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チャートで解説:ChatGPTと生成AI

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ChatGPTと機械学習

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ChatGPTの基盤となる技術は、2010年頃から盛んに研究・開発が加速した機械学習であり、その流れをさらに加速した深層学習です。2017年にGoogleが発表した言語処理のアルゴリズムであるTransformerが直接の源流です。

ChatGPTが、これほどまでに普及し、注目されたのは、使いこなすことが難しい自然言語処理の技術を一般の人たちが簡便に使えるチャットのアプリケーションに仕立てて、広く解放したことです。これによって、専門的な知識やスキルがない多くの人たちが、使うきっかけを生みだしました。

その普及の勢いは、過去に前例がないほどで、OpenAI社が20221130日に公開した4日後の12月4日には、利用者が世界で100万人を超え、2か月後の20231月には1億人を突破しています。ちなみにこれまでの主要SNSを見ても、ユーザー数1億人に到達したのはTikTok9か月、インスタグラムは24か月かかっていることから、ChatGPTの普及スピードがいかに早いかがわかります。

この流れに後押しされるカタチで、MicrosoftGoogleなどの大手IT事業者が、一斉にAIサービスの充実に動き始めています。それは、チャット・アプリケーションに留まらず、文書作成や画像作成の支援、プログラミング支援、情報の収集やその分析など、広範にわたります。また、MicrosoftGoogleは、自社のオフィース・アプリケーションに組み入れ、普段の業務への浸透を図ろうとしています。

従来のAIと生成AIの違い

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ChatGPTをはじめとした大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)は、上記にも述べたとおり機械学習の技術を土台としています。機械学習とは、「データに含まれる規則や法則・特徴を見つけ出す計算」です。

従来のAIは、この「規則や法則・特徴」を使って、情報を整理してくれます。これによって、人間の意思決定の精度向上や業務処理の自動化・効率化を実現します。

一方、LLMのような技術は、指示・指定した内容で新たなコンテンツを創作してくれることから、生成AIと呼ばれています。これによって、人間が担っていたクリエイティブな作業を代替/補完できるようになります。

現在の生成AIは、言語や画像など、データの種類が限られていますが、将来的には、あらゆる種類のデータを対象にした機械学習が実現し、しかも、何を学ぶのかを自ら選択・学習する汎用AIAGI)が登場する可能性もあります。そうなると、頭脳労働の代替範囲が拡大する可能性が、さらに高まることになるでしょう。

基盤モデル、生成AI、大規模言語モデル

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学術的に明確な区分が定まっているわけではありませんが、おおよそこのチャートのような整理ができるのではないかと考えています。

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基本となる基盤モデル(Foundation Model)とは、多様なタスク(マルチタスク)に適応できる機械学習モデルで、以下の、2段階の工程を踏んで作られます。

  1. 大量データを使って事前学習
  2. 幅広いタスクに適応できるように追学習(適応/ファインチューニング)

「普通自動車の運転ができるようになれば、わずかな追加練習で、バスやトラックが運転できるようになる」と同じように、膨大なデータ量、計算リソース、モデル・サイズで事前に学習しておくことで、わずかな指示や命令、追学習で、様々なタスクに適応できるようにしたものが基盤モデルです。

基盤モデルを「生成」に応用したのが「生成AI」、生成AIを作成するのに大規模な言語データを使ったのが、「大規模言語モデル/LLM」、このLLMを使ってチャットのアプリケーションに仕立てたのが、OpenAIChatGPTMicrosoftBing ChatGoogleBardなどです。

また、MicrosoftLLMOffice365GitHubに組み入れ、「Copilot(副操縦士)」のブランドで、サービス提供しています。また、Googleは、Workspaceや自社のコード作成ツールに組み入れ、「Duet(二重唱[奏]曲)」というブランドでサービス展開しています。

生成AIは何を変えるのか

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高度専門知識の効率的取得

直近で大きな変化をもたらすのは、人間の専門家に代わってのアドバイスや業務の代行をしてくれることではないでしょうか。

LLMは、膨大なサイバー空間上の文書データを学習して作られています。ここには、プログラムの事例や法律文書、マニュアルやニュース記事などの膨大な文書データが含まれています。

このような文章を網羅して理解できている人はいません。自分の専門分野に限っても、「何でも知っている人」は、ほんの一握りです。LLMがなかった頃、分からないことは検索する、本を読むなど、手間を掛けなくてはなりませんでした。それでも分からなくて、専門家に相談すると、あっという間に解決できたという経験は誰にもあるはずです。

そういう専門家に代わって、なんでも知っているLLMが、相談にのってくれるようになり、仕事の生産性は、著しく向上します。これは、「中途半端な専門家」を駆逐する可能性を持っています。

時間の短縮と生産性の向上

プログラム・コードの生成や調査レポートの作成、定型文書作成や画像の修正など、基本的な作業パターンが決まっていて、繰り返しの多い「知的力仕事」も、任せることができるようになります。同様の成果をあげるのにかかる時間を大幅に削減し、安定した品質を維持できます。

私たちの仕事は、企画や設計、デザインなどの上流工程と、設計された図面や工程、意匠に従い、これを作り上げる中間工程、作ったものを維持するための運用や保守といった後工程に大別できます。

LLMやその後、登場するとされるマルチモーダル基盤モデル(Multi-modal Foundation Model)、さらには、その先に登場するとされる汎用AIAGI: Artificial General Intelligence)が、上流工程の生産性を向上させ、中間工程や後工程での人間の関与を大幅に減らすことになるでしょう。

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このような状況を考えると、上流工程でAIを使いこなせる人たちが、中間工程や後工程の人たちに仕事を頼まなくても、AIに仕事をさせることができるようになります。つまり、「AIを使いこなせる人が、AIを使いこなせない人の仕事を奪う」ことになるかも知れません。

新たな問いの創出と知識再構築の支援

生成AIは、個人が持っている知識の総量を遥かに凌ぐ知識を持っています。そのため、質問・対話を重ねることで、自分にはない、新しい/非常識な視点を提供してくれることもあります。このような能力をうまく使って「知識の壁打ち」を繰り返すことで、自分の知識を整理することや、新たな問いの導出に役立ちます。

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生成AIやその後のAGIの登場は、私たちの働き方、あるいは雇用のあり方、あるいは、ビジネスの常識を大きく変えてしまうかも知れません。また、将来のキャリアを考える上でも、大きな影響を与えることになるでしょう。長い目で見れば、社会システムに全般にわたり影響を与えることになるはずです。

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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー

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