グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

リブート第4回「教育におけるICT活用事例:『iPad通信』と『ミニICT講座』について~望月陽一郎先生のお話より~」

»

現役の先生に教育現場のICT活用について伺いました(2013/09/14初公開分をリブート)

リブートシリーズ・・・2013年から不定期で掲載してきた「教育・授業・ICTに関するインタビューシリーズ」を、今に合わせて「再構成」していく企画です。


中学校で教諭をされておられる望月陽一郎先生に教育とICTを学校現場でどのように実践されてきたのか、お話を伺っています。

【望月陽一郎先生・略歴】
大分市中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経て、現職。


前回は望月陽一郎先生が実践されてきた「ICT機器の活用・啓発の取組」をテーマにして、お話を伺いました。

【前回の概要】

  • 「ICT教育」と「授業におけるICT活用」の違いとは何か
  • 実際に学校に整備されているICT機器は、どのようなものなのか
  • 導入されたiPadに入っていたアプリをどう活用したか
  • (「導入されているアプリしか使ってはいけない」という通知があったため)
  • 「ICT機器の活用」と「啓発の取り組み」について

など。

今回は前回(リブート第3回)、望月先生のお話の中にも登場した「iPad通信」や「ミニICT講座」などについて取材しました。

「学校のICT環境」について

-今回まずお伺いしたいことは、先生が取り組まれたという「iPad通信」「ミニICT講座」についてです。よろしくお願いします。

DiTTサイト「先導先生」に概要が紹介されていますが、読者のみなさんに「iPad通信」と「ミニICT講座」についての概要を説明してもらってよろしいでしょうか?

※DiTT「先導先生」 http://ditt.jp/action/case/teacher.html

望月 先生:説明する前にまず、学校のICT環境の実態から話さないといけません。うちの市では、先生方1人1人に校務用PCが配布されています。その校務用PCはセキュリティ保護のため職員室の机に固定されていて、動かすことはできません。

-なるほど学校だけにセキュリティが厳しいのですね。職員室から動かすことができないということは、授業でPCを使いたいならばパソコンルームに行くしかないのでしょうか?面倒な感じですね。iPadを授業で使う試みがよく見られるのもそれが理由でしょうか?

望月 先生:コンピュータ室とは別に授業用PCが数台あります。今回の更新(2013年当時)では、教室で使うための授業用PCは追加されませんでした。コンピュータ室は以前から1教室あり40台のデスクトップPCが使えます。

-授業用PCが数台で、コンピュータ室が1つのみとなると、先生がたは相談しながらでないと授業がブッキングしそうです。うまく使うのは大変そうですね。

望月 先生:学級数が特別支援学級を含めて30学級近くもあると調整が大変です。

-PCの数が少なすぎる印象を受けました。どの学校も少ない台数でやりくりしているのでしょうか?

望月 先生:導入台数やコンピュータ室の数は、大きい学校も小さい学校も市内では同じだと思います。

-そうなのですか! 生徒数に応じて台数が割り当てられるのかと思っていました。

望月 先生:人数ではなく、学校に1室です。あと電子黒板が各校1台あります。(2017年現在も1室。電子黒板は、プロジェクターに装備されたものが一台追加。Epson EB-536WT http://www.epson.jp/products/bizprojector/eb536wt/

-全然たりないと思います。それだと生徒数が少ない学校の方が、余裕を持って使えるのではないかという印象を受けます。また電子黒板が1台ではたりないのではないですか?

望月 先生:電子黒板はテレビ一体型(2013年当時はこの一台のみ)で重く大きいため、同じ階・同じ校舎のフロアしか動かすことはできません。当然のことですが、電子黒板だけでは使えず、専用ソフトがインストールされたPCを別途用意しないといけません。(これは2017年導入された電子黒板機能付きプロジェクターも同じ)

-なるほど。電子黒板は物理的な制約によって「同じ階・同じ校舎のフロアしか動かすことはでき」ないのですね。しかも、PCを別途用意しないといけないという制約もあるとなると、利用するときに手間がかかってしまいそうですね。

望月 先生:昨年度までは、授業用PCしか使えなかったのですが、今年度(2013年度)、「iPad」が10台導入されたので、これを機会にICT活用をすすめるべきだと考えています。

※iPad https://ja.wikipedia.org/wiki/IPad

-iPadならば電子黒板のような物理的な制約はなさそうですし、TV/プロジェクターに画面を映すことで電子黒板なみに使えそうですね。学校の環境は思っていた以上に制約が多いこと、予想以上に知らないことが多いとわかりました。

望月 先生:このような環境では教室でICT機器を活用した授業をすることが難しいので、先生方もデジタルではなくアナログの教材を工夫せざるをえないわけです。「iPad」が導入されたので「さあ使いましょう」と言っても、なかなか難しいと思いますよ。

-それはそうですよね。それでは、どのようにしたら現場の先生方がiPadを「さあ、使おう」と思って、実際に活用されるようになると思いますか?

