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商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

海外旅行・出張危険回避講座  (一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) その4 出入国のマナーと知恵

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海外旅行・出張危険回避講座
(一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) 
その4 出入国のマナーと知恵

 まだ東欧がガチガチの共産圏だったころ、私はオーストリアから、ハンガリーまで列車で単独旅行をした。


 列車での共産圏の国境を超えるのは、不安だった。すでに辺りは暗くなって、ハンガリーの国境に到着し、ハンガリー側の係官が乗り込んできた。

 窓ガラスを通じて、見える景色に緊張した。銃を手に持った兵隊が、列車の両側に十メートルごとに、立っていて見張っている中で、別の何人かが、列車の車輪の間を懐中電灯で調べている。密入国者がいないかと探っているのだ。
 こんな緊張感のある国境を越えたのは、これが初めてで、最後だった。


 

 列車の私が座っていたコンパートメントは、6人掛けだったが、私以外に、ハンガリー人夫婦と、オーストリア人夫婦と、私と同じ年齢のフランス人だった。

 

 コンパートメントの扉が開けられて、カーキ色の軍服のコートを着た係官が二人、後ろに銃を背中の兵隊が一人立っている。コンパートメントの入口に立って、私たち全員の顔を懐中電灯で照らした。
「パスポートを出してください」
 私たち全員が入国カードとパスポートを渡して、係官がパスポートを覗きこんでは、乗客と顔を照合しながら、紙に書き込んでいた。もう一人の係官は、座席の下を懐中電灯で調べている。 

 私のパスポートも返ってきた。係官は、私と同年代のフランス人に、
「あなたのバッグはどれですか」と尋ねて、フランス人が棚のバッグを指さすと、私たちも全員、自分のバッグを示した。
「じゃ、あなたのバッグを持って、出てください」と、フランス人に指示をした。「検査です」

 フランス人は、気分悪そうに、荷物を持って、外に出ていった。寒い季節だった。そこで、照明されたテーブルの上で、彼のバッグが開かれて、2名の係官が徹底的に調べているのが見えた。

 結局、何もなかったのだろう、彼はバッグを持って返ってきて、席に座りなおした。
「なんで私だけがチェックされるんだ」と、プリプリして怒っていた。列車が出た後も、まだ怒っていた。

 オーストリア人夫婦の男性が、
「どうして、共産圏に入るのに、あなたは汚れて、破れたジーンズのズボンをはいているんだ」

「......」
「この国に入るには、ほら、この日本人のように背広とネクタイをしているのが一番、良いんだ」と言い切った。
「今回は休暇だから、背広を持って来ていない」とフランス人。
 

「だから、あなたが代表して検査を受けてくれたんだよ」と、ハンガリー人の男性も言った。「私たちのように夫婦なら、別だよ。一人で旅行しているなら、服装はきちんとしないと、検査されるさ。税関はね、顔では判断できないんだ。だから服装だけしか調べようがない。もちろん、事件が起こったり、何か緊張していると、ここで、全員のバッグを持って、寒くても外で並んで検査を受けて、その間に、警備隊が車両を隅から隅まで調べるんだ。今回は、あなたが私たちの代表だったんだ。気にしない、気にしない。あなたが行かなかったら、私だったかもしれないよ。ありがとう」

 フランス人がニコニコしたので、みんなで笑い出した。列車がゆっくりと動き始めた。
 
私は、海外旅行で、入出国には背広を着ることにしている。
ずっと何十年間に、何百回も五十数カ国の入出国をしてきたが、子どもたちを連れた家族一緒の時以外の、たとえ夫婦であっても、必ず背広を着て、ネクタイをして、出国、入国することにしている。

 

日本に帰国するときでも、背広にネクタイをしている。アフリカや中近東では、どんな服装をしていても、調べられることがあるが、今、出かけている国々では、ほとんどバッグを開けさせられることはない。もちろん、開けても何も無いが手間が掛かるだけだ。
女性も、私は詳しくは分からないが、やはりオーソドックスな服装をしていることが望ましい。

あと二つだけ大切なことがある。

 

飛行機から降りると、できるだけ早くパスポートコントロールに向かった方が良い。預入荷物が出てくる時に、間に合うことが安全だからだ。間違ってか、故意か、自分の荷物を持っていかれると、大問題になるからだ。

もう一つは、預入荷物を受け取って、キャリーを押して税関に向かう時、何もなければ、免税のランプが点いた税関を通るが、その時には、パスポートを右手にしておいて、係官にパスポートと、所持品申告書を一緒に、何も言われない前に、さっと差し出して、渡すようにすることだ。


相手から見ると、パスポートを提示しないで、無税で出ようとする人を、
「はい、ちょっと荷物を検査します。パスポートを見せてください」と、指示されることになる。私は積極的にパスポートを提示することにしている。
 
ポイント
(1)男性なら、一人で海外に出かけるならば、背広を着ていく。日本に戻る時もやはり背広とネクタイだ。
(2)夫婦で、その国が観光国ならカジュアルでも構わない。子どもがいれば、服装はほとんど自由だ。
(3)飛行機は、早く乗って、早く降りるのが良い。そして、できるだけ早くパスポートコントロールを通って、預入荷物を受け取るのが良い。
(4)荷物を押して、税関を通る時には、パスポートと所持品申告書を、手にして、税関の係官に積極的に渡すのがよいだろう。

募集

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アイデアマラソンは、1984年に私がまだ商社マンだったころに、開始したものです。

ビジネスの国際競争に勝つために知恵をノートに書き留める方法でした。その後、28年間、ほとんど毎日、ノートに思い付きを書き留めてきました。その最新ノウハウと、電子アイデアマラソンまでを、書いたのが、「仕事ができる人のノート術」(東洋経済新報社)です。

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