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【図解】コレ1枚でわかるサイバーフィジカルシステムとDX

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現実世界の様々な「ものごと」や「できごと」は、モノに組み込まれたセンサーやモバイル、ソーシャルメディアなどの現実世界とネットとの接点を介し、リアルタイムにデータに変換されクラウドに送られます。

インターネットに接続される機器(デバイス)の数は急速に増加しています。総務省の「令和4年度・情報通信白書」によれば、 2021年の292億台から、2023年には323億台、2023年には358億台、2024年には400億台程度とされ、今後も増加の一途を辿ることが予想されています。私たちの現実世界は、膨大なセンサーに囲まれ、「現実世界のデジタル・コピー=デジタル・ツイン」が、リアルタイムに生みだされ、アップデートが繰り返されています。

「デジタル・ツイン」は、膨大な量のデータ(ビッグデータ)ですが、集めるだけでは価値は生まれません。そのデータから誰が何に興味を持ち、誰と誰がつながっていているのか、製品の品質を高めるにはどうすればいいのか、顧客満足を高めるためには何をすべきかなどを見つけ出さなければなりません。そのために人工知能(Artificial Intelligence AI)技術のひとつである機械学習を使い、ビジネスを最適に動かすための予測や判断をおこないます。

そうやってサービスを動かして、機器を制御し、情報や指示を送れば、現実世界が変化し、データとして再びネットに送り出されます。

インターネットにつながるモノの数は日々増加し、Webやソーシャル・メディアもまたその種類やユーザー数を加速度的に増やしています。現実世界とネットの世界をつなげるデジタルな接点は増加の一途です。データ量はますます増えてゆきます。つまり、デジタル・ツインの解像度が、時間的にも空間的にも、大幅に高まりつつあります。そうなれば、さらに的確な予測や判断ができるようになります。この仕組みが、継続的かつ高速に機能することで、ビジネスは、常に最適な状態に維持されます。いわば、デジタル世界と現実世界が一体となって、リアルタイムに高速に改善活動を繰り返すようなものです。

このような現実世界をデータで捉え、現実世界とデジタルが一体となってビジネスを動かす仕組みを「サイバー・フィジカル・システム(Cyber-Physical SystemCPS)」と呼んでいます。

わたしたちの「フィジカル」な日常は、もはや「デジタル」と一体となって機能しています。これを改めて整理すると次のようになります。

  • フィジカルな現実世界の「ものごと」や「できごと」をIoTWeb、モバイルなどのデジタルとの接点を介してデジタル世界に移し、コンピュータで扱えるようにします。
  • 生みだされた膨大なデータ=ビッグ・データを解釈し、次にどのような商品が売れるのか、誰にこの商品をおすすめすれば高い確率で買ってくれるのか、業務効率を高めるにはどうすればいいか、事故を引き起こす予兆はないか、顧客満足を高めるためには何をすればいいか、などを見つけ出します。そのための技術が、機械学習です。
  • 機械学習で得られた答え=最適解あるいは未来予測を使って、迅速かつ的確な判断を下し、機器を制御し、現場に指示を出し、商品を推奨するなどで、フィジカルな現実世界は最適な状態を維持し、ビジネス・スピードを加速します。

このサイクル、すなわちCPSが私たちのビジネス基盤になろうとしています。

CPSは、フィジカルとデジタルの境目をなくし、両者を融合させ1つの仕組みとして、機能させます。私たちはフィジカルとデジタルを区別することなく、買い物をし、サービスの提供をうけることができます。必要な時に、必要な「もの」や「こと」を、都合のいい手段で手に入れられる自由を与えられた、と言い換えることもできます。

このようにCPSによって、ビジネスや日常は、最適な状態が維持されます。このCPSをビジネス・プロセスに組み入れることが、「DXを実装する」ことだといえるでしょう。

先に述べたように、不確実性が増大するVUCAに対処するには、変化に俊敏に対応すするための「圧倒的なスピード」を手に入れなくてはなりません。CPSは、その基盤であり、それをビジネス・プロセスに組み入れることで、具体的には、次のことができるようになります。

  • 高速に見える化:IoTやビジネス・プロセスのデジタル化によって高頻度・多接点でデータを収集する仕組みをビジネスの基盤に据えること。
  • 高速に判断:そこで得られたデータを分析・解釈して、顧客との関係やビジネスに関わる課題やテーマを見つけ出すこと。
  • 高速に行動:その課題やテーマについて、ユーザーとの接点であるUIUser Interface)や分かりやすく心地よい体験を実現するUXUser Experience)、収益の源泉であるプロダクトやサービス、ビジネスを駆動するビジネス・プロセスを高速・高頻度で改善し続けること。

さらには、この一連の取り組みを当たり前として行動する習慣を組織に根付かせなくてはなりません。ここで大切になるのが組織の「心理的安全性」です。「対人関係においてリスクのある発言や行動をしてもこのチームでは安全である」という、メンバー全員に共有された信念のことです。単なる仲良しクラブではありません。自分の確固たる主張や意見を持ち、それをお互いにぶつけ合うことができるプロフェッショナルとしての信頼があり、お互いに相手の多様性を認め、敬意を払い、建設的な意見を交わせる人間関係のことです。

組織の全てのメンバーが「心理的安全性」に支えられ、自律的に仕事に取り組み、多様な考えを許容できるからこそ、圧倒的なスピードが生まれるのです。

そんな組織で働く人たちは、自律的、自発的に改善して、より付加価値の高い仕事へと時間も意識もシフトするでしょう。また、徹底して議論を交わし、失敗を繰り返しながらも高速で試行錯誤を繰り返すことが許容される雰囲気の中であればこそ、「新規事業」がどんどんと生みだされます。さらには、ビジネスの最前線にいる人たちが、環境の変化を敏感に感じ取り、主体的にビジネス・モデルを転換していくことができるようにもなります。

DXとは、「高速に変化し続けることができるビジネス基盤」を実現することです。そのためには、デジタル技術を使うだけではなく、このような「心理的安全性」に支えられ、自律的に変革し続ける組織の文化や風土を育て、維持し続けなくてはなりません。

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