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鎌倉大仏を様々な観点から研究して見えた曼荼羅とは?

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29314193_10211551196635025_5763118200174673920_n.jpg鎌倉大仏で有名な鎌倉の高徳院で大仏に関するお話を聴いてきました。お話しいただいたのは、高徳院のご住職でかつ慶應義塾大学文学部の教授でもある佐藤 孝雄さんです。お寺で大仏の話となると、仏教のお話かと思って出かけましたが、講演のタイトルは「鎌倉大仏と研究の"曼荼羅"」ということで、鎌倉大仏を様々な学術的観点から研究したその調査報告でした。

国宝でもあり、世界的にも有名な鎌倉大仏ですが、実は分かってないことが多いのです。これほど大きな仏像なのに、造立の記録はほとんど残ってないとのこと。『吾妻鏡』によると最初は木造だったこと、また同時期の紀行文『東関紀行』に木造の仏像と大仏殿があったことがわずかに記述があるのみ。大仏殿があったことは、現在も境内に残っている礎石からも分かっていて、何度か台風や地震で倒壊し、幾度か再建されたものの最後の倒壊の記録からおそらく再建されずに500年、大仏は露坐となっているそうです。背後の山を借景にした美しい姿を見慣れているだけに、かつて大仏殿があった光景を想像するのが難しいですね。

考古学者でもある佐藤さんが当寺の住職になられてから、発掘調査が進みいろんなことが分かってきたそうです。礎石は60個あり、大仏殿の大きさはCGで復元もされました。瓦は一つも出土していないそうなので、東大寺の大仏殿とは違い桧皮葺だったのではと。
また、大仏に向かって斜行堆積した盛土層から大仏鋳造の方法も分かってきています。鎌倉大仏は、大仏様の中に入れるので、内側からも観察ができ銅による鋳造の鋳継ぎも3種類、場所によって使い分けられていることも分かっています。

地層のボーリング調査では、大仏殿倒壊の要因となった津波の堆積物を確認、関東大震災での地盤の壊れやすさ指数も算出されました。

露坐である大仏には、経年劣化以外にも鳥獣の糞(主に鳩)や昨今の環境悪化による強酸性にさらされていることなどをX線による分析、模型を用いた風洞実験などにより明らかにしています。

創建当時の記録がほとんどない高徳院ですが、明治・大正期の乾板写真が大量に残っているそうです。(ガラス板は関東大震災でほとんど割れてしまったそうですが)紙焼き写真はたくさん保管されているとのこと。ほとんどが当時横浜に駐留していた外国人が撮影したもので、大仏と一緒に撮影された写真は、鎌倉大仏の定点観察記録。背後に映る植生の変化、当時の外国人や一緒に映っている日本人の風俗など並べてみると非常に興味深いです。戦後や現在の写真と比べるとさらに、その時代時代にどのような生活をしていたのかが見えてきます。自然がもたらす森林と人が生きるために手を加えた森林の歴史をそこから読み取ることができます。

話をお聞きして、鎌倉大仏を中心に考古学・歴史学、文献史学・美術史学、生物学、気象学・地震工学、文化財科学、地質学・地形学などなどなるほど研究の曼荼羅が見えてきました。

それをふまえて、大仏様を参拝です。

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銅の継ぎ目がよく分かりますね。また右頬にかつての黄金の仏像だった時の名残があります。いつどのように作られ、そしてこの寺に何が起きてきたのか、どんな人が来て、どんなことをしていったのか、大仏様は何百年もご覧になってきたのですよね。それを思うととても感慨深いです。古いものが残っていることってなんて素晴らしいんでしょう。これだけ大きな仏像を建立した当時の人々の情熱にも心打たれます。仏像彫刻のすごいところは、角度によって表情が変わること。そして、こちらの気持ち次第で語りかけられるメッセージが違って思えることでしょうか。本当に不思議です。

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現在、多くの人がベンチとして座っているのは、かつての大仏殿の礎石です。現存56個。全部で60個で、大仏殿を支えていたことが分かっています。酸性雨など環境汚染も心配なので、再び大仏殿で覆ってあげたいとの思い(それが創建当時の姿でもありますし)と空や山を借景し自然の中に露坐するこの美しい姿のままで今後もあり続けてほしいという思いが拮抗しました。

kamakura13.png今回この素晴らしい会を主催されたのは、 鎌倉十三仏詣実行委員会。普段は入れないお寺やお堂、庭園などを参拝でき、また貴重なお話の聴講や座禅体験ができます。説明を聞いてから参拝すると理解が深まり、またこれまで見落としていたもの、新しいものが見えてきますね。
古都鎌倉の散策がさらに楽しく深くなる鎌倉十三仏詣。機会がありましたら、ぜひ参加してみてください。

鎌倉十三仏詣
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