セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

不思議な製造業偏重

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先日の経済紙のトップに、糖尿病関連の医療設備を政府や大手商社、機器メーカーなどが一緒になって中国向けに設置するという記事が載っていた。確かに、巨大な人口を有する中国において、このところの急速な経済成長で糖尿病が増加していてニーズがあることは事実だろう。

だが、そこに日本が病院を建て、機器を輸出し、透析を行うという発想が、そもそも良く理解できない。まず、中国に病院を作る、つまり投資をすること自体、リスクが大きいというのが一点。確かに、日本の機器は一流かもしれないが、それは単に輸出すればよいだけで、あとは結局医療は医師が行うものだから、これは医師を送り込めばよいだけだが、それは逆に我が国の医療体制を弱めることにもつながる。

そもそも中国の経済力の高い人々を対象として想定しているようだから、だとすれば医療ツーリズムで日本に連れてきた方が、より効率が良いのではないか?どうも何かあるとすぐに箱モノを作りたがる、製造業至上主義、インフラ輸出主義が相変わらず我が国の政府や産業界に蔓延しているように感じられてならない。

加えて、再生医療の進展で近い将来糖尿病は培養細胞の投入で治療が可能になる見込みであることも念頭に置けば、透析設備などの旧来型の設備をベースにした病院というもの自体、ひょっとすると時代遅れかもしれない。

翻って、未だに政府が一生懸命支援しようとしている製造業だが、その一翼を担う三菱重工は、大型客船の建造で巨額の赤字を出し、且つそもそも製造技術そのものが世界との比較で優位にあるとは言えない状況を露呈した。加えて、日本が獲得することが確実視されていた豪州の潜水艦プロジェクトで敗退。まあ、こちらの方は政治的な問題が主因だとは思うが、いずれにしても今や我が国の主要産業は、これまで誇ってきた技術力においても、残念ながら世界の後塵を拝していることを、我々はちゃんと認識する必要がある。

そこに来て、三菱自工の事件。東芝に次ぐ大手企業の失態だが、営業頑張れという東芝の事例とは異なり、直接消費者に直結する情報に関するものであって、しかも25年という期間まで勘案すると罪は重い。

私は、米国型の企業統治の仕組みに必ずしも賛同するものではない。エンロン事件などを契機として導入された我が国のコンプライアンスの仕組みは、あまりに煩雑であって、しかも監査法人だけがリスクを取らずに肥える制度であり、私としては反対なのだが、だが本来真面目なはずの我が国の一流製造業にこのような事件が頻発すると、やはり外部的なチェックの仕組みは不可欠なのかと思ってしまう。

何故、我が国の経営者たちがこんなに品位と質が落ちてしまったのか?短期的収益を重んじる米国型の資本市場の論理もその一因ではあると思うが、それだけで語れるものではないと考える。従業員を守ることもしない、会社が行っている間違ったやり方を変えることもしない。リスクを取って新たなビジネスに挑戦することもしない。ただ、自らの任期が平穏に終わることを待っている経営者が大部分の我が国の産業界など、二度と浮上することはないだろう

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