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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

何だかおかしい経済記事

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この間日経新聞に日本の労働者の所得が国際比較で全く伸びていないという記事が載っていた。そして、その原因として労働生産性が低いことが挙げられていた。また、併せてIT化を含め、生産性向上のための投資が行われていないとの指摘もあった。

翌日は、今度は我が国の大企業の株主還元が大きく伸びているという記事だった。

だが、何かおかしくないか?生産性が低いのであれば、なぜ株主にそんなに還元できるのだ?要は、儲かったお金を海外大手ファンドを含めた投機家にせっせと貢いでいるから、従業員に回らないだけではないか?

労働生産性が低い、つまり我が国の労働者は働いていないとでも言いたいのだろうか?確かに、労働訴訟などの高まりの中で、昔の滅私奉公型の労働者は減っているかもしれないが、でも、それなりに働いているし、それが収益を生まないのは労働者のせいではなく、経営者の戦略の問題ではないのか?

労働生産性という分かったような用語も問題だ。要は事業から生み出された付加価値を労働時間などで割ったもの。その付加価値とは当然売り上げ、つまり価格に大きく影響される。

いつまでたっても、下請け根性が抜けない我が国の企業が、途上国と価格競争に負けないように、また欧米の最終アセンブリー企業の指示に唯々諾々と従い、ただ安さだけを追求しているから、稼ぐ力もなく、労働生産性も低いという事態を招いているだけではないのか?

このような単に一般的な数字だけを追い求めて比較をし、自らを貶める報道には全く納得できない。ここ数年でも、経団連の要請に従い法人税率を大きく下げ、一方で従業員の血のにじむ努力で、売り上げは増えない中で、利益を伸ばし、ここから株主還元を大きく増やしながら、従業員給与はほとんど変わっていない、そんな日本企業のあり方に今こそメスを入れるべきだろう。

そして、本当に良いものを、正当な価格で売り、そこで努力した従業員にきちんと報い、それが消費という形で内需を押し上げ、経済が好転する、そういう戦略を個々の企業が推進すべきだ。もはや戦後の自国の市場の規模を超えた生産体制で輸出中心型で高度成長を目指すのではなく、自国の経済規模に見合った内需型の安定的な成長を目指すべき時ではないか、と考える。

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