってから、行進経路などを詳しく聞きます。彼は5月に結婚式を
挙げたばかりだったので、なかなか詳しく知っています。
全プロセスの意味を横でささやいてくれながら説明してくれました。
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前夜に行われたレセプションの後はそれだけで終わらず、夜には
頬にターメリック(黄色い粉)頭にはオイルを塗る儀式を、なんと
3時半までやっていたそうです。その後、朝4時半まで仮眠、
そして祈祷師から新しく着る服と足の指にはめる指輪とをもらい、
Kumarはその朝はそれを着て準備していたそうです。
新郎が結婚式に着る服はDothi(ドティ)という上からすっぽりと
かぶる膝まである上着とズボンです。女性はシルクのSaree
(サリー)が正装です。金色の衣装でした。
結婚式当日のまず最初の儀式はガネシア(象の顔をした神様)への
お祈りです。ガネーシアはビグネシファラとも呼ばれ、あの像の
顔と人間の体をした神様です。新しいことを始めるときに助けて
くれる神様だそうで、結婚式などではそこにお祈りをします。
ガネーシアはホールの外に出た細道の横のお堂にいました。
新郎と祈祷師はそこに向かい、お堂のなかでなにやらやっています。
祈祷師はこし布だけをまとって上半身裸、ひげを蓄えたおじいさんです。
しばらくすると二人はお堂から出てきて、次の儀式に入ります。
ホールの入り口部分まで細道を戻ります。楽隊も盛んに音楽を
演奏し、ビデオ隊はビデオを撮っています。
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祈祷師の促すようにKumarは何か言っています。
なにやら新郎は怒っているという設定のようです。
聞いてみると「Kasi(という聖なる地)に行ってしまうぞ!」と
怒っているのだそうです。
そこに新婦の兄がやってきてこう言うのです。
「妹を差し上げますのでどうぞお気を沈めてくださいまし。」
そう言いながら、新婦の兄は新郎の足を洗います。
足を洗うための水差しが3つ用意されています。
それぞれが水、ミルク、そしてガンガ川の水だそうです。
それを次々とたらいの中の足にかけ、足を洗っています。
ミルクは白で潔白のしるし、縁起がいいらしいです。
ガンガ川はティルパティ近くを流れる聖なる川です。
続けて新婦の兄は新しい履物を用意します。
新しい履物を履き、この献身的な兄のおかげで新郎は怒るのを
やめて妹をもらうことになったようです。
OKの印として、新郎は兄に指輪をあげます。
ここで外部での儀式が終わります。
新郎は兄に連れられ、ホールへとあがっていきます。
祈祷師と楽隊もついていきます。
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次には、ホールの中でのステージ上での儀式の開始です。
兄に連れられて新郎はステージの奥に行きます。
昨晩まではレセプション用のステージだったところは、
その朝はすっかり儀式用のセッティングに変わっていました。
そのステージの裏に控え室があります。
そこが新郎の家と新婦の家を象徴しているそうです。
しばらくすると新郎と新婦と兄とが現れました。
向かって右から兄・新郎・新婦と並んでいます。
新郎は兄と手をつないでいます。新婦とは小指を結んでいます。
そろりそろりとステージ前を横切り、ステージに上がっていきます。
新婦はなにやらおなかの前に布に包んだものを持っています。
聞くとココナッツだそうです。それを新郎の家まで後ほど持って
行くのだそうです。
さて、新郎新婦はステージに乗り、所定の場所に新郎新婦ともに
あぐらをかく形で座ります。左手手前には祈祷師がいます。
ステージ後ろにはずらりと家族がこちら向きに並んでいます。
なにやら色々なものを新郎と新婦に盛んに差し出しながら儀式を
進めます。家族はことある毎に手助けをしています。
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祈祷師はたまにステージの後ろをみて手を挙げて叫びます。
どうやら後ろの楽隊に音楽を変えることを指示しています。
シチュエーションによって音楽が変わるのです。
楽隊はドラムとトランペットのようなもの2本、弦楽器の
4人構成です。ずっとホール後ろの方で音楽を鳴らしています。
新郎と新婦は手に何かを渡され、それぞれの頭にそれを交互に
貼り付けあっています。聞くとそれはサトウキビから取れた黒糖、
それをある種と一緒に粉にして、さらに油で練ってペースト状に
したものだそうです。それをBeatelという緑色の葉の上に乗せ、
ペースト部分を頭に貼り付けています。
黒糖と混ぜられているのはよくインド料理に行くと最後に
食べるマウスフレッシュナーの中に入っている種、そして
Bealel(ビーテル)というのも口直しのガムの代わりに食後に
勧められるものです。どれも食べ物ですね。
そして今度は祈祷師が新郎の右手に、黄色い紐に棒状の
ターメリックを結びつけたものを結びつけ、さらに新郎は
同じものを新婦の左手に結び付けます。他ままにもいろいろと
結びつけて、新郎は帽子をかぶせられました。
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新婦の両親がステージに現れます。新郎は促されるままに
ちいさな椅子にこちらを背に座り、たらいの中に足を入れます。
新婦の母が注ぐ水・ミルク・ガンガ川の水、それを使って、
