グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

リブート第5回「教材を作る際、著作権についてどのようなことに注意しているか~望月陽一郎先生のお話より~」

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現役の先生に教育現場のICT活用について伺いました(2014/03/19初公開分をリブート)

リブートシリーズ・・・2013年から不定期で掲載してきた「教育・授業・ICTに関するインタビューシリーズ」を、今に合わせて「再構成」していく企画です。


中学校で教諭をされておられる望月陽一郎先生に教育とICTを学校現場でどのように実践されてきたのか、お話を伺っています。

【望月陽一郎先生・略歴】
大分市中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経て、現職。


前回は望月先生が実践されてきた「学校のICT環境や先生方へのiPad活用講座の取り組み」をテーマにして、お話を伺いました。

【前回の概要】

  • 学校のICT環境はどのような状態なのか
  • 電子黒板とプロジェクターの活用について
  • 「校務支援システム」ではなく、「iPad通信」というアナログなかたちで、「iPadを授業で使った結果」等を先生方にお知らせした意図とは?
  • 「iPadを授業で使いたい」と希望されている先生方に「ミニICT講座」を実施してみて、どうだったのか

今回は「授業で使う"教材"を作る際、先生方は著作権についてどのようなことに注意しているか」を取材しました。

学校現場と著作権法について

-今回は「教材を作る際、著作権についてどのようなことに注意しているか」について質問をさせてください。

望月先生 片岡さんは、この資料はご存じですか?

▲学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第35条ガイドライン 平成16年3月
http://jbpa.or.jp/pdf/guideline/act_article35_guideline.pdf

-こういう資料があることを初めて知りました。文化庁のウェブサイトで「著作物の複製」についての解説が配布されていたのですね。

望月先生 この資料は平成16年のものです。もう10年近く(2014年当時)各県の情報教育研修でも使われていますから、よく知られた資料だと思います。

-私が専門学校で教えていた時は、このような資料の存在を知りませんでした。教育関係者はみなさんご存知な資料なのでしょうね。

望月先生 情報教育に関係している人にとってはポピュラーな資料ですが、一般の先生方はまだ(2014年当時)知らない先生がいるかもしれません。

-私の場合、著作権違反にならないように、他の先生に相談しながら気をつけていました。「引用・転載はどこまでセーフなのか」判断に迷うことが多かったからです。

既に十年以上前の話のため記憶がおぼろげなのですが、学生時代の先生から以下の三点を注意してレポートを書くように習った気がしていました。

  1. 引用部分は「主たる文章」の「従」であること、
  2. 引用した文章の量は、主たる文章のおおよそ1/3以下になるように注意すること
  3. 必ず出典を書くこと

今、学生時代の先生のウェブサイトを確認したら、以下のように記載されていました。

引用について
 著作権法上認められた「引用」とは、研究、批評、報道などの正当な目的のために、その目的上正当な範囲内で本文等を使うことを指します。正当な範囲とは、
(1)その著作物のその範囲を引用する「必然性」がある
(2)質的にも量的にも、引用先が「主」、引用部分が「従」という関係にある
(3)本文と引用部分が明らかに区別できる
という条件を満たすこと、及び出所の明示が必要です。また、出所の明示においては、今後HPアドレスの変更・移転の可能性もあるため、出来るだけ掲載された出版物の方を直接確認してからそちらを、それが不可能な場合は当HPのTOPページのアドレス
<http://www.015.upp.so-net.ne.jp/naka0930/>
とHP名『山口仲美の言葉&古典文学の探検』及び管理人名を必ず明記してください。

出典:『山口仲美の言葉&古典文学の探検』(管理人・山口仲美)
http://www.015.upp.so-net.ne.jp/naka0930/

私の記憶していた内容は「おおよそ大丈夫だったかな? 」と思ったものの、「主たる文章のおおよそ1/3以下」ということは全く書かれていませんでした。今、先生の解説をちゃんと確認して良かったと思った次第でした。

あくまでも私見ですが、著作権法はややこしいと感じています。学校の先生方は教材作成の際に、著作権の問題をどのようにクリアされているのか知りたい、と思いました。

望月先生 著作権法の第35条に「学校における例外規定」が書かれています。学校での著作物の利用について、一般の方々より「許諾を得なくてよい範囲」が広くなっています。そこには、

