ソーシャルメディアとビジネスモデルの進化系統図を見てみると
前回に続き「ソーシャルメディアとビジネスモデルの進化系統図」を検証してみよう。
ここで,3つのビジネスモデル(広告収入,コンテンツ収入,会員料金)は光の三原則で表現している。例えば,広告収入(黄色)と会員収入(水色)ともにあるサービスはその合成色(緑色)であらわしている。GREEはすべての収益を持っているので(黒),反対にTwitterはビジネスモデルがないので(白)だ。
ソーシャルメディアの原点は,シンプルなオンライン・コミュニティである。
その起源を探ると,電話で発展した「出会い系コミュニティ」と,PCで発展した「パソコン通信の掲示板」にたどり着く。
「出会い系コミュニティ」は,米国では「900番サービス」,日本では「ダイヤルQ2」と呼ばれた有料電話サービスが源流だ。その流れは固定電話から携帯電話へシフトし,さらにiモードの登場で音声系から文字系にシフトした。そして携帯出会いサイトとして進化していく。この系統は古くから会員料金(一部は携帯キャリアからの回線料バックマージン)により巨大な利益を生んでいた。つまり収益性が極めて高いサービスが原点となっている系統だ。
一方,PC系掲示板はパソコン通信の雄「ニフティフォーラム」が最も有名である。その後舞台をインターネットに移し,世界に類を見ない巨大掲示板「2ちゃんねる」に引き継がれていく。「2ちゃんねる」のビジネスモデルは未公開だが広告収入を中心に黒字化しているようだ。「モリタポ」というポイント活用により一部機能は実質的に有料化されている。「モリタポ」はユーザー間でやり取りできる「はてなポイント」に似た仮想通貨で,オークション等を通じて換金できる点が新しい。
さて,匿名掲示板をベースにしたコミュニティが大きな収益を上げる一方で,新しいユーザー発信型メディアとして華やかに登場してきたのがブログやSNSだ。MySpace,Facebook,日本では mixi が急成長する。コンテンツに画像・動画を取り入れた Frikr や YouTube が派生し,さらにブログとチャットが融合した Twitter という急成長メディアが登場する。
表全体を俯瞰して目立つのは,米国型は広告収入(黄色が多い)に依存しているのに対し,日本型は古くからの収益モデルを複合的に取り入れている点だ。
この4月10日に,GREEは,売上高で112億円から128億円,経常利益は65億万円から73億円と,不況下に異例の,二度目の上方修正を発表した。
■ GREE 二度目の上方修正記事
その3日後の4月16日,Googleは,前期比で3%減収(IPO後初の四半期マイナス)の決算を発表している。
■ Google 初の減収記事
この明暗が象徴する通り,日本のソーシャルメディアは,世界に先駆けて大きな利益を出し始めているのだ。
-- 少しわき道にそれるが,ITベンチャー投資姿勢の差も一因としてあげられる。
-- 米国では Google と Microsoft が,収益性に関係なく競争的買収行動に出ることが多く,
-- ベンチャーキャピタルも赤字サービスに投資しやすい。
-- 日本では M&Aによる EXIT が弱いため,投資家はITベンチャーの期間収益性に対してシビアだ。
-- さらに日本ではiモード成功以来,携帯有料サービスに寛容であり,それがコンテンツ課金を容易にしている。
-- ただし iTunesの登場でマイクロペイメントが浸透しつつあり,今後は世界的に小額課金コンテンツが増える傾向にある。
結論から言うと,すでに日本のソーシャルメディアは極めて高い収益率をあげている。
工夫次第で 「ソーシャルメディアは儲かる」 のだ。
では,明日はもう少し詳しく,日本のソーシャルメディアが生み出した複合型ビジネスモデルの特長,儲け方のコツを見ていきたい。
(追記)
正確には FacebookやMyspaceにもコンテンツ型収益がありますが,全体売上に対する比率が低いため広告型として表記しています。この点ものちほど取り上げます。