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質問の本質(1):質問するとは何をすることなのか

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「是非、質問して下さい。」

講義や講演の冒頭で、必ずお伝えしています。ただ、この言葉は、こちらの意図とは異なる3つの受け止め方をされることがあるようです。

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ひとつは、「質問という行為」を求められているとの受け止め方です。質問の内容や目的などはさほど重要なことではなく、質問する行為そのものを重視するものです。これは、講師に対する敬意や質問をすることが受講者の役割であるとの使命感などが、心の内で働いているのでしょう。

ふたつ目は、「質問することが評価される」との受け止め方です。新入社員研修などでは、よく見受けられます。質問することで自分が講義に前向きに参加していることを講師やまわりの受講者にアピールすることが目的です。

ただ、こちらもまた上記と同様に、質問の内容や目的などはさほど重要なことではないので、調べれば直ぐに分かるようなことや、自分の間違った知識や思いこみを信じ、それに疑問を持つことなく問いかけるような質問も多く、なかなか回答に窮します。「まずは調べて下さい」というのも素っ気なく、「それは、こういう理由で間違っています」と答えるのは、相手のプライドを傷つけることにもなりかねず、言葉を選ぶのに苦労します。

3つ目は、「自分の知識を誇示する機会」との受け止め方です。「受け止め方」と言うより、そういう機会として、質問の機会を利用しようと考えるわけです。「XXXは、このような課題があるのではないですか?」、「XXXは、このような使い方をするのが常識ではないでしょうか?」、「XXXと聞いていますが、これとは矛盾しませんか?」というものです。

このようなご質問に共通するのは、「自分の知っている知識が正しい」という前提があることです。講義の中に登場したキーワードに反射し、これに関わる自分の知っている知識を質問というカタチで伝えよう、あるいは、教えてあげようということなのかも知れません。

もちろんこのような質問の中には、「なるほど、それは知らなかった、考えたこともなかった」というものもあります。このような「核心を突く意見」あるいは「裏付けのある反論」は大変有り難く、講師としてもとてもよい学びの機会です。そういう意見に対してこちらも質問し、対話することは楽しいことでもあります。

ただ、このようなことは希で、大半は断片的であったり、十分な裏付けのない内容であったり、誰かが言っていた意見の受け売りだったりと、浅い内容が多く、自明のことであったりして、これもまた回答に苦慮します。

自明のことには、「その通りです」と答えるしかありません。あるいは、ご質問の回答として、背景にある本質的な事柄や他にも多様な見解があることを伝えることは、学びの奥深さを知る機会にはなるのですが、自分の思念や知識にこだわりがあり、素直に受け入れることができずに、不満というか、怒りというか、自分が傷つけられたように感じる人もいるようです。

講師として質問を求める理由は、「質問を学びの機会」として、使って欲しいということです。講師は、自分の知識や経験、そこから紡いだ教訓や法則、さらには、信念や情熱を持っています。そういう講師の知的資産にアクセスし、新たな知識や気付きを得ることで、自分の知識をアップデートすることが、質問の果たす役割です。

そもそも、「学ぶ」とは、次のような段階を経るものだと思います。まずは、前提として、興味や関心、好奇心が学びの原動力です。自分の知らなかったことを知る喜びや、うまくつながらず整理できていなかった知識の断片がうまくつながり、収まる快感が、学びたいとの欲求をかきたててくれます。その上で次のステップを踏むことです。

問いを作る:何を知りたいのか、何を解決したいのかを自分に問いかけることです。それを言葉にすることです。漠然とした思いではなく、論理の通る言葉にすることです。もちろん言葉にするのは容易なことではありません。だからこ祖、問いと言語化を繰り返すことが大切です。

仮説を立てる:自分の持てる知識の断片をつなぎ合わせて、自分の答えを用意することです。表現を変えれば、「自分の正解を持つ」ことです。中途半端ではなく、確信として、これが正解に違いないとの想いを持つことです。ただし、それを絶対と考えず、これを叩いてもらう、訂正してもらう、否定してもらうことを喜びと感が得ることです。謙虚さとは、このような態度のことを言うのでしょう。

仮説を検証する:本を読む、検索する、質問することで、自分の正解をいろいろな角度からたたきのめしてみることです。仮説を立証するだけではなく、新たに得た知識に疑問を持ち批判的に受け止めること、さらには、新たに得た知識を使って、自分の仮説を批判的に捉え直してみることも必要です。

知識を再構築する:知識というのは、断片的情報だけでは何の役にも立ちません。いまある自分の知識に組み入れて、既存知識との関係を作ることです。自分の知っている知識と新たに取り込んだ知識が、関係づけられることを「理解する」とか、「腹落ちする」と言います。

このステップを繰り返すことが、「学び」です。質問は、「仮説を検証する」ための有効な手段です。ただし、前提として、自分の「問い」と「仮説」を持っておかなければ、質問は、検証の手段としては、役に立ちません。

そもそも、「興味や関心、好奇心」が無ければ、学びへの意欲も湧かず、質問したいとは思わないでしょう。しかし、もしこれがあるのなら、質問の機会を学びの手段としてうまく活かすことをおすすめしたいと思います。

ただ、このような理屈を知っても実際に質問をするとなるとなかなかできることではありません。具体的にどのように質問をすればいいのでしょうか。そんなことを今週は考えみようかと思います。

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斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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