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医療崩壊。介護崩壊。迫る危機を回避せよ。~日用品公害・香害(n)~

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日本国民でありながら、医療に届かないひとたちがいる。介護サービスを利用できないひとたちがいる。
なにか落ち度や非があるわけではない。健康保険料も、介護保険料も、支払っている。
市井の片隅で、働き、次世代を育て、つつがなく暮らしてきた。にもかかわらず、だ。
もはやこれは「人権侵害」と言っても過言ではあるまい。

公共物の空気を汚す、という愚行

彼らを阻んでいるのは、日用品公害。院内や介護施設内の大気汚染だ。
「香害」という言葉で知られるが、香料だけの問題ではない。除菌・抗菌・防臭・消臭機能をもつ日用品による問題でもある。香料よりもむしろ、抗菌剤のリスクを高く見積もる向きもある。コロナ禍が、行き過ぎた清潔志向に拍車をかけた格好だ。
何種類もの香りと刺激臭の混じる悪臭。べたべたと貼りつき重層する、接着剤様の化学物質。早稲田大学大河内博教授が捉えたマイクロカプセルの欠片が、隅に拭き溜まる。生活環境中の化学物質は、蓄積して、われわれの健康を脅かす。

なにしろナノサイズである。N95マスクでも防毒マスクでも、防ぎきれない。咳、喘息、頭痛などが生じるのは、あたりまえ。一瞬で昏倒する人もいるという。一部の成分は非公開。何の物質による作用なのかは、推測の域を出ない。

彼らはまだマイノリティだ。だからといって特殊な人間というわけではない。特殊なのは、短期間で劣化した空気の方だ。
職場ガチャ、通勤ガチャ、隣人ガチャ。
運悪く、大気の汚染度が高い場所に暮らし、働いた。そのため、症状を引き起こしやすくなってしまったのだ。
原因は大気汚染なのだから、誰でも、同様の症状に見舞われる可能性がある。
もし、あなたの近所に、香料や除菌剤を好んで使う一家が引っ越してくるなら、もし、あなたが、芳香剤の充満する社用車で移動するなら、彼らの苦しみは、あなたの苦しみになるだろう。この問題、明日は我が身と心得よ。

大気汚染が阻む、医療と介護を受ける権利

医療・介護の現場で、とりわけ大気汚染が進んでいるのは、ERの処置室と、一般診療の待合、介護施設内だ。

ERには、着のみ着のままの患者が担ぎ込まれる。
業務中の事故なら、作業着のまま。試合中の怪我なら、ユニフォームのまま。着衣の多くは、抗菌系洗剤で洗われている。

強烈な香料臭に包まれた患者を、救急スタッフが総出で、ストレッチャーへと移す。密着した白衣には、ナノパーティクルが付着。そのまま次の患者の処置にあたる。処置室内の医療スタッフはもちろん、患者たちも、付き添いたちも、ナノパーティクルに晒される。吸い込んで咳が出たとしても、踏ん張ることができるなら、まだマシなほうだ。化学物質の霧を突破できないケースがある。患者が診察室にたどり着けない。付き添いが介護施設に入れない。大けがで搬送された夫と付き添う妻が、見えない空気の壁で分かたれる。主語のない、門前払い。

待合の汚染も深刻だ。基幹病院ともなれば、年間数十万人もの患者が、衣類に残留した化学物質を撒き散らす。
椅子への移臭は強烈だ。座れば、ボトムに移臭する。除去しなければ、自宅のクローゼットが汚染される。これを避けるべく、健康被害者有志が、パンクファッションのバムフラップを魔改造したパッドを試作し始めた。

介護施設では、入浴時のシャンプーやリンスが、強い香りを放つ。紙パンツなどの介護用品も、消臭と香り付けの加工が進む。そのニオイたるや激烈で、空恐ろしくなるほどだ。ショートステイやデイサービスを利用すれば、要介護者は化学物質まみれで帰宅する。除去のための洗濯が、介護者のエネルギーを奪う。

