オルタナティブ・ブログ > 成迫剛志の『ICT幸福論』 >

”情報通信テクノロジは人々を幸せにする”を信条に、IT業界やアジア・中国を見つめていきます。

エンジニアでは無い人向け 「いまさら聞けない OpenStack」

»

 毎週月曜日の夜に開催している社内勉強会:白熱塾。 昨夜は、「 いまさら聞けない OpenStack 」というテーマで、エンジニアだけでなく、営業マンや管理部門の人々も含めて、注力分野のひとつである OpenStack について勉強した。

 「OpenStack 入門」、「いまさら聞けない OpenStack 」 などのキーワードでネット検索すると、いくつもの記事や書籍がヒットするが、インフラエンジニア向けの深い技術的な内容であったり、または知っておくべきキーワード的な数行の概要といった内容が多いようだ。

 昨夜の白熱塾の参加者は、インフラエンジニア、開発エンジニア、営業、マーケティング、管理部門と多岐に渡っていることに加えて、新入社員からベテラン社員まで幅広い層であった。 そんなバラエティに富んだメンバーから様々な視点での質問があり、それに講師だけでなく周りのメンバーが答えていくという活性化された状況だったので、「ついていけないチグハグ感」を感じた参加者も少なくなかったのではないだろうか。 そこで、本エントリーでは、"エンジニアでは無い人が知っておくべき OpenStack" にフォーカスして、昨夜の議論の要点を整理しておこうと思う。

openstackm.jpg

  1. Cloud OSとは?
    • Cloud OS とは、簡単に言うとAWSと同じような "Cloud" 環境を自分で構築するためのソフトウェア。
    • OpenStackの他、CloudSatck や Eucalyptus などがある。
    • AWSと同じような "Cloud" 環境とは、コンソール画面の操作やプログラムからAPIをコールすることで、抽象化された仮想サーバーや仮想ストレージ、仮想ネットワークなどのコンピューティングリソースを即座にユーザーに提供できる環境のこと。
    • "抽象化"、"仮想化" とは、ユーザーが物理的なハードウェアやネットワーク配線を意識する必要がないこと。 頼めば、裏で小人さん達が働いてくれているイメージか?(わかりにくいたとえだ・・・)
  2. AWS と OpenStack の関係
    • ユーザー視点で AWS と OpenStack の関係を(誤解を招くことを恐れずに)例えると、iPhone と Android の関係に似ている。 
    • Apple 一社が提供している iPhone。 Apple社は、製品やシステムの仕様や規格、構造、技術を独占的に保持し、情報を公開していない。そのために、iPhone ユーザーや iPhoneアプリ開発・提供者は、Apple社の世界にロックインされていると言えよう。 一方で、Googleが開発し、仕様を幅広く公開し、利用制限もほとんど無い Android。 様々な企業が様々な用途向けに Android を利用し、また必要に応じて機能を向上または拡充した製品を開発し提供・販売している。 ユーザーは、同じ Android の中から自分に最適なものを選択できるし、将来異なるAndroid製品に乗り換えても、基本仕様は同じなので移行も容易である。
    • 同様に AWS へのロックインを嫌う場合には、OpenStack を選択することにより、様々な選択肢を現在だけでなく将来も持つことができる。
  3. リリース
    • OpenStackの開発進展に伴うバージョンは、Version 1, Version 2などの数字ではなく、アルファベット(A,B,C,D...)を頭文字にした単語で表現された "リリース" で呼ばれる。
    • Austin, Bexar, Cactus・・・Icehouseときて最新はJuno. 次期はKiloである。
    • なお、このAustin, Icehouseなどは、OpenStack最大のイベントであるOpenStack Summitの開催地の地名が使われることが多かったようであるが、最近はABC順に並べられなくなり、無関係の地名が使われているようである。
  4. モジュールまたはプロジェクト
    • OpenStackで創ろうとしているAWSと同様の機能を、OpenStackではModuleと呼んでいる。また、Module毎にプロジェクトが立ち上がっているため機能をProjectと呼ぶことも多い。
    • モジュールには、コンピュートを提供するNova,ブロックストレージのCinder、ネットワーク機能のNuetron、認証機能のKeystone等がある。
  5. 企業のOpenStackへの取り組み
    • 「弊社では OpenStack やってます!」 という企業は多いが、その取り組み方は様々である。
    • 企業の OpenStack への取り組みをビジネス視点で整理するには、僕の以前の記事: 「ビジネス視点でのOpenStack」 が役にたつだろう。
  6. Cloud OS の勢力図
    • オープンソースのCloudOSでは、従来使われることの多かったCloudStackからシェアが逆転し、OpenStackが使われることが増えているようである。 これは、OpenStackの開発が進展し品質が向上すると共に、提供されるディストリビューションが増え、またサポートする企業が増えたことによるものと考えられる。
    • 企業や団体がプライベートクラウドを構築するためのソフトウェアの選択肢としては、vmware、MS Hyper-V と OpenStack の3つに収れんされてきているようである。

昨夜、議論はまだまだ続いていたのだが、とりあえずまずは上の6点を理解しておくと良いと思う。 また、誤認識や不適切な表現があれば是非ご指摘お願いします。

Comment(0)