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質問の本質(2):質問しない/できない理由と克服する方法

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講義や講演で質問を求めても、質問しない、できない人たちが多いのが現実です。これには、講師と受講者の双方に理由があります。

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講師の理由:

まずは、講師の理由としてあげられるのは、次の3つでしょう。

1つ目は、講師の話がつまらないからです。わかりきっていること、自分の自慢話、考察の浅い話しなど、受講者に「時間の無駄」と感じさせてしまう話しでは、とても質問しようなどとは思いません。講師は、「自分が何を伝えたいのか」ではなく、「受講者は何を知りたいのか」という視点を持ち、これを言葉にする努力を怠らないことです。

2つ目は、「質問させたくないオーラ」を感じてしまう場合です。自分の考えを絶対と信じている、押しつけがましい、「こんなことはご存知ですよね」というような受講者を下に見る態度などが、このオーラを醸し出します。講師は、自分の体験や経験を語ることではなく、自分の体験や経験を教訓や普遍的論理に昇華させ、相手に分かるように組み立て直すという努力をすることです。お金を頂き、講師を引き受ける以上、自分の満足ではなく、受講者の満足を追求するというプロ意識なくして、仕事にはなりません。

3つ目は、「質問しにくい展開」です。理路整然に流れるような説明に疑問や質問を呈するのは、なかなか難しいものです。講師としては、わかりやすく伝えたいという想いから「よかれ」と考えているわけですが、受講者との間に壁ができてしまいます。講師は心がけて、冗談を言う、息継ぎができる間を作り質問を考えてもらう時間にする、「これ、どうですかねぇ」と問いかけてみるなどの工夫が必要です。

いずれにしても、講師が自己満足に酔いしれて、受講者の反応を見ていないことが、質問できない/質問させない状況を生みだしているとも言えるでしょう。講師は、サービス業あるいは接客業であるという考えを持つことが大切です。このような意識を持って、受講者に満足を与えるためにはどうすればいいかを常に考え、自分の語る内容に磨きを掛けることが講師の矜持あろうかと思います。

「質問しないのは、受講者にその気がないからだ、意欲や積極性がないからだ」と決めつける前に、講師としての態度や工夫を常にふり返り見直すことを心がけなくてはなりません。質問は、そんな日々の心がけと工夫の所産であると考えておくべきです。

受講者の理由:

私は、受講者が質問しないのは、日本人の精神構造に大きく依存しているのではないかと、考えています。これは、学問的なテーマでもあり、「なぜ、質問をしないのか」というキーワードで検索すると、「学生はなぜ質問をしないのか」というような学術論文が、いくつか見つかるほどで、これは、かなり根深い話しです。

これら論文に目を通してみると、共通する「質問しない3つの理由」が浮かび上がります。

  • 他人の目、まわりの評価
  • 「ちゃんとした質問」をしなければならないというプレッシャー
  • 内容についての無関心

他人の目、まわりの評価

「恥ずかしいから質問しない」ということですが、何が恥ずかしいのかといえば、「自分ができない人間と評価されることが、恥ずかしい」ということです。「こんなつまらない質問をするなんてレベルの低いヤツだ」、「あいつは常識がないなぁ」、「そんなことも知らないなんて」といった他人からの評価を気にするわけです。

初めての人たちも多く、自分の正直な状態を晒すことができない状態、つまり、信頼感が醸成されていない、あるいは、心理的安全性が担保されていない状況の中で、自分をネガティブに評価されたくないという、強い抑制意識が働くのでしょう。親しい友人同士なら、たわいのない質問も気兼ねせずに出てくるのとは対照的な状況が、講義や講演の場にはあるのだと考えられます。

ただ、これは講義や講演だけではなく、職場の中で、新人達が質問できない理由も同じです。職場の中で、信頼関係や心理的安全性が担保されていないからです。何年かすれば、解消はされるかもしれませんが、それでも上司や先輩に気楽に質問できない状況は続くこともあります。これは、組織の成長やパフォーマンスを劣化させる要因でもあり、マネージメントとしては、いつも気に留めておかなくてはならいことです。

