オルタナティブ・ブログ > アー・ユー・エクスペリエンスト? >

人生と仕事に必要な様々なことについて考えるブログ

iAd、アプリ、QRコード、インタラクティブビデオと、多彩なアウディの広告戦略を分析

»


日本にもファンが多い自動車メーカーのアウディ。そのアウディの最近の広告が面白い。広告の内容もさることながら、アプローチの多彩さが目を引く。他の自動車メーカーを探してみても、これだけ多彩な広告戦略を展開している企業は他に見当たらない。そして、iAd、アプリ、QRコード、インタラクティブビデオと、どれを一つとってもユニークなアイディアが散りばめられているものばかりである。今回は、アウディのユニークかつ印象的な広告を4つ紹介したい。

【1】 iAd:ロックを解除して、仮想サーキットを走らせる

これは、アウディがごく最近ブラジルで展開したiAdだ。iPadの画面に、薄いサーキットが浮かび上がり、下の方にあるロック解除用のスライドボタンを左から右に動かすことでロックが解除される。そして、サーキットコースをスライドボタンを使って指でなぞりながら一周すると、「Audi Magazine アプリ」のダウンロード画面が表示されるという仕掛けだ。非常にユニークなiAdなのだが、残念ながら日本では展開されていない。よって、実際の動きは下のビデオで確認してみてほしい。

■ Audi iAd: Slide to Unlock

Audi Magazine Slide Track (Eng) from AlmapBBDO Internet on Vimeo.

このiAd、ビデオを見てもらえればわかると思うが、広告の範疇を超えた面白さがある。ビデオを見ただけで実際に体験してみたいという気持ちにさせる、そんな大人の遊び心に訴求してくる素晴らしい完成度の広告だ。このスライド式のロックボタンを使ったiAdは、今後確実に増えてくることが予想される。iPadの画面サイズと機能を十分に活かした、iPadならではの広告だと言っていいだろう。実際に、アムネスティ・インターナショナルからも同じスライド式ロックボタンを使ったiAdが公開されている。

■ Amnesty - Slide to Unlock - iPad Ad - Prison Bars

こちらは、ロックボタンをスライドさせて牢獄を開けるという、少しショッキングな内容になっている。


【2】 iPadアプリ:ビデオも視聴できる完成度の高い電子ブック

上で紹介したiAdがダウンロードを促しているアプリが、「Audi Magazine」という電子ブックだ。そして、この電子ブックの完成度がまた凄い。日本語はされていないが、写真を始めとしたデザインを見ているだけでも十分面白い。、あた、ところどこに埋め込まれているビデオも、アウディのファンなら絶対に見ておきたい内容のものばかりだ。Audi Magazineのアプリはいくつもあるが、2011年6月14日にリリースされた、アイコンが「Audi magazine Brasil」となっているものがお薦めだ。

下のアプリをダウンロードする。料金は無料。

001

電子ブックは現在3回発行されているので、全てダウンロードする。こちらも料金は無料。

002


最新の電子ブックは4つのカテゴリで構成されている。

Img_0166


アウディの写真の赤い+マークにタッチすると、解説のテキストが表示される。

Img_0167

【3】 QRコード広告:人文字ならぬ巨大な人QRコード

この巨大QRコード広告は、最近の事例ではないが、アウディの広告戦略を語る上で欠かすことができない広告の一つなので紹介しておきたい。アウディの100周年を記念して、幕張メッセで行われた、世界最大のQRコード制作にチャレンジし、成功した時の様子を収めたビデオである。ビデオからもちゃんとQRコードが読み取れることから、当時かなり話題になった広告だ。

※現在でもちゃんと読み取ることができる。

■ Audi Japan & Audi Japan Sales 世界最大のQRコードを制作

この巨大QRコード広告、広告という観点から見ても完成度が高いのはもちろんなのだが、YouTubeに公開された上のビデオの、ソーシャルビデオという観点から見た場合の完成度も負けずに高い。早送りやフラッシュモブなどのテクニックが使われていて、非常に面白いソーシャルビデオに出来上がっている。日本ではすでにピークを越えたと思われるQRコード広告だが、米国ではまだまだ人気のようで、面白いQRコード広告が数多く展開されている。

【4】 インタラクティブビデオ:キーボード操作でドライビングを体験

アウディが10月に公開したインタラクティブビデオは、PCのキーボード操作でドライビングを体験することができるという、非常にユニークなものだ。1~9の数字を選択することで、左右にハンドルを切ったり、加速したり、バーチャルなドライビングを体験することができる。

■ Closed Course: An Interactive A6 Driving Video

ウェブサイトにリンクしたり、シーンが変わったりというインタラクティブビデオは珍しくないが、ここまでゲームに近いインタラクティブビデオは珍しい。一番先に紹介したiPad向けのiAdもそうだが、アウディの場合、自動車メーカーらしく車と走りにこだわった広告が多いような気がする。また、コンセプトも女性よりも男性をターゲットとしていることがよくわかる。


【5】 今回のまとめ

11月11日の記事で紹介した紙媒体とスマートフォンを活用したインタラクティブ広告といい、今回紹介したアウディの広告といい、最近の広告は、広告を受け取る側である消費者を強く意識したものが多い。また、インタラクティブな内容の広告が多いため、消費者はその広告を受け取るかどうかを自分の意志で判断することができる。その代わり、広告の送り手である企業は、受け手の消費者に対して今まで経験したことがないユーザエクスペリエンスを与えようと必死になって考えている。

そんな中にあって、今後の広告にとって重要なポイントが3つある。それは、モバイル、アプリ、ビデオだ。この3つが主役となり、それらが既存のメディアと融合して行くことで、今後もユニークな広告が数多く生まれてくるはずである。中でも、モバイルとビデオは相性が良いこともあって、企業の広告戦略にとって欠かすことができない存在になりつつある。

映画やドラマなどのコンテンツはテレビの大型スクリーンで見て、広告はモバイルで見る。そんなライフスタイルが一般的になるのだろうか。

Comment(0)