メディアプランナーのつぶやき。ITおよび製造業のマーケティングについての考察。ときどきマンガとアニメ。

シャープの液晶材料研究と酒造メーカーの挑戦が生んだ「-2℃の日本酒」

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ある情報を発信すると、それにまつわる情報が逆に集まってくる――。そんな話をどこかで聞いたことはないでしょうか? メディアという仕組みはその最たるものではありますが、そうした組織でなくとも、個人の趣味や仕事の世界でも同様の現象が起こり得ると思っています。

今回、私のもとへ飛び込んできた最初の情報は、「新しい日本酒が出ますよ」というお話でした。

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FacebookやInstagramなどで日常的に日本酒の写真をアップしていると、周りから「(山岡さんは)日本酒が好きな人」と認識されるようになり、自然とおいしい日本酒の情報が集まるようになってきました。さらに、仕事で知り合った多くの方々ともFacebookでつながっていき、そうしたパーソナリティーが共有され、最近では「ものづくり飲兵衛会」という会合を開くまでになりました。ものづくり界隈(かいわい)の人たちがただ集まって飲んでいるだけなのですが、面白いものでそこから別の仕事につながったりもします。

今回もそうした流れで、クラウドファンディング「Makuake」に勤めている知人から「山岡さん、新しい日本酒のプロジェクトが始まるので、飲みに来ませんか?」と、お誘いをいただいたのでした。

しかし、よくよく話を聞いてみると、このプロジェクトは"単に新しい日本酒を作る"というレベルの話ではありませんでした。実は「-2℃で飲む」という、かつてない「新しい日本酒のジャンル」の創出であり、液晶材料の研究で培った技術を他の製品でも使えないか? と模索していたシャープと、日本酒業界で新しいことに挑戦したいと考えていた埼玉の石井酒造との「出会い」によって生まれた、イノベーティブな新製品開発の物語だったのです。

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▼-2℃で味わう新しい日本酒体験。
雪がとけるように味わいが変わる「雪どけ酒」冬単衣-Makuake
https://www.makuake.com/project/fuyuhitoe/

日本酒は、飲む温度帯によって10段階の呼び名が付けられているのですが、これまで氷点下の温度帯は存在しませんでした。そこに切り込んだのが、2017年3月28日からMakuake限定で先行予約が開始された「雪どけ酒」冬単衣(ふゆひとえ)です。

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この冬単衣自体はまだこれから仕込みをするところでしたので、私が体験させていただいたのはこの「雪どけ」という新しいジャンルでの飲み方でした。-2℃で口に含むと、まずキリっとした冷たさを感じるのですが、その後にゆっくりと香りや甘みが口の中に広がっていき、これまでにない味わい方を楽しむことができました。

この「-2℃」という絶妙な温度を保つのに必要なのが、シャープが独自に研究開発した蓄冷材料を用いた日本酒専用のバッグです。

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実は、このプロジェクトは「新しいジャンルの日本酒を作る」ことを起点としての製品開発ではなく、この「温度を一定に保つという特性を持った材料技術」をどう使えばよいかをシャープがMakuakeに相談したところからスタートしています。石井酒造との出会いも、Makuakeからの紹介だったといいます。

そして、私はそこが本プロジェクトの最も面白いポイントであるとも思っています。

シャープがMakuakeに相談を持ち掛けたのが2016年8月のこと。何とそこから約半年間で酒造メーカーなどを巻き込みながら、「新しい日本酒のジャンル」と「蓄冷材料による日本酒専用バッグ」の開発および製品化までの道筋を成立させてしまったのです。また、この技術は他の温度にも適用できるため、このプロジェクトをきっかけとして、別の製品開発にも展開可能だそうです。

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図:「氷(固体)から水(液体)への状態変化のしくみ」と「シャープが開発中の蓄冷材料」について

今回お話を伺ったシャープの担当者は「オープンイノベーションには出口が必要で、今回は奇跡のような出会いが重なって、その出口がとても早く見つかった」と、ここまでのプロジェクトを振り返ります。しかし、その出会いのきっかけを作り出したのは、まぎれもなくシャープ自身であり、自らMakuakeに相談したことから始まっています。日本の大手メーカー各社が、オープンイノベーションの取り組みに着手し始めていますが、ただ待っているだけでは、今回のようなスピード感のあるプロダクト開発は実現できないでしょう。

企業規模や業界といった垣根を越え、「自ら動き、発信すること」こそが、情報を集め、そして「仲間」を集める一番の近道なのかもしれません。

【関連リンク】

-2℃で味わう新しい日本酒体験。雪がとけるように味わいが変わる「雪どけ酒」冬単衣-Makuake

社内ベンチャー「テキオンラボ」で保冷バッグを新開発 - SHARP ニュースリリース

シャープ開発の蓄冷材を使用したマイナス2度の日本酒登場 体温によって段階的に味わいが変化 - ねとらぼ

Comment(2)

コメント

くろねこ

過冷却な日本酒は以前からあったので、かつてない新しさのフレーズに違和感がありました。シャープが技術面からアプローチしたからでしょうか?

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