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敵は社内にあり!第7回: 強い変革チームを立ち上げる~対処療法ではなく、根治治療で抵抗と戦う~

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抵抗勢力との向き合い方シリーズ最終回。最後は「強い変革チームを立ち上げる」コツについて解説したい。

1.「抵抗勢力との向き合い方」 ~予告編~

2.抵抗とは何か? ~抵抗は悪ではない。むしろ歓迎せよ~

3.隠れた抵抗を見逃すな ~隠れた抵抗こそすべてのカギ~

4.表に出た抵抗に対処する ~2つのズレを解消せよ~

5.頑固な抵抗に対処する ~7つの常套手段を総動員~

6.誰を巻き込みむべきか ~チーム編成の極意~

7.強い変革チームを立ち上げる ~対処療法ではなく、根治治療で抵抗と戦う~

前回は、抵抗に強いチームの"集め方"を解説した。しかし、チームメンバーを自由に選べないことは多い。よくあるのは、プロジェクトのメンバーも期間も、概ね上層部が決めてしまい。その状態で、プロジェクトリーダーやメンバーに話が降りてくるケースだ。

こうなるとメンバーを選ぶ事などできない。決められたメンバーをいかに1つにし、強いチームを作っていくかが重要になる。チーム作りに失敗すると、チームの中に抵抗勢力が現れ空中分解する可能性すらある。本音でコミュニケーションを取り、使命感に燃えるチームが変革には不可欠なのだ。

チーム作りの手法を2つ紹介しよう。

①ノーミングセッション

私達がコンサルティングチームを組む時や、お客さんメンバーと1つのチームを作る時に必ず行うのが「ノーミングセッション」だ。

一般に、新しく組織されたチームは単なるヒトの集まりに過ぎない。最初はお互いに手探り状態が続き、組織として機能するようになるには時間が掛かるものだ。チームが作られていく過程を示したものに「タックマン・モデル」というものがある。

ヒトが集まっただけの段階をフォーミング・ステージ。
お互いの理解が進んで考え方の違いや意見の衝突が表出する段階をストーミング・ステージと呼んでいる。
さらに、お互いの価値観が統一されたり役割分担がしっくりとしてくる段階をノーミング・ステージと呼ぶ。
最後の段階はパフォーミング・ステージで、チームメンバーがお互いが補完しあって1+1が3にも4にもなっている状態を指す。

【タックマンモデル 4つのステージ】

1.jpg

このモデルのポイントは、"どんなチームも必ずこのステージを経る"ということである。つまり、少しでも早くフォーミング、ストーミングの段階を抜けることが成果につながるのである。だから、素早くノーミングステージにたどり着くためのセッションを行う。それが「ノーミングセッション」である。

ノーミングセッションではまず、

  • なぜこのプロジェクトをやる必要があるのか
  • 何を達成する為のプロジェクトなのか
  • どう進めるのか
  • なぜこのメンバーが選ばれているのか

などを共有する。ここまでは実施している方も多いだろう。でもあまりに当たり障りのない内容でストーミングステージを抜けるには全然足りない。更に、ケンブリッジでは

  • 自分の強み/弱み
  • 好きなこと/嫌いなこと
  • パフォーマンスが上がること/やる気になれないこと
  • 懸念(プロジェクトに対する懸念や不安)
  • 抱負(どんなプロジェクトにしたいか)
  • チームメンバーに期待すること
  • モヤモヤしていること

などをぶっちゃけて話し合う。これがいい。

ここまで踏み込んで話すからこそ、自分の強みを最大に活かすために、または弱みを補完してもらうために、チームが協力しやすい状態が作れるのだ。これは結構盛り上がる。

「実は私、気が短くて、結論が見えない報告は嫌いなんです」
「なるほど、怒られないように結論から話すようにしますね!」
「まずいなー。僕話が冗長ってよく言われるんです。遠慮無く指摘してくださいね。」

という感じだ。これでお互いの心理的な壁もだいぶ壊れる。

また、プロジェクトに対する懸念や不安がこの時点で明らかになるのもいい。
「そもそも取り組みの目的がよくわからない」
「進め方が良くないと思っている」
「xxさんがこのチームに入ってないのはマズイと思う」

など。このタイミングで本音で話しておけると、その後が全然違う。スムーズなコミュニケーションが取れるようになるし、なにより「言いたいことは言って良いんだ」という感覚がセットされる。

②ゴール・コンセプトを考える集中討議

チームを1つにするには「集中討議」というやり方もお薦めだ。

集中討議とは、要するに合宿のこと。泊まるのが理想だが、一日缶詰で討議するのでもいい。本音で議論し、このプロジェクトで本当に目指すべきゴールは何か?どんなコンセプトを大事にするのか?を徹底的に話し合う。議論自体は2日程度の短い期間だが、これがあるのとないのでは天と地ほどの開きが出る。

私達が集中討議をリードする時は、大きく2つのパターンに分類される。

課題ぶちまけ型 集中討議

プロジェクトとしてやりたいことが全然定まって無いケースや、メンバー間の立ち位置がバラバラで課題認識が大きくズレているケースなどは、まず課題をぶちまけることが多い。1つ事例を紹介しよう。

* * *

ある精密機器メーカーで行った全社改革のPJでは、各部門から均等にメンバーを出してもらってプロジェクトを進めた。プロジェクトメンバーは20人近かった。しかもこのメーカーは数社合併をしていて、部署ごとにお互いの業務や問題をほとんど知らない状況だった。