訪問看護についても、同様だ。たとえ看護師が該当製品を使っていなくても、訪問先の世帯で使用されていれば、全身に移臭する。次の訪問先に持ち込むのは簡単だ。

解決策は、低リスク製品への置き換え一択

この危機を回避できないならば、医療崩壊、介護崩壊は、待ったなし。健康被害に苦しむひとびとは、パンフレットを作成して、使用者に説く。低リスクの洗剤を自費で購入して渡すひともいる。だが、聞く耳を持つのは、ごく一部。この国のひとびとは、もう想像力を手放してしまったのか?
状況を打破するには、われわれ全員が、できるだけ低リスクの製品に置き換えねばならない。それ以外の選択肢はない。もはや、規定量なら使ってもよいとか、控えめに使えば大丈夫、という状況ではない。

個々の医療機関や看護・介護サービス事業所に対して、働きかけていては間に合わぬ。ボトムアップより、トップダウン。そこで、昨年12月、公益社団法人日本看護協会に対し、facebookメッセージで、啓発を依頼してみた。
先方からのアクションはまだ、ない。コロナ禍が継続している中では、これ以上の要請は憚られる。
今後の対応に期待しつつ、待つしかあるまい。

【 公益社団法人日本看護協会へのメッセージ 】

突然のメッセージ、失礼いたします。香害啓発活動をしている者です。

医療・看護・介護の現場での、香害についてお願いがあります。

わが国では、ここ数年、香り付き柔軟剤、抗菌系合成洗剤、香り付け・消臭・防臭目的の日用品の消費が、急拡大しています。
これらの製品に含まれる一部の化学物質は、洗濯した衣類に残留し、着用者の出向く先々で放たれて、大気中に飛散します。
その中には、PM2.5以下のものもあります。吸気による健康リスクは避けられません。

看護師の方々は、もちろん、このように有害な製品は、使用されていないこととおもいます。
しかしながら、リスクを知らない民間人は、それらで洗濯した服を着て、病院・介護施設を利用します。

院内や施設内には、有害物質が蓄積し続けます。
医療・看護・介護従事者は、長時間、汚染された空気の中で、曝露し続けることになります。
これを防ぐには、フレグランスフリーポリシーの策定が有効です。たとえば、米国カリフォルニア州公衆衛生局は、それらの日用品が喘息の発症に関与しているとして、雇用者向け、従業員向けに、フレグランスフリーポリシーのテンプレートを公開しています。

また、患者・要介護者・およびその家族もまた、曝露による影響を受けます。
自力歩行の困難な入院患者や要介護者は、汚染された同じ一室の空気を吸い続けます。空気の質は、健康に直結します。
訪問医療や訪問看護でも同様です。
医師や看護師が、それらの製品の使用者世帯を訪問すると、有害物質に暴露します。そして、有害物質を衣類に付着させた状態で、次の訪問先に向かいます。訪問先の患者や要介護者は2次被害を受けることになります。

まずは、皆さま自身の健康を守るため、次に、患者の健康を守るため、さらには、今健康な人の喘息や化学物質過敏症の発症を未然に防ぐため、いわゆる「香害」の原因となる製品の生体リスクを、啓発していただけませんでしょうか。
たとえば、講習会や、機関紙に情報を掲載するなどです。

すでに住宅街の空気は、人工的な香りや抗菌臭を放っています。
化学物質過敏症を発症する人も急増しています。
PM2.5の多い場所では、コロナ患者が重症化しやすいという研究結果もあります。
待ったなし、看過できない状況です。

詳しい情報は、次の4本のブログに記載しています。
ぜひとも、お目通しいただき、啓発方法について、ご検討いただければ幸いです。

医療・看護・介護の現場における「香害」問題

在宅介護の現場における「香害」問題

カリフォルニア州の友好都市は、フレグランスフリー・ポリシーの策定を

カリフォルニア州、喘息予防のための「フレグランスフリー・ポリシー」テンプレート

コロナ禍の折、ご多忙をきわめておられることは重々承知のうえで、以上お願い申し上げます。

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