  • 授業の過程における使用
  • 教育を担任する者と授業を受ける者

など、そのための条件も書かれています。

-わかりやすい解説をありがとうございます。

望月先生 先ほどのガイドラインは、著作権法第35条の解説資料です。

-授業の時は第35条で利用範囲を広くみてもらえるようですが、放課後の補習だと適用されないのでしょうか?資料だと、「以下の場合は、「授業」にはあたらない。 ×学校の教育計画に基づかない自主的な活動(例:サークル・同好会、研究会) 」と書かれていますが。

望月先生 になっている例を見るとよいかと。学校の教育課程に基づく活動ということですね。

・・・○ クラスでの授業、総合学習、特別教育活動である学校行事(運動会等)、ゼミ、実験・実習・実技(遠隔授業を含む 注・・・遠隔授業は同時に行うものをさし、前後で動画を見るなどをさすのではない。35条2項を参照)、出席や単位取得が必要なクラブ活動

○ 部活動、林間学校、生徒指導、進路指導など学校の教育計画に基づいて行われる課外指導

▲著作権法 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html

-なるほど、補習は教育課程に基づく活動になるのでしょうか?

望月先生 個別指導であればあてはまらない場合があるかもしれませんね。

-「集団に教えるならばセーフ」で、「個別指導だとグレーゾーン」ということでしょうか?

望月先生 放課後に個別に指導することが、教育課程に基づく授業にあたるかというところですね。

-なるほど。そうですね。「授業といえるか」と考えると、微妙なように思います。「個別に補習する時は第35条の適用外かもと考え著作権に注意することが必要」ということになりますね。最近(2014年当時)話題で出てくるオンライン教材の配信なども著作権の手続をしていないとグレーかもしれませんね。

望月先生 ガイドラインを見ると、「授業をあらかじめ録画しておき後日配信すること」も×となっています。その授業の中で(リアルタイム)が条件です。「著作物等をホームページ等に掲載」も×となっていますね。教材は授業の中で使うもの、ということでしょう。

▲学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第35条ガイドライン
http://jbpa.or.jp/pdf/guideline/act_article35_guideline.pdf

-言われてみれば、教材は確かに「授業の中で使うもの」ですね。そうすると、最近(2014年当時)話題になっている反転授業は、第35条の適用外になってしまうのではないでしょうか。

望月先生 ガイドラインを読んで考えると、著作物を利用する場合「許諾手続き」が必要かもしれません。

-先生方が反転授業を行う際、著作権に気をつけながらでは負担が大きくなるかもしれませんね。

望月先生 録画したものを配信すると「リアルタイムではない可能性がある」し「不特定多数(授業を受ける者ではない)になる可能性がある」でしょう。

でも考えればわかりますが、他者の著作物を無断で使用しなければよいことなのです。「許諾をもらえばよい」のです。そうすれば、公開してもよいし「授業の範囲」でなくてもよいのですから。

-なるほど!逆転の考え方ですね。確かに「許諾」をもらっていれば問題ありませんから。

望月先生 私も「デジタル地質教材」を作ったりしていますが、実際に自分で足を運び資料として自分で撮影したものを使っています。法律の遵守は当たり前ですから、

  • 必要なら許諾をとる。
  • できるだけオリジナルの素材を使って教材を作る。

という、ごく基本的な対応をしています。

-それはとても大事なことですよね。私も許諾を取る必要がある場合は出版者・著作権者に問い合わせしたり有料のものを買ったり、あるいは自分で作って、法律を守るように気をつけています。

望月先生 一緒ですね。

おわりに

教材作りに関連している「著作権法」第35条を中心に、わかりやすく解説していただきました。大変ありがとうございました。

著作物の許諾を取ったことがない方のために、次回は望月先生が「音楽や地図など、実際に著作権者の許諾をとった例」について、お話いただこうと思います。

>>リブート第6回「教材やコンテンツを制作する際、実際に許諾を取った例 ~望月陽一郎先生のお話より~」(10月15日公開予定)に続く

Reboot Produced by Yoichiro Mochizuki

[片岡による補足]

文化庁のウェブサイトには、

著作権法では,一定の「例外的」な場合に著作権等を制限して,著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています(第30条〜第47条の8)。

出典:文化庁 著作物が自由に使える場合
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

と記載されています。

以下のページにも関連情報が解説されています。ご活用いただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。

【関連記事】

参考記事

先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の45の取組みが紹介されています。

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