「ちゃんとした質問」をしなければならないというプレッシャー

「どんなことでも気楽に質問してください」と伝え、匿名での質問を受け付けているにもかかわらず、質問が出てこないのは、「他人の目、まわりの評価」とは異なる理由です。その根底にあるのは、「ちゃんとした質問をしなければ、いけない」というプレッシャーが、子どもの頃から染みついているからなのかも知れません。

「ちゃんとした」とはどういう状態なのかを説明することは難しいのですが、多くの人たちが、規範意識に制約を受け、「ちゃんとした」状態が分からないにもかかわらず、「ちゃんとしよう」と心がけ、「ちゃんと」の客観的な基準がないにもかかわらず、自分で「ちゃんと」の基準を妄想して作り上げて、「ちゃんとした質問ができないから辞めておこう」となるのでしょう。

「他人の目、まわりの評価」といい、「ちゃんとした質問」といい、私たちは、自分の妄想で自分に枠をはめ、それを逸脱しないようにと、行動を律しています。このような意識は、誰にでもあるのですが、特に若い人には強く表れるようです。

「ちゃんとした質問」ができないから、質問をして、ちゃんと質問できるようになろうという発想もあって良さそうですが、子どもの頃から染みついた精神的規範意識を超えることは容易ではありません。

そういう自分であることをまずは意識することです。この束縛から自分を解放する第一歩となります。そのことを分かった上で、あえて質問をすることで、自分を自由にして、自らの成長を促す機会とするのもひとつの考え方です。

内容についての無関心

講義や講演の内容についていけない、あるいはつまらないと感じているから質問しない。これは、もうどうしようもありません。ただ、これは先にも述べたように、必ずしも、受講者側の問題とは言えず、講師の問題も大きいでしょう。ただ、「興味や関心、好奇心」がないという自分の側の問題だとすると、これはかなりまずい状況です。

昨日のブログで述べたとおり、「興味や関心、好奇心」は、学びの起点です。質問は、学びの有効な手立てとなります。

変化の早い世の中に生きている私たちにとって、学びを怠ることは時代から取り残されることでしかありません。最先端だとか、最新だとかが、あっという間に陳腐化するいまの時代に、学びを怠ることは、ビジネスに関わり、そこで糧を得ているものにとっては、致命的だと言えるでしょう。

もちろん、このようなことに関心を持たず生きてゆくこともできます。しかし、そうでない人との間に、ビジネス上の信頼や収入に於いて、社会的格差が生じることは覚悟しておかなくてはなりません。

少々大袈裟なことかも知れませんが、「質問の本質」は、ここにあるように思います。「このままではまずい、何とかしなければ大変なことになる」との衝動こそが、人を質問に駆り立てる原動力なのではないかと思うのです。

講師は、自分にはない知識を持っている、自分にはない視点を示してくれる、それをなんとでも手に入れたいという図々しさこそが、質問の動機です。

質問しない/できない理由が講師の側にあるとしても、この図々しさによって、講師から知恵や知識を引き出すことはできるかも知れません。ただ、受講者の側に理由があれば、学びの機会を活かせていないわけで、これは意識して、努力して、質問できるようになることは、自分の成長にとって、大きな力になるでしょう。

「分からないから知りたい」だから質問をしているだけのこと、そんな思い入れはありませんというのもあると思います。その純粋な好奇心が質問の原点です。ただ、ビジネスに関わる講義や講演にあっては、これを越えることも必要ではないかと思うのです。なぜなら、お金を払い、忙しい時間を割いて講義や講演に参加する訳ですから、何かを手に入れて帰らなければもったいないとは思いませんか。質問を駆使して、コスパの良い時間を自分で作るという心がけも、ビジネスに関わる研修や講演に参加する上では、意識されてはいかがでしょうか。

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A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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