「授業におけるiPad活用」について

望月 先生:まず私が取り組んだのは、

  • 自分自身が「iPad」の活用に慣れること。
  • 「iPad」活用のメリットデメリットを明らかにしておくこと。

という2点でした。これまで市内には導入されていなかったものなので、実践例自体がないわけですから、自分が使った結果やわかったことなどを、「通信」というかたちで先生方にお知らせすることから始めました。

それが「授業におけるiPad活用」通信、通称「iPad通信」です。

職員室内で通信を1枚ずつ配りながら先生方と会話もできます。個人で「iPhone」「iPad」を持っている先生もいらっしゃいますしね。

-個人で「iPhone」や「iPad」をお持ちの先生は多いのですね。それならば「iPad通信」は先生方にとって有用なものになっているのではないですか?

望月 先生:アナログの通信でなく、いわゆる掲示板機能などの「校務支援システム」を使うべきだという人もいるでしょうが、私は実際に話してまわることがとても有効だと思っています。

-そうですね。実際に対面して話すことでしかわからないことって、たくさんあると思います。先生方との信頼構築はデジタル上のコミュニケーションだけでは難しいと感じています。信頼関係構築は非言語コミュニケーションの力も大いに影響します。望月先生が実践されてきたように、リアルな場で、対面で先生方とコミュニケーションを取ることは大切だと思います。

望月 先生:まず導入された1学期前半は、理科の授業で10台を使って「iPadのグループ活用」に取り組みました。後半からは、「iPad10台をまとめて使う」のではなく、10台のiPadを「10人の先生に使ってもらう」よう考えが変わりました。グループ活用をする前に、まず授業で「iPad」を活用することに「先生方に慣れてもらう」必要があるからです。

-いろいろな先生に使っていただくのは必要ですね。

望月 先生:10台をまとめて使うと「1クラス」でしか活用できませんが、1台ずつ先生方が使えば「10クラス」で同時に使うことができます。10倍の活用が可能になりますね。

「ミニICT講座」について

望月 先生:有効な手段であれば授業で活用したいというベテランの先生が多いのが現実です。ただそうはいっても現実はなかなか研修する時間がとれません。そこで、夏季休業中(子供たちは夏休みの間も先生方は毎日出勤しています。部活動の指導・研修会への出張・会議への参加など)の少しまとまった時間がとれるときをねらって「ミニICT講座」を実施しました。

-学校の先生方は夏休み(夏季休暇中)も忙しいのですね。びっくりしました。

望月 先生:部活動や出張などの隙間をぬって1回30分の講座を12回ほど持つことができました。ほぼ休みなしです。

-休みなしで講座を行われたとは大変でしたね。先生の意欲がすごいと思います。

望月 先生:12回といっても合計6時間ほどですよ。こうした取組で大切なのは、内容よりまず、

  • 回数と内容。

です。できるだけ多くの先生方に参加してもらうため、

  • 1回の時間が短い。
  • 1回だけでも内容が完結する。

ことを大きくアピールしました。

-参加しやすいのは大切ですよね。

望月 先生:そのうえで内容を、

  • 校務で使うExcelの活用
  • 情報モラル
  • 電子黒板

そして「iPadの使い方」としました。

-どれも役立ちそうですね。

望月 先生:最終的に12回でのべ50名以上の参加でした。複数回参加された先生がいるので実質は20人弱(2013年当時の学校は先生60名弱)です。先生方の1/3くらいですね。既に「iPad」を使っている先生もいるので、使えるようになった先生の実数は増えたと思います。100%に近づけることが目標です。

-20人近くの先生が参加されたならば十分多いような気がします。

望月 先生:2学期からは新たに「iPadを授業で使いたい」という先生が増えました。また、文化発表会で生徒に活用させたい(2013年当時)という申し込みもありました。

-授業で使いたい先生が増えたのは素晴らしいことですね。文化祭で「iPad」を使うアイデアもいいと思います。

望月 先生:おかげで「iPad10台をまとめて1クラスで活用する」ことができなくなってしまいましたが、それでよいと思います。「AppleTV」など提示のための周辺機器が1セットしか導入されていないので学校で追加購入してもらいました。さらに活用が進んでいくと思います。

-大変素晴らしい取組ですね。貴重な話をありがとうございました。

おわりに

学校のICT環境や先生方へのiPad活用講座の取り組みなど、現場での取り組みを伺う事ができました。お話してくださった望月先生、読んでくださった皆様、ありがとうございました。

次回は教材作成の際に役立ちそうな「著作権」の知識・注意点について取材したいと思います。

>>リブート第5回「教材を作る際、著作権についてどのようなことに注意しているか ~望月陽一郎先生のお話より~」(10月1日公開予定)に続く

Reboot Produced by Yoichiro Mochizuki

参考記事

先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の45の取組みが紹介されています。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する