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『神奈川区に住んでいた僕』が『港北区の僕』であることを戸籍でも証明できない件

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日本の役所での手続きはどうしてこんなに煩雑なのだろう。

今週も、業務コンサルタントやシステムエンジニア的視点でみると『えええ』と閉口するような体験をした。

 

それは、家を買った人に馴染みのある『抵当権設定』の登記処理である。といっても、権利設定等が難解複雑となりそうな『借り入れに伴う登記』ではなく、『完済に伴う抵当権抹消』とそれに伴う手続きである。

ローンを完済した後に金融機関から送られてきた書類。添えられたレターには、これを持って行政書士に抵当権抹消を依頼せよ、とのこと。 インターネットで見てみると行政書士に頼むと最低でも1万円程度の手数料がかかるらしい。 これとは別に登録免許税など役所に支払う費用も発生する。 一方で、自分で法務省局に行って手続きもできるらしい。 用意すべき書類は1枚だけ。 ならばと、娘の入学式で休暇を取った昨日の午後に法務局に電話した。

法務局の電話応対は素晴らしかった。 他の役所だけでなく民間のサービスデスク、コールセンターでも見習いたい対応だった。

ローン完済に伴う抵当権抹消を行いたい旨伝えると、考慮すべき点、追加で必要となりそうな点についてアレコレ質問してくる。 相談している僕が面倒くさくなるほど、細かい質問をしてくる。でも、これには理由があった。 手続きに必要な書類を法務局だけでは揃えられないため、事前に僕が準備すべき書類を洗い出してくれたのだった。

 

僕の場合、不動産を購入、同時に住宅ローンの抵当権設定をした後に、海外も含め何度か引っ越しをしているのだが、この引越し=所有者の住所移転を『不動産登記』に反映していなかったことから、今回の手続きが複雑となった。

現在の日本では、共通して個人を特定する一意な情報がマチマチである。それ故、政府は今回のマイナンバー制度等の導入を何度もトライしてきたのだろう。 様々な場面で記入させられる『住所、氏名、性別、生年月日』とはそういうことだったのかと、あらためて認識した。 話を戻すと、不動産登記上の所有者の『個人を特定』しているのは『名前と住所』だった。 このことから、住所移転に伴う登記の記載事項変更を行っていなかった僕は、少々面倒なこととなったのだ。

 

  • 僕の引っ越し(住所移転)の経緯は、横浜市神奈川区 → 横浜市港北区 → 香港 → 横浜市港北区(以前と別の家) → 横浜市港北区(以前の家)である。神奈川区から港北区に引っ越した際に本籍も港北区に変更した。
  • 不動産の登記簿上は、未だ『神奈川区の僕』になっている。
  • 抵当権抹消を行うためには、まず登記上の所有者を『港北区の僕』に正す必要がある。
  • 『神奈川区の僕』が『港北区の僕』と同一人物であることを確認するためには、公的な書類(情報)で住所移転を確認(=証明)する必要がある。
  • しかし、住民票には『転入前の住所(=直前の住所)』しか記載されていない。
  • そのため、『戸籍の附票』によって住所の変遷を確認したい。 戸籍の附票というのは聞いたことがなかったが、Wikipediaによれば以下のようなものである。

戸籍制度が始まって以降明治初期ごろまで本籍は居住地そのものを示していたが、明治中期以降には本籍地以外で生活・就職する者が増えたため、本籍地=居住地(住所)という形態が崩れつつあった。そこで1914年(大正3年)に寄留法が制定され、寄留簿によって本籍地以外で生活する者の把握が行われた。その後1951年(昭和26年)に施行された住民登録法により、住所の把握は完全に住民票に任されることとなった。住民登録法の中で寄留簿の後を継ぐものとして戸籍の附票が制定され、これと共に寄留法は廃止された。