新婦の父が新郎の足を洗います。そのときに色々なことを
新婦の父は新郎に頼むそうです。その中の一つは「この大切な
処女の娘を心からよろしくお願いします。」とこう言っています。
※この足を洗うという行為、ありとあらゆるところに出ます。
インドでは目上の人に対する礼儀として、足を触ることが重視
されているようです。1才でも年上だったら目上だそうです。
目下の人が目上の人の足を触ると、その際に目下の人の頭は
下がります。そのときに目上の人は目下の人の頭をさすって
祝福を祈って応えるのがしきたりだそうです。
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いよいよ結婚式の瞬間、8時8分です。
Muhurtham(ムホゥタム)といわれる瞬間です。
参列者には黄色い米が手渡されました。
みな右手に一掴み米を持っています。
新郎が新婦の首に巻かれた布に3つの結び目を入れます。
すると、その瞬間、人々はその米を思い切り二人目掛けて投げます。
なんでも強く投げれば投げるほどいい祝福になるそうで、
一番前の方にいた私には突き刺さるように米が飛んできます。
このMuhutrhamの時間は星占いから二人の相性に最もいい瞬間を
選んでいるそうです。この時間は占い次第では真夜中にも
真昼間にもなるようで、夜中の3時に結婚式なんていうのも
ざらにあるようです。
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その後、新婦が新婦の両親を前に足を洗います。
新郎は横から水とミルクとガンガ川の水を注ぎます。
新婦の両親への感謝とお別れの瞬間です。感情的になります。
次には、新郎が新郎の両親を前に足を洗います。
こんどは新婦が横から水とミルクとガンガ川の水を注ぎます。
そして、次には参列者が次々とステージに上がります。
見ていると、まず祈祷師に手渡されるターメリックの黄色い米、
それを少しずつ二人の頭に交互に振りかけた後、たっぷりと
たらいに入っている白米を手に取り頭からかけます。
米は裕福になることを願っているものです。
自分もステージに裸足であがり米をかけに行きました。
米をかける際に新婦が足を触ってくれました。
(でもそのときにはどうすればいいのかがわからず棒立ちでした…)
Kumarの頭を見ると、先ほどの頭に貼り付けてある黒糖の
ペーストには米がいい塩梅で張り付いています。
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一通り米かけの儀式が終了すると、祈祷師は二人の服を結び、
ターメリックを頬に、クンクム(Kumkum)を眉間につけます。
そしてたらいに枝を乗せ、小さな火をおこします。
火には新郎がなにやら注いでいます。油だそうです。
火は適度な大きさで燃え続けています。
Jagadeeshはその火の周りを新郎と新婦は3回周るのだと
説明してくれます。インドでは火は水や空気とならぶ5つの
神の一つです。火は神の象徴であり、その周りを回ることで
火の神に結婚したことの証人になってもらうのだといいます。
立ち上がった二人はステージの端から歩き始めます。
なんだかゆっくりと足元を気にしながら歩いています。
どうやら最初の7歩は同じ場所を踏む必要があるのだそうです。
これにより7つの転生をしても一緒にいるということに
なるそうです。輪廻は必ずしも人とは限らないので、
「姿形が変わっても一緒になろう」という誓いのようなもの
でしょうか。
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最後には、またホールの外に祈祷師と二人が出て行きます。
楽隊とビデオ隊も参列者とともにぞろぞろとついていきます。
ホールの玄関のところで、祈祷師が指示する方向を
新郎と新婦がともに指をさしています。インドの太陽、
朝9時前でしたがぎらぎらと強いです。まぶしいのを
絶えながら指をさしている二人、その先には二人の星が
あるそうなのです。
これでひとしきり参加した儀式は終わります。
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その後にも黄色い水の張ってあるバケツの中に指輪を投げて、
それを新郎か新婦のどちらが先にとるかというゲーム、
花のボールを投げあうゲームなどがあるそうです。
なんでも、指輪を先にとった方が一生の指導権を得るそうで、
新郎が躍起になってとるそうです。新婦は自分が取ったら
水の中でこっそりと新郎に手渡すこともあるとか、アジア女性の
奥ゆかしさ、こんなところにもあるのですね。
そしてお寺参りに続いて、最初の3日間、新郎は新婦の家で
寝泊りと食事をする必要があります。
なかなかしきたりが強くて大変です。
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我々はその後、ホールで用意してもらった朝食をいただき、
用意してくれたタクシーでホテルに帰ります。
このヒンズー式結婚式、なかなか貴重な体験でした。
いろいろ説明してくれたKumarの友達、Jagadeeshと。
===post script===
昨晩は9時過ぎに自宅に着きました。
インドと比べると日本はなんとも整然としています。
高速道路など、道のスムーズなことに改めて驚きました。
ティルパティを出て26時間、ずっと椅子でした。
久々のベッドではとてつもなく深い眠りです。
さすがに今朝は起きるのがつらかったです。