あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

僕が3年間挑戦していること、あるいは人はなぜ4日間ぶっ続けで自転車に乗るのか

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ガソリンさえ投入し続ければ、人間の体はいつまでも動き続ける。
僕は自分の体と自転車を使って、この3年、実験を続けた。
現時点では「丸4日間までなら、ぶっ続けで動かせること」までは確認できた。
 
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★ブルベという世界
僕は自転車、特にロングライド(長距離走)が好きだ。
ロードバイクに乗り始めると、すぐに50㎞くらいなら誰でも走れるようになる。だから自転車の世界では160㎞くらいから、ようやくロングライドと呼ばれるようになる。例えば東京-小田原の往復だ。早朝から日没まで、ゆっくりと、でもあまり休憩せずに走ると、そのくらい走れる。
そしてロングライドの中でも、僕がこの数年ズッポリとハマっているのがフランス発祥の「ブルベ」だ。
・200㎞、300㎞、400km、600㎞など、超長距離をぶっ続けで走る
・人と争うレースではなく、参加者がそれぞれ完走を目指して頑張る
・主催者によって決められた、山あり海ありの風光明媚なルート
・ルート上のチェックポイントをオリエンテーリングの様にめぐり、 ゴールに
  帰ってくる
・「200㎞を13.5時間以内」など、制限時間が決っている
そしてコースを制限時間以内に走りきれば、フランス本部から「認定メダル」をもらえる。「君は200㎞を13.5時間で走り切る能力があるよ」という証みたいなものだ。ちなみにブルベとはフランス語で「認定」という意味らしい。初めて600㎞の認定メダルを貰った時は嬉しかったな~。
折からの自転車ブームもあり、この5年ほどでずいぶん日本でブルベを走る人も増えたようだ。競技人口は2000~2500人、特に熱心にやっている人が500人くらいだろうか?
グローバルな組織なので日本だけじゃなく、ヨーロッパやアメリカはもちろん南アフリカやインドネシアなど、世界各国に支部がある。そして世界中、同じルールで大会を開催している。
PBPという4年に1回のパリでの大会は、全世界から5000人も参加する。日本からの参加者は100人くらい。僕は前回は直前で怪我をして涙を飲んだのだけれども。
ちなみにこれは、120年前からやっている、世界最古の自転車イベントだ。あの、ツール・ド・フランスよりも古いのだ。
★400kmとか600㎞をぶっ続けで走るってどんな感じ?
600㎞を走り続ける、と言っても普通の人には想像出来ないと思う。
600㎞の定番コースだと
・埼玉と会津の往復
・紀伊半島1周
・沼津⇒掛川⇒松本⇒沼津
などがある。
僕はあまり車が好きじゃないので、会津まで運転しろ、と言われたらげんなりする。でも、自転車だと走れてしまうから不思議だ。
制限時間は40時間なので、土曜の早朝から日曜の夜中まで、ほとんど寝ずに延々自転車を漕ぎ続け、ようやくゴールに辿り着く。
休憩、食事、仮眠、トラブル対応などは、全てこの制限時間でまかなう。速い人はゆったり寝たり美味しいモノを食べる余裕があるけど、(僕のように)遅い人だと、ご飯はコンビニ。睡眠もファミレスや公園のベンチで30分仮眠するくらいの余裕しかない。
当然、真っ暗な山道も走る。安全のために、前にも後ろにもかなりパワフルな電灯をつけている。
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そして、雨でも走る。5月や6月に日本列島を横断するレベルの距離を走っていると、たいていはどこかで雨雲に会う。ちょっと降ったくらいでリタイアしてたらいつまでたっても完走出来ないから、レインウェアを着込んで走り続ける。
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この写真の時は、全体で300㎞のコースの半分、時間にして8時間くらいは雨だった。ブルベは一種のサバイバルゲームなので、コンビニ袋を足に巻いて雨を凌ぐとか、その場で手に入るものでなんとかする。とにかくしぶとく走り続けないと、完走できないのがブルベだ。
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★大人のスポーツ
夜間、悪天候、疲労、眠気の中で走るので、ある程度危険を伴う。そういう時にどう対処するのかは、全て自分で判断しなければならない。自分の体力を見極めて、リタイアすることも含めて。
ブルベを主催してくれている方々は全員無報酬のボランディアだから、トラブルが起きても主催者にすがることは出来ない。300㎞離れた会津の山奥でリタイアしても、自力で帰還しなければならない。
「自己完結している自転車乗り」だけが参加を許された、大人のスポーツなのだ。
そして単に自転車が速いだけでは、ブルベで完走はできない。
超持久力はもちろん、自転車が壊れた時に創意工夫で凌ぐことや、トラブルが起きない様に事前に準備する段取り力、コースを間違わない様に地図で予習をするマメさも大事だ。
土曜早朝の段階で睡眠不足だと後がキツイので、金曜夜に仕事を振り切る鈍感力も必要かもしれない。
もちろん、疲れたり悪天候になっても諦めない、タフな精神力も必要となる。
逆に言うと、そういう「人としての総合的なタフさの勝負」なのが、ブルベの面白い所かもしれない。
僕も大型台風に心が折れたり、疲れ切ったりしてリタイアしたり、ルート予習不足でミスコースして時間切れになったことがある。そんな時は単に脚力がなかった時よりも悔しいし、次回こそは、と思う。
 
