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M&A マンデー

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 今日の米国メディアは“M&A(買収・合併)マンデー”で大騒ぎ。もちろん、話題の主は

● オラクルによるシーベル買収
● イーベイによるスカイプ買収

の2大ニュースだ。

ちょっと、僕の感想をまとめてみよう。

【オラクルのシーベル買収】

 オラクルがシーベルを狙っているのは、以前から知れ渡っていた。お安く買うのを得意とするオラクルを嫌って、シーベルは一度買収話をご破算にしている。しかし、シーベルは業績を回復できず、結局、今回の買収合意となった。

 同買収の注目点は大きく2つある。

 ひとつは、オラクルとIBMの競争関係に緊張感が高まってきた。IBMはミドルウェアのキングとして、企業システム市場で優位な立場を築いている。ピープルソフトやシーベルを傘下に入れたオラクルは、ミドルウェア市場で競争力をつけている。

 ただ、いまのところIBMの買収戦略はオラクルを上回っている。過去、4年ほどでIBMが買収した企業数は25社を超え、その中にはAscential(買収額11億ドル、企業向けデータ・ウェアハウスの大手、2005年3月買収)も含まれている。IBMのInformation Management部門だけでもPureEdge Solutionなど13件の買収を展開している。その吸引力は大きい。

 大物食いのオラクルと即戦力を狙った中小買収を展開するIBMという構図だ。

 もう一つはセールスフォース・ドット・コムの行く末だ。ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)の復活に貢献したセールスフォースだが、その成功ゆえに、競争環境も厳しくなっている。

 シーベル買収の発表をわざとセールスフォース主催のカスタマー会議にぶつけてきた事からも、オラクルはセールスフォースのCRM(カスタマー・リレーション・マネージメント)に挑戦するだろう。とはいえ、セールスフォースは、中小企業向け、オラクル/シーベルは大手向けとなるため、構図としては

1)オラクルはセールスフォースの大手市場進出を封じる

2)オラクルは、セールスフォースの得意とする中小企業市場への参入を狙う

と言う方向になるだろう。ただ、シーベルもオラクルも中小企業は苦手だから、どこまで成功するかはわからない。

 もちろん、IBMもセールスフォース潰しに動いている。セールスフォース同様、各種企業アプリケーション・ベンダーにIBMのミドルウェア・オンライン・プラットフォーム向けの開発を促しているからだ。つまり、IBM版ASPサービスを開始している。

 この状況では、セールスフォースが、このまま成長を続けることは難しい。どこで売り逃げるかに、同社のトップは頭を悩ましていることだろう。オラクルかIBMに買収してもらうのが、一番だが、どっちも高い金を払ってくれそうにない。仕方なく、欧州の大手SAPあたりと手を打つ可能性もありそうだ。

【イーベイのスカイプ買収】

 この買収はどうも納得がいかない。イーベイにとっての“スカイプの価値”が見えないからだ。

1)イーベイの付加価値サービス?

 イーベイは、同社の電子競売システムに、イーベイの電話機能を組み込むと話している。つまり売り手と買い手がクリック一つで話ができる環境を狙っていると言う。

 それなら、26億ドル(約2860億円)も支払う必要はない。ちょっと気の利いた通信機器会社なら、非常に安くスカイプ並のVoIPアプリケーションを開発できる。

2)スカイプの顧客を買ったか?

 では、スカイプの顧客を買ったのか?しかし、イーベイの顧客とスカイプの顧客では質が違う。なら、イーベイが物品の競売からサービスの競売へと事業を拡大するのだろうか。つまり、電話サービスをイーベイ上で安く売るわけだが、その可能性について、ニュースを読んでも、同社のコメントを見ても触れられていない。

 イーベイは、スカイプの今後の戦略について詳しく語っていない。そのため、この買収額を投資家や株主が納得するだろうか。巨額の投資に見合うリターンがなければ、成金の「お大臣遊び」と影口を叩かれかねない。

 一方、スカイプはうまくやった。同社の戦略は、古くさいバブル時代の代物だ。赤字でも無料でアプリを配布し、顧客を集めてから収益モデルを考える。ネットバブルに沸いていた頃は、こうした戦略は、株式上場などもでき比較的成功率が高かった。しかし、最近ではうまく行かないケースがほとんどだ。

 どうやって売り込んだかはわからないが、イーベイにとって高すぎる買い物と、僕は感じる。この直感が間違っていると良いのだが。

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