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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

それでも孫正義氏がいたからこそ、日本のブロードバンドが世界一安くなったのだということを忘れてはいけない

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某所で孫正義ジェネレータに言及してすべってしまいましたが、自分の本意はむしろこちらにあるということで。
ソフトバンクがMNPの乗り換え処理で大きなトラブルを起こして以来、様々なメディアで、特に同社の経営者に焦点を当てて、ほれみたことか的な言説が多く見られるように思います。自分としては、ステレオタイプだなぁと一言で済ませたい気持ちです。

システムやオペレーションの準備不足があってはならないということには、まったく異論はありません。
けれども、このトラブルをもって、孫正義氏を断罪するような論を展開するのはいかがなものかと思います。

ネットワークというものは、空気のように自由に使えるようになって初めて、新しい利用形態が累積的に充実していくところがあります。圧倒的大多数が必要な時に遠慮せずにオンラインになるから、自分もオンラインになる。彼がつながっているから、こちらもつなげられる。そのなかで、アプリケーションやサービスがいくつもいくつも立ち上がって浸透していくのです。速くなければ話にならないし、個人レベルで月々5000円ぐらいに収まらなければ、何もhappenしないでしょう。
現在のような安くて速い環境ができあがるきっかけになったのは、言うまでもなく、Yahoo!ブロードバンドに関する孫正義氏の大胆な価格設定があったからです。

今回のソフトバンクの携帯電話サービスで、同社の利用者同士は通話料金がゼロになるというものがあります。例外規定があるようですが、その細かい話は置いておきます。
通話量がゼロ。これは、IP電話の世界では当たり前になっていますが、携帯電話の世界ではおそらく世界初です。

これで何が起こり得るかを少し考えてみましょう(個人的に、少し未来のアプリケーションを考えるのが好きです)。
例えば1年後。若年層において、スタイリッシュなインカムを常時着用し、ソフトバンクの通話料金ゼロサービスを使って、友達リストで細かく通話相手を切り替えながら、常時誰かとしゃべりながら歩く、あるいは生活するといった集団が忽然と出現してくる、ということが考えられます。スタイリッシュなインカムがひとつあるだけで、たぶんこれは起こり得ます。

こういう、通信の料金がゼロであることによって、まったく新しい利用形態が忽然と出現するということは、トートロジーですが、通信の料金がゼロでなければあり得ない話なわけです。ゼロ円にするからこそ、まったく新しいものが出現してくる可能性がある。
そのライフスタイルがよいものかそうでないものかは、この際不問とします。

日本の10代~30代のネットワークの利用形態、および携帯端末の利用形態は、自分がネットワーク機器の会社のコンサルサービス部門でリサーチをやっていることもあって、よくわかるのですが、どうみても、世界でダントツです。ネットワーク(インターネット)の方は、安くて速いからそれが出てきています。携帯の方は、iModeがあったからこそです。
いまここに通話料金ゼロ円という環境が加わることでもって、また、別の、新しい利用形態がほぼ確実に出現してくると思います。
その利用の先進度合が、日本の様々なものをまた引っ張っていくのです。
iModeの親指打ちメールも女子高生から始まって、今では50代の人でも普通に使いこなしています。業務で携帯メールを活用するソリューションも無数にあります。それに類するものが、携帯電話料金がゼロ円あることによって生まれてくるのです。

ネットワークは可能であればゼロ円で使えなければならない。通話などの音声も、動画などのビデオ通話も、可能であればゼロ円で使えるとよい。それによって、たぶん新しい何かがhappenします。

その何かがhappenする環境は、漸進的な進歩からは出てこないのです。誰かがかなり大胆に踏み出さないと、何も始まらないのです。不連続な変化だからこそ、歴史や国に大きなインパクトを与えるのです。
私は、今回のMNPのトラブルをもって、孫正義氏の経営手法や経営手腕を断罪する言説は、イノベーションに対する反イノベーションだと思っています。場合によっては、国益を損ねるとさえ、言えると思います。

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