 
 
★なぜブルベを走るのだろうか
ブルベについて話すと、「なんでそんな(クレージーな)ことをやってるんですか?」と聞かれる。「そんなに走って疲れないんですか?」とか「眠くならないんですか?」とかも。
もちろん、延々走り続けたら、疲れるし眠くなる。山道がきつくて泣きたくなる時もある。お尻が痛くなることもある。でも、走り続けている。
なんでだろうか。
単純に、自転車をこぐというのは楽しいものだ。
そして、延々坂を登ってたどり着いた峠から見た風景は、単に車で出かけて見た風景とは、やっぱり違う。
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ブルベでしか味わえないこともある。
寝静まった夜の宿場町を音もなく通り過ぎる時の不思議な感覚。
夜通し走った後の夜明けの美しさと、太陽のありがたさ。
レースの様に他人と競争している訳じゃないから、一緒に参加している人たちと助けあえるのもいい。初対面の人と声を掛け合い、夜の山道をゆっくりと話しながら登ることも多い。
でも本当の理由は、
「他人と競争するのではなく、自分との戦い、自分へのチャレンジ」
が楽しいのだと思う。
走力をつけるために走りこみをして、事前に色々準備を尽くして、走り始めてからもトラブルや体調不良をなんとかやり過ごして、ようやく完走できるかどうか。
そういう自分との戦い、挑戦は楽しい。
あなたも仕事以外に、何か本気で挑戦できることを持っていますか。
 
 
★台湾で1200㎞を走って来ました
こうしてブルベにどっぷりハマリ、ついに先日、台湾で開催された1200㎞のブルベに参加してきた。台湾の南端からスタートして北端まで往復する1200km。制限時間は90時間(だいたい4日間)だ。
凄まじい経験だった。
南国の風景、山道、ミスコース、幻覚、涙、豪雨、そして友情。
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その時の体験記をブルベの団体のWebサイトにアップしてもらったので、興味を持った方はぜひ読んでみて下さい。ブルベをあまり知らない人でも楽しんで読んでもらえると思います。
http://www.audax-japan.org/reports/taiwan1200/index.html
Comment(2)

コメント

大川剛

作家・村上春樹氏もその著書(「走ることについて語るときに僕の語ること」)で同様のことを語っていますよね。走ることは自分との闘いであり、走る理由は、好奇心以外の何者でもないと・・・。走っているときは、株価のこととか、経済成長率のこととか、原価率のこととか、上司の評価とか、そんなをことを忘れて、良い意味で自己中心的な思考になれるので・・・人生にとって長時間の有酸素運動は不可欠なのだと思います。

大川さん、こんにちは。
「そんなに長い間自転車に乗っていて、何考えているのですか?」ともよく聞かれます。
稀に仕事のことやブログのネタを考えることもありますが、僕の場合は90%は無心ですね。忙しすぎる世の中で、空白もまた、必要なのかと思っています。

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