グーグルだって客商売である(続き)
前回のエントリーを自分で読み返してみると、第3段落が結構重要な内容と思える割に圧縮して書いたのでちょっとわかりにくかったかもしれません。ということで、再度説明します。
サーチエンジンのエントリー(およびキャッシュ)の削除を事後的オプトアウトで対応すればよい根拠
ウェブで情報を公開しているということは、その作者は多くの人に情報を見てもらいたいことを意図していると考えられます。また、サーチエンジンに掲載されたくない場合には、robot.txtの設定により事前的オプトアウトをすることもできます。ということで、サーチエンジンへの掲載には基本的に作者の黙示の許諾があると言える(Google News等やや微妙なケースあり)ので、問題があった例外的なケースだけを事後的オプトアウトで対応すれば妥当と考えられます。なお、ここで、いわゆるグーグル八分問題が出てきますが、別論です。
YouTube等のCGMサイトにおいて事後的オプトアウトで対応すればよい根拠
この場合は不特定多数が情報をアップロードするため、サービス提供者側としては、事前に確認をすることが事実上不可能です(一部著作物のデッドコピーは、ある程度テクノロジー的に対応できますが、名誉毀損のようなケースはどうしようもありません)。したがって、基本的には事後的オプトアウトで対応するしかありません。これは、プロバイダ責任制限法で法的に担保されています。
ストリートビューについては、商業地の看板等を除き、黙示の許諾があるというのはちょっと無理があると考えます。特に、日常生活ではあり得ない高さから家の敷地内をのぞき込まれた画像を全世界に発信されることを想定している市民はいないと思われます。また、ストリートビューの画像を撮影しているのはグーグル自身なのでプロバイダ責任制限法とも関係ありません。
ということで、今までも事後的オプトアウトでよかったのだから、ストリートビューもそれでよいだろうというロジックは破綻していると考えます。
なお、仮に、何らかの法的争いの後に法的に問題ないという結論が出たとしても、依然としてお客様に不快感・不信感を与えているのであれば「客商売」としてまずいであろうというのは前回のエントリーの通りです。
では、自分はストリートビューに対してどう思っているのかというと、この種のサービスの有効性については否定しがたいと思います。GPS携帯などと組み合わせればめちゃくちゃ便利なサービスが実現できるでしょう。著作権問題を理由としてYouTubeをつぶすべきではないのと同様に、プライバシーの問題を理由としてストリートビューをつぶすべきではないと考えます。
結局、グーグルはもっと真面目にやれということだと思います。真面目にやるとは、プライバシー問題が生じないようにテクノロジー的・運用的に最善の努力を図る、グーグルカー運転者に(私道内に入らないなどの)教育をしっかりやる、事前のPRを行う、お客様相談電話窓口を設ける、日本国民に対して説得力のある説明ができる広報担当者を用意するなどです。「お客様相談電話窓口を設ける」などはグーグルの企業文化的にはあり得ないことかもしれませんが、奇しくも創業10周年を迎えたグーグルも、そろそろ「大人の会社」になるべきタイミングではないかと思います。