同じ部署から出てきた20人だってバラバラな事を言い出すのに、全然違う部署からでてきた20人。しかも自分のやってきたことに自負のある偉い方たちばかり・・・。

全社プロジェクトに関わったことのある方はイメージ出来ると思うが、この状態でチームを1つにして、方向性を揃えるのは至難の技である。

この時に2日間掛けて集中討議を実施した。20人のメンバーを2つのグループに分けて、半日掛けて課題のブレインストーミングをしたのだ。

付箋に課題を書き出しては、発表して壁に貼っていく、

「ウチの部署でも、まったく同じ課題があるよ」

「そんなことに困っていたのか?」

「だいぶ酷い状況になっているんだな・・・」

「それは、少し見方が偏っていると思うなぁ、ウチの部署からみるとむしろ逆で・・・」

というやりとりが、自然と出てくる。お互い事情を知らないし、どんな事を考えているのか知らないのだから当然だ。この作業が、お互いを理解し、立場を理解し、困っていることを理解することに繋がる。

議論されていることが、事実なのかはよくわからない。裏付けデータがあるわけでないのだが、むしろそれでいい。メンバーが今、この瞬間に感じている課題がぶちまけられる事に価値がある。

DSC_0411.JPG

この時はそうやって、出た課題を2チーム間で共有し、壁一面にマッピングした。

それが図xxだ。まさに壁一面の課題群となった。さらに、各自が「解決すべき重要な課題だ!」と思うものにシールを貼ってもらい、なぜその課題を選んだのか、話してもらった。

ここまでやると、見解の違いもみえてくる。当然、1つの統一見解にたどり着くわけではない。それでも、考えている事が揃ってくるのだ。実際3つほどの大きな課題がピックアップされ、その後のプロジェクトの柱となっていった。この時の集中討議後の参加者のコメントを幾つか紹介しよう。

「それぞれの部署はミッションが全く違うが、お互いに悩んでいること、困っていることがよく見えた」

「これまでコミュニケーションは多くなかったが、思った以上に同じ課題で困っている事がわかった」

「合宿を2日間やると聞いた時は「無理だ」と思ったが、今は、本当にやってよかったと思う。」

20人のバラバラだったチームは、こうして見事にまとまっていったのだ。



そもそも論討型 集中討議

一方、大体やりたいことや検討のテーマが見えてきている場合、そのテーマに沿ったそもそも論を戦わせるがおすすめだ。

「グローバル対応とは何ができればヨシとするのか?」

「真の顧客をいったいだれと考えるか?」

「事業の柔軟性とは何のことか?」

これらは皆、色々な変革を始めた時に議論した「そもそも論」だ。このレベルの抽象的な話は、プロジェクトが進展するとなかなか議論している余裕はない。どれだけ議論しても、具体的な解決策にたどり着けないからだ。

でも、何も決まっていないプロジェクトの初期段階では、ドロドロとこういう話をしていると、お互いが大事にしている価値観が理解できたり、目指すべき方向や制約が整理できてくる。

これが変革のゴールやコンセプトの芽になる。

「そもそも論」に戻るというのは一見遠回りに見えるが、いつかは通らなければならない道なのだ。

ゴールと主要成功要因を設定する

どちらのパターンしても、集中討議の最後にはゴールについて話し合う。

近年、ゴールが全くないプロジェクトは少なくなったが、「とりあえず作ったけど、作ったっきり全然使ってません!」という酷い扱いを受けているプロジェクトゴールはまだまだ多い。

ゴールを作るのはチームの価値基準を一致させるためだ。額に入れて飾っておくためじゃない。悩んだ時の拠り所とするためにゴールはある。

ところが、ゴールだけだとどうも抽象度が高い表現になりがちなのだ。

「201x年までに新基幹システムをリリースする」

「事務業務生産性を30%向上させる」

といったゴールはわかりやすく明確なゴールなのだが、価値判断の拠り所とするにはちょっとつらい。

これを補完するために、ケンブリッジでは、ゴールとセットで「主要成功要因」を設定している。

主要成功要因とは、ゴールを達成する上で絶対に外せない要素のことである。言い換えると、主要成功要因が実現できなければ、ゴールを達成したと言えないものだ。3~5つ程度に絞って設定するのがいい。

先ほどの精密機器メーカーの事例に戻ろう。

この時は、集中討議を通して、「いくら基幹システムが出来ても、データがぶつ切れのままだったら何の意味もない」、「顧客ニーズに答えられなくなってしまっては元も子もない、ニーズに柔軟に答えるのは当社の大事な差別化要素なんだ」といった議論を重ね、大事にすべきことを主要成功要因に落としていった。

そして作られたのがこんなゴールと主要成功要因だ。

ゴール:「201x年までに新基幹システムをリリースする」

主要成功要因:

・上流から下流までデータが一気通貫で流れること

・2重入力転記作業が撤廃されていること

・顧客ニーズに対応できる自由度があること

大事にしたいことが、ゴールより一段具体的な状態で主要成功要因に書かれている。これを作るのは価値観を合わせる作業に等しい。時間もかかるし、難しい作業であるが、一体感のあるチームを作るためには絶対に必要なことである。手を抜かずに、しっかり議論しよう。



まとめ

チームの立ち上げ期には、腹を割って話す時間が必要だ。今回紹介した、ノーミングセッションも、集中討議による議論も、主要成功要因作りも、全てお互いに腹を割って議論するための工夫でもある。

「ただでさえ忙しいのにそんなことを悠長に時間は無い」と思われるかもしれない。だが、意思決定や合意形成が難しいプロジェクトであればあるほど、最初に時間を掛けてチームを1つにしたい。内部から抵抗が生まれて後から空中分解することになるだろう。


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