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放送におけるデジタル技術の活用による映像制作

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総務省は2023年12月26日、「放送コンテンツの制作・流通の促進に関するワーキンググループ(第10回)」を開催しました。

本グループでは、コンテンツ制作・流通に関わる人材の確保・育成方策を含む制作・流通環境の改善の在り方などについて、議論・健闘を行っています。

今回はこの中から、放送におけるデジタル技術の活用による映像制作についてとりあげたいと思います。

ローカル局が自主制作するコンテンツは報道・情報番組等が主であり、番組自主制作比率はおおむね10%程度と低い数値となっています。

従来のコンテンツ制作

コンテンツ制作におけるデジタル技術の活用では、従来のコンテンツ制作とデジタル化したコンテンツ制作の比較をまとめています。

従来のコンテンツ制作では、企画段階では、カメラワークや動きなどが具体化されていないため、撮影現場において調整が必要。また、映像素材を全て撮影するため、膨大な量の撮影や撮り直しが発生していました。

また、専用機器のある放送局内の編集室で編集を行うため、撮影現場での編集や、撮影と同時並行での編集
が困難。膨大な量の映像を編集するため、多くの人員・コストが発生していました。

さらに、撮影データや編集データを収録したテープを物理的に持込み編集や放送を行うため、時間を要する、紛失のリスクなどの問題が発生していました。

デジタル化したコンテンツ制作

デジタル化したコンテンツ制作の取り組みもみていきたいと思います。

VFX(バーチャルプロダクション)の活用により、企画段階にて、完成イメージの3Dモデルを作成し具体化することで、撮影を効率化。また、実写映像が必要な部分のみの
撮影となるため、撮影コストが減少するといったメリットを挙げています。

また、クラウド化により場所を選ばず編集が可能で、撮影が終わった映像から即座に編集が可能。撮影・編集データのオンラインでの転送や放送・配信用フォーマットへの自動変換など、作業間で発生する時間・費用を軽減するといったメリットもあります。

さらには、AIの活用により、ダイジェスト映像の自動生成など編集作業を効率化するといったこともできます。

コンテンツ制作ではAIの活用はさらに増えていくと想定されます。

スクリーンショット 2024-01-07 10.54.20.png

出典:総務省 放送コンテンツの制作・流通の促進に関するワーキンググループ(第10回) 2023.12.26

デジタル技術・最新技術の活用による映像制作では、VFXの活用(バーチャルプロダクション)、映像制作現場のDX支援やAIの活用(自動ダイジェスト編集)、の事例が紹介されています。

映像制作現場のDX支援では、クラウドを活用し、シームレスな映像制作ワークフローを実現。現場からネットワークにつなぐだけで、省力化および機材数の最小化と、リモートによる分散型ワークフローが可能になり、約30%の業務効率化を実現するといった取り組みが紹介されています。

VFXの活用(バーチャルプロダクション)では、背景映像の仮想空間と実物の被写体を同時に撮影し、合成する制
作環境を実現することで、クリエイターの想像力や演者の表現力を再現に引き出し、コンテンツの価値を高めること
に貢献するといったことも挙げています。

AIの活用(自動ダイジェスト編集)では、アーカイブされた映像をもとに、各種認識技術とAIを用いて、スポーツ試合のOA映像からニュース番組で使用するダイジェスト映像を作成する編集作業を自動化。

スクリーンショット 2024-01-07 10.55.11.png

出典:総務省 放送コンテンツの制作・流通の促進に関するワーキンググループ(第10回) 2023.12.26

AIの活用(リアルタイムでの制作・流通支援)では、AIを用いた映像や音のコンテンツ解析をリアルタイムに行えるシステム(インターネット接続なしで動作)を用いて、英語テロップの日本語自動変換、顔認識、自由な位置関係のCG合成、映像自動監視(番組のエラーを認識し、警告)などを生放送でも多数活用し、番組の品質向上と制作作業を効率化するといった取り組みも紹介しています。

マーカー型ARの活用では、フリップボード上のARマーカーの大きさ・向き・角度に対応したAR(拡張現実)素材を、フリップボードに映し出し、1枚のフリップボードで多様な情報発信が可能となり、制作作業を効率化する取り組みも挙げています。

出典:総務省 放送コンテンツの制作・流通の促進に関するワーキンググループ(第10回) 2023.12.26

また、デジタル技術・最新技術の活用による新たなサービス展開では、NFTの活用、番組販売のEコマースシステム、メタバースの活用の事例も紹介しています。

出典:総務省 放送コンテンツの制作・流通の促進に関するワーキンググループ(第10回) 2023.12.26

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