「用事」モデルの事例としてのグーグルChrome
ちょっと前のエントリーで、クリステンセンの「用事」(ジョブ)モデルについて説明しました。ポイントは顧客のニーズを把握するだけでは十分ではなく、「さまざまな状況における」顧客のニーズを把握すべきであるという点です。「顧客」に加えて「状況」という変数を扱うのがポイントです。この概念をグーグルのChromeを例にとって説明しましょう。
グーグルのChromeでは、ユーザーがよく使うサイトが自動的にトップページに表示されます。「業務上必要な情報を得る」という「用事」の達成にはこの機能は便利でしょう。しかし、ブラウザを使っていると業務外の「人にあまり知られたくない情報を得る」という「用事」が発生することもあります。この場合には、Chromeではシークレット・モードでの閲覧を行うことで履歴を残さないようにすることができます。これは、ブラウザ・ユーザーの2つの「用事」を把握してうまく対応できている例だと思います。
Firefoxなどの他のブラウザでは、ユーザーごとに履歴を残すか残さないかの設定ができますが、個別のページ閲覧ごとに設定することはできません。また、履歴を一括して削除することもできます。しかし、その場合には、本来は履歴を残しておきたい業務上のサイトについても履歴が消されてしまいます。ブラウザー・ユーザーの2つの「用事」を区別できていないということです。
私は、アドオンの品揃えやプライバシー上の懸念の点からChromeはあまり使う気がなく、今後もFireFoxを使っていく予定ですが、是非、シークレット・モードの機能は追加していただきたいものだと思います(IE8にはシークレット・モードがあるらしいですが、私はIEに戻る気はありません。)