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AI時代の営業には何が必要なのか

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「我が社もDXに取り組みたい。支援して欲しい。」

お客様からこんな話しを聞かされて、あなたはどう答えるだろう。そもそも、このようなことさえ相談されないとすれば、自分が営業として、十分には信頼されてないことを自覚すべきだ。

あなたは、お客様のご要望に応え、丁寧で実直に仕事をこなしている、何が間違っているのだと反論したいかも知れない。そのとおり、何も間違ってはいない。しかし、それだけの営業ではもはや役割を果たせない時代になろうとしている。

お客様の「手足」になるのではなく「頭脳」になれ

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デジタル・テクノロジーの積極的な活用が、事業戦略上不可避であるとの認識は、もはや広く行き渡っている。しかし、何をすればいいのか、どのように取り組めばいいのか、お客様もまた答えを持っていない。こんなお客様に「何をすればいいかを教えてくれれば、それを適正価格で納期や品質を守って確実に実現します」と訴えても、何をトンチンカンなことを言っているのだと追い返されるだけだ。

また、自分たちにできること、あるいは自社のサービスや製品の範疇でしか語れないとすれば、それが最適な解決策なのかは分からない。お客様が知りたいのは「自分たちは何をすべきか」であり、「貴方たちに何ができるか」ではない。

DXは、合理化や生産性向上のためのシステム開発でもなければ、AIを駆使した新しいデジタル・ビジネスを作ることでもない。デジタルを前提に、経営や事業のあり方を根本的に変えてしまうことだ。だから、お客様は、経営や事業に踏み込んで、何をどう変えてゆけばいいのかを一緒に考え、テクノロジーやビジネスのトレンドから助言を与えてくれることを期待している。主導権をお客様に委ね、自分たちはサポート役の立場を越えようとしなのであれば、解決策など描けない。営業は、こんなお客様の期待に応えられなくては、案件を獲得は難しくなる。

これからのビジネスのチャンスは、ここに関わってゆけるかどうかにかかっている。

営業は案件獲得のきっかけの作り方を変えなくてはならない。つまり、お客様の「手足」となって「お客様の求める要求」に応えることではなく、「お客様の求める要求」そのものを生みだすことにかかわってゆく必要がある。そのためには、「何をすればいいのかをお客様に提言する」ことからはじめてはどうだろう。

そのためには、お客様の業務や経営を深く考察し、最適な手法やサービスを目利きし、「あるべき姿」を想像できなくてはいけない。そして、「なるほど!」と感じてもらえる提言をし、お客様の心を掴むことだ。それをきっかけに、お客様と議論や対話を深めてゆく。こういう取り組みが案件獲得につながる。

また、この営業と話しをすると勉強になるし、いろいろと気付きを与えてくれる。知らなかったことを教えてくれる。よしやってみようという勇気をもらえる。そんなお客様の良き相談相手であること、つまり客様の「頭脳」になることへと営業を変えてゆく必要がある。それができなければ、提案の入口さえも見いだせなくなるだろう。

進化する営業の新しいカタチ

「お客様のよき相談相手となって、彼らの不安や迷いを課題として捉え直し、その解決策をデザインする」

「頭脳」としての営業を突き詰めて考えれば、こんな言葉になるだろう。

お客様のよき相談相手となる

「お客様の立場に立つ」

良き相談相手になるためには、まずこれが前提となる。

「自分がお客様の立場なら、どう考え、判断し、行動するかを想像すること」

「お客様の立場に立つ」とは、こんなことだ。そもそも、赤の他人の自分が、相手とまったく同じことができるはずはないし、同じ考えなどできない。経験や知識のバック・グラウンドが違う相手を完全に理解することはできないからだ。相手になりきることなどできるわけがない。ならば、お相手とは別人格の他人である前提に立ち、自分が相手のポジションを任されたとしたら「このように考える、判断する、行動する」を想像することだ。そして、その想像を相手に伝え共有し議論すればいい。

良き相談相手とは、決して相手の話しに相槌を打ち、それに従うことではない。相手が求めているのは、自分とは違う視点や異なる意見だ。それを相手にぶつけ、思考を揺さぶり、相手の気付きを引き出して、何が正解かを一緒になって見つけ出してゆく。そんな相棒として、お客様を助けることが、良き相談相手になるということだ。

