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変革と改善の本来の意味から考えるDXの本質

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ビジネス環境の変化やテクノロジーの進化に対応して、自らを変化させていくことは、企業が存続し事業を継続するための必須の要件です。ただ、「変化させる」には、変革と改善の2つがあることを理解しておく必要があります。これらは目指すゴールが異なり、そのための手段も異なります。しかし、現実には、この両者の解釈を曖昧なままに、「事業変革」であるとか、「DX(デジタル変革)」といった言葉が使われ、カタチばかりの取り組みに終始している企業も少なくありません。

特にDXについては、「transformation=変革」であるにもかかわらず、「improvement=改善」に留まり、DXの本来の意味とはかけ離れた成果しかあげられていない場合も多いように思います。

そこで、「変革」と「改善」の意味について、原点に立ち返り考えてみることで、DXの本質を改めて問い直してみようと思います。

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変革(transformation):物事を根本から変えて新しくすること

transformationの語源を探ると、"trans"は「向こう側」、"form"は「カタチをつくる」という意味にだどりつきます。つまり、これまでにない新しいカタチにすることを意味します。それが転じて「形態、性質、外観などが著しく変化すること」、あるいは「何かを完全に(通常は良い方向へと)変えること」という意味になります。

これをビジネスに当てはめれば、テクノロジーやビジネス環境の急速な変化に対応するため、業務の手順、制度、組織・体制といったビジネス・プロセスや商品やサービス、顧客との関係、収益のあげ方といったビジネス・モデルを新しく作り変えることを意味します。言葉を換えれば、「会社を作り変える」ことといえるでしょう。

そんな変革を進めるには、現状を例外なしに根本から見直し、新しいことを始める前に、「いまの辞めるべきこと」を明確にすることから始めなくてはなりません。このような取り組みは、現場の抵抗と膨大な投資、そして時間がかかることを覚悟しなければなりません。また、なれない市場への参入、法や制度による規制、顧客や取引先も変わる可能性もあります。

このような取り組みは現場レベルに任せれば、できることではなく、経営者自らが、明確なビジョンを描き、リーダーシップを発揮しなければできません。また、現場レベルも部門の理解の調整役では務まらず、経営者と同じビジョンを持って変革を推進するリーダーとしての役割を果たす必要があります。

改善(improvement):より好ましい・望ましいものへ改めること

語源を探ると、古フランス語の em-利益)、ラテン語の prode(有利な)を組み合わせた言葉のようです。これが転じて、「より良いものにする、品質や状態を向上させる」という意味で使われるようになりました。

これをビジネスに当てはめれば、既存のビジネス・プロセスやビジネス・モデルが、その目的や目標を達成する上で障害となることを取り除き、その取り組みの確実性と生産性を高めることになります。大きな投資をすることなく、いまのリソースを生かした活動が中心です。

製品やサービスの品質向上、顧客満足の向上、コスト削減、時間短縮、安全性の向上、リスク会費、コミュニケーションや意思決定の迅速化、働きやすい環境の整備などが、この取り組みの成果となります。

現場の人たちが、自分たちの仕事の効率や品質を高めようと、自律的、自発的に行うことが、成果をあげる上では効果的です。

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この解釈から、改めてDXDigital Transformation)つまり、「デジタル変革」を解釈すると次のようになるでしょう。

アナログ前提で作られたビジネス・プロセスやビジネス・モデルをデジタル前提で根本的に見直し、新しく作り変える取り組み

既存の業務をそのままにデジタル・ツールを使って「改善」することではありません。根本的に、本質的に、会社そのものを作り変える取り組みと考えるべきでしょう。

「改善」が「変革」に劣っているとか、やる意味がないと言いたいのではありません。改善も改革も共に事業を維持するためには必要なことです。ただし、そのゴールもやり方も覚悟の仕方も違うということです。

ただ「改善」は、過去のやり方をよりよいモノにすることであり、短期的な生き残りの策であることは否めません。ビジネス環境が大きく変わり、これに対処無ければ、長期持続的効果はありません。

この両者の違いを曖昧なままにしておけば、いずれも十分な成果をあげることができないことを理解しておくべきでしょう。

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ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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