寄留簿が本籍地を離れて生活する者のみを記録したのに対し、戸籍の附票は戸籍に入っている者全てが記録されており、住民票の記録の正確性を維持するためのものとして位置づけられている。

  • 法務局ではなく、区役所で『住民票『と『戸籍の附票』の写しをとりにいった。 窓口の人曰く、戸籍の附票は2種類あるという。 ”通常版”の附票は、数年前のシステム化の後の住所の変遷のみが記載されている。 その前の変遷が必要ならば、古いほうの別のシステムからの附票となる。しかし、この古い方の付票には、数年前のシステム化以降の住所は反映されておらず、記載されていない。 えっ??? システム変更に伴うデータ移行を行っていないということか?
  • 仕方がないので、新旧両方の『戸籍の附票』をとり(手数料も2倍)、法務局へ出向いた。しかし、この時点では未だ『神奈川区の僕』が『港北区の僕』と同一人物であることを証明の意味が正確に理解できていなかった。
  • 法務局の相談コーナーで親切、丁寧な応対を受ける。 ひとつづつ書類を確認していく。事前に電話で相談した通りの書類を揃えていたつもりだったので、安心して待つ。 しかし、相談員の顔が曇った。『これではだめです。』と言う。
  • 新旧の『戸籍の附票』によって、”港北区に戸籍を移してからの” 住所の変遷は確認できるのだが、それは戸籍上の『港北区の僕』であって、一番確認したい 『神奈川区の僕』が『港北区の僕』であることが証明できないのである。
  • なるほど。きっと ”戸籍の変遷”の証明書をどこからからもらわなくてはいけないのだな。。と勝手に思ったのだが、相談員が続けた説明は違った。
  • 「神奈川区役所に行って、不在住、不在籍をもらってきてください」
  • 『不在住』とは『不在住証明書』、『不在籍』とは『不在籍証明書』。“不在籍不在住”とまとめて言われるこの証明書は、申請した本籍(または住所)及び氏名に該当する戸籍や住民登録がないことを証明する市区町村発行のものらしい。
  • 仕方がないので言われた通り、神奈川区役所に証明書を取りに行った。 これまた面倒なことに、『不在住』と『不在籍』の申請・発行窓口が異なり、一度に受け付けてくれなかった。戸籍課と住民課?
  • 結構な手間隙がかかったが、これでやっと『港北区の僕』が『神奈川区の僕』であることが証明された! と思いながら、『不在住不在籍』を受け取って内容を見たらビックリ。 単に僕が走り書きで書いた証明願(申請書)の下段に ”証明します・ハンコ” を押しているだけ。中身は、前述の説明通りで、要は僕は神奈川区の当該住所に住民票はなく、また当該住所に戸籍も無い、ことを証明しているだけ。
  • えぇぇ。これでは、『神奈川区の僕』が存在しないことだけが証明できただけで、『港北区の僕』と同一人物であることを証明できていないじゃん!
  • また書類が足りないのだろうな、と法務局に再び出かけた。 恐る恐る不在住不在籍と共に全ての書類を提出。 あっさりと受理いただけた。 ふうん。

 

この体験でわかったことは、この先進国の中で最も管理が行き届いていそうなこの日本でも、『僕』を本当に特定できる公的記録が非常に曖昧であり、時系列でみると”セキュリティーホール”がありそうなこと。 しかも、登記という最も権利関係をしっかりと守ってくれているはずのものでも、住所記録がトレースできない時には、”『神奈川区の僕』が現在は居ないのだから、きっと『港北区の僕』は以前は『神奈川区の僕』だったのだろう” ということで登記の書き換えを行ってしまっているということ。

やっとはじまりそうな国民ID制度 、マイナンバー。 これができることで色々な不合理が解消されることを期待したい。 でも、きっと新旧戸籍の附票システムのように『データ移行』がされず ”ホール” は存在し続けるのだろう。

やっぱり、元システムエンジニア、元業務コンサルタントの政治家が必要でしょう?

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