不安や迷いを課題として捉え直す

「なんとかしなくてはいけない。このままではまずい。」

お客様は、こんな不安や迷いを抱えている。そして現状を変革したいと考えている。しかし、変革への意志や漠然とした問題意識はあっても、解決すべき課題やニーズが明確であるとは限らない。

経済が成長し、景気の良い時代であれば、既存の業務の改善や改良により生産性を高めコストを削減することで、事業の成果に貢献することもできた。そんな時代であれば、お客様は既存の業務の専門家なので、どこに課題があるのか、それをどうしたいのかといったニーズを明確にすることもできただろう。しかし、成長の勢いがなくなり、経済や社会の不確実性が高まっている時代には、既存の業務のやり方に頼ることがむしろリスクとなる。これを変革し、新たなビジネス・プロセスやビジネス・モデルを実現したいと考えている。しかし、どうすればいいのか、何が正解なのか分からない。また、それ以前に、どのような方向に変革を進めてゆけばいいかのビジョンが描けていないことも多い。

そんな相手に、「課題は何か」や「ニーズを教えて欲しい」と求めても答えようがない。また、このような状況で「他社事例」は、なんの役にもたたない。自分たちはこうしたい、こうなりたいが明らかになっていないのだから、そこに他社の課題解決の事例を示しても、それが自分たちにとって参考になるかどうかさえ分からないからだ。

そんなお客様を、お客様以上に深く考察し、お客様の課題を自分なりの仮説として整理して提示することや、テクノロジーやビジネスのトレンド、他社や業界の動向を織り込んで、お客様に代わって課題を整理することもできなくてはいけない。

お客様がこれまでやって来たことを否定し、タブーに踏み込まなければならないこともあるだろう。それでも、いまの「正しい」を、自信を持って語れなくてはいけない。それが、正解かどうかは分からないが、考え抜かれた整理や解釈は、議論のたたき台となり、考えるきっかけを与えてくれる。それを提言として、お客様に示す自信と信念を持てなくてはならない。

これまでお客様にはなかった新たな気付きを引き出し、なるほどと思わせて、お客様の心の中をザワザワさせなくてはいけない。それに対する意見や反論を重ね、議論を積み上げることで、お客様とともに「あるべき姿」は何かが見えてくる。

続いて「あるべき姿」を実現するための具体的な課題は何かを洗い出し、その解決策を整理する。さらに、自分たちが全力でこの取り組みを支援する決意を示し、お客様の背中を押してあげることも忘れてはいけない。

「相手の求めに応じるのではなく、相手からの求めを引き出すこと」

結果として、案件が生まれる。

ビジネスのあらゆる分野でIT抜きに語れないいま、「変革」への取り組みは、結果として、ITの新たな需要を創り出す。つまり、変革のプロセスに関わることがこれからの「営業活動」ということになる。

そんな営業活動のゴールは、お客様のビジネスを成功させることにある。そのための良き相談相手になることだ。そして、この人なら相談できる、任せられると思ってもらえなくてはいけない。そのためには、幅広い知識と技術への理解、さらには、お客様のビジネスを成功させることへの熱いパッションも必要になる。

人間力がAI時代の営業の土台

その土台となるのが人間力だ。人格あるいは人徳と言い換えてもいいかもしれない。これは営業以前の話しで、ビジネス・パーソンとして、お客様から信頼される存在になることだ。

営業の提言に、自分たちの会社の命運をかけようというのに、その相手が人として信頼できなければ、相談しようとは思わない。だからお客様は、誠実に、真摯に自分たちの未来に向きあってくれるかどうかを見極めようとする。そんな人間力が、これからの営業にはますます大切になってゆく。

人間は問いを発しAIが答えを与えてくれる

AIの時代だからこそ、営業には人間にしかできない役割が求められている。こうしたい、この課題を解決したいにAIは直ぐに答えを教えてくれる。そのために必要な条件を入力すれば、必要な機能や構成をクラウド上で直ちに実現してくれる。でも、そもそも何をしたいのか、何をすべきなのか、自分たちはどこに向かうべきなのかといった「あるべき姿」を、AIは教えてはくれない。人間は問いを発しAIが答えを与えてくれる。その役割分担が、さらにはっきりしたものになってゆくだろう。

これからの営業は、この「あるべき姿」をお客様に提言し、その実現への筋道を示し、そこへと導く仕事へと進化させてゆく必要がある。テクノロジーの進化は、営業にそんな人間としての役割をこれまでにも増して求めることになる。

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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

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