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ソーシャルゲーム業界を席巻した米国ブログメディア驚異の影響力

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ソーシャルゲームの驚異的な成長,またそれを支えるアフィリエイト広告に関しては,当ブログでも何度か紹介している。

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この中でも取り上げたアフィリエイト広告最大手に Offerpal Media社がある。
Zyngaなどのソーシャルゲームの雄も絶好調だが,連動するようにOfferpalの業績も急成長しており,設立して2年ほどにもかかわらずユーザー数1.6億人、7300億バーチャルポイントを発行するまでにいたっている。

Offerpal Media Reaches 160 Million Users (Virtual Goods News, 2009/10/29)

しかしこの急成長企業に 米国で最も影響力のあるブログメディアのひとつ,TechCrunchがその商法に強い警告を発した。米国時間で10月27日のことだ。以降,矢継ぎ早やにキャンペーンを展開する。その動きを時系列で追ってみよう。

10/27 巨大化するソーシャル・ゲーム―ただしダークサイドにご注意
10/31 詐欺まがいが蔓延―ソーシャル・ゲームの邪悪のエコシステムは放っておけない
11/01 How To Spam Facebook Like A Pro: An Insider’s Confession
11/02 Scamville: Zynga Says 1/3 Of Revenue Comes From Lead Gen And Other Offers
11/02 Two Companies That Said No To Social Media Scams
11/02 Zyngaがゲームから詐欺まがいの削除に乗り出す, 迅速な対応に拍手を!
11/02 RockYouも詐欺まがい広告を止めると宣言―Facebook自体はどう対応するのか?
11/03 MySpace Says Zero Tolerance For App Scams, Changes Terms Of Use
11/03 詐欺まがいソーシャル・ゲーム広告―インサイダーによる正常化へのロードマップ
11/04 Offerpal、詐欺商法の女王Shuklaを切る
11/05 Facebookが詐欺広告撲滅のための規制を強化 

ソーシャルゲームでポイント不足になった時に登場するアフィリエイト広告の先に詐欺まがいのサイトがあること,それを広告代理店はもとより,ソーシャルゲーム企業やソーシャルネットワーキングサイトが野放しにして収益を上げているのは問題ではないかという告発キャンペーン。

TechCrunchが告発したことで,まず2社のゲームメーカーが賛同し,最大手Zyngaが,さらに業界3位のRock you!がそれに続く。

それによってプラットフォームであるMySpaceとFacebookまで素早くルール改訂という形で呼応したのだ。

そして悪の根源とされたOfferpal社CEOであるShunkla氏(上記で詐欺商法の女帝とされている)が解任されるという劇的な幕切れとなったのだ。

このブログメディアの驚異の影響力,それにソーシャルゲーム業界の極めてクイックな反応には舌を巻かざるをえない。いかにベンチャー企業とはいえ,今や絶好調で驚異的な成長を遂げている分野にいる主役たちだ。その収益性を犠牲にしてまで突き動かしたのは,背景にソーシャルメディアによってつながれたユーザーがいるからだろう。

ソーシャルメディアが告発し,ソーシャルメディアが反応する。数億人という圧倒的な数のユーザーが監視し,それを恐れたベンチャーキャピタル(主役たちの株主だ)が動いたのだ。

例えば,日本における週刊文春の告発キャンペーンでは,たいてい数ヶ月を要してはじめて主役たちが動き出す。それと比較すると,この時間感覚は限りなくクイックだ。

経済も政治も,ソーシャルメディアを活用するユーザーによって常に監視されている時代になった。企業が望む,望まないにかかわらず,リアルタイムな反応をしないとユーザーに弾劾され,ブランド価値を大きく落とすことになる。今回の一連の流れは,それをあらわす絵に描いたようなシナリオだった。

余談だが,米国ほど過激な状況ではないが,日本のメガSNSであるmixi,GREE,モバゲーとゲーム・デベロッパーにもこの余波はまもなく届くだろう。それらも含め,来週には恒例となった三社の業績比較を記事化する予定だ。


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