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上空・宇宙における多層的な空間利用は拡大

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デジタル技術の進展に伴い、電波の利用が陸・海・空・宇宙などあらゆる空間・あらゆる社会経済活動において普及・進化しつつあります。

電波利用で上空・宇宙における多層的な空間利用の拡大がイノベーション創出の源泉となることを見据え、電波をデジタル社会の成長基盤として、ビジネスチャンスの一層の拡大に繋げることが重要となっています。

総務省は2023年11月15日、「デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会(第1回)」を開催。デジタルビジネス拡大に向けて、今後の電波利用の将来像に加え、電波有効利用に向けた新たな目標設定及び実現方策について検討することを目的としています。

デジタルビジネス拡大に向けた電波政策の課題

今後も需要増大が見込まれる電波を最大限に活用し、有効利用するために検討すべき課題を以下のとおり、5つ挙げています。

1.デジタルビジネス拡大に向けた電波利用の在り方
2.陸・海・空・宇宙等あらゆる空間における電波利用の拡大に向けた対応
3.周波数移行・再編・共用の在り方
4.電波利用環境の確保の在り方
5.電波利用料制度の見直し

ここでは、「2.陸・海・空・宇宙等あらゆる空間における電波利用の拡大に向けた対応」について、焦点をあてます。

上空・宇宙における多層的な空間利用の拡大

電波の利用は、陸・海・空・宇宙のあらゆる空間・あらゆる社会経済活動で進展しつつあり、新たなシステムの円滑な導入に向けた周波数の確保や、研究開発、制度整備等に取り組んでいくことが不可欠となっています。

以下の図では、高度約36000kmでは静止軌道衛星、高度約500km~は非静止軌道衛星により新たな利用が見込まれる空間・空域としての期待が高まっています。そして、高度80~100kmではHAPS(High-Altitude Platform Station, 高高度プラットフォーム)による上空利用の拡大が進む可能性があります。

スクリーンショット 2023-11-25 13.40.21.png

上空・宇宙における多層的な空間利用の拡大
出典:総務省 デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会(第1回) 2023.11.15

HAPSのサービス化に向けた動き

HAPSはサービス提供に向けた動きが進もうとしています。SpaceCompass及びソフトバンク(旧HAPSモバイル)が、HAPSへの携帯電話基地局の搭載に向け、無線設備や機体の技術開発、制度整備、更なる高度化に向けた研究開発等を推進しています。

2025年度までに実証・デモンストレーションを実施後、商用サービスを開始する予定で、まずは島嶼部等をスポット的にカバーするサービスや災害時での活用を想定し、将来的には高速・大容量サービスの全国での提供及び海外展開を見込んでいます。

国際的にHAPSを利用するための環境整備を、無線通信規則(RR)の改正を日本から提案。世界無線通信会議(WRC23)にて検討予定となっています。

HAPSの開発事例は以下のとおりです。

出典:総務省 デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会(第1回) 2023.11.15

サービス展開のイメージ

サービス展開のイメージですが、2025年度以降、災害地域、島嶼部等をスポット的にカバーするようなスモールスタートからとなるでしょう。特に島嶼部では、電波の届かない箇所が多く、利用ニーズも高いと想定されます。

スモールスタートでの取り組みを踏まえ、より高速・大容量のサービスを全国で展開していくことも想定しています。

出典:総務省 デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会(第1回) 2023.11.15

主な非静止衛星コンステレーションの動向

多数の非静止衛星を一体的に運用する「衛星コンステレーション」の開発・展開が欧米企業を中心に進展し、衛星通信サービスがグローバルに提供。日本の事業者はこれらの企業との業務提携し、国内でサービスを展開しています。

衛星コンステレーションの実現によって衛星通信の高速化が可能となり、ブロードバンドサービスへの利用のほか、携帯基地局のバックホールとしても活用が進みつつあります。

また、専用のアンテナ・端末を必要とする従来の利用形態に加えて、スマートフォン等から衛星通信の利用を可能するサービスも計画されています。

主な非静止衛星コンステレーションの動向出典:総務省 デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会(第1回) 2023.11.15

今後の展望

日本国内では、島嶼部などを除き、固定・移動回線の普及率も高く、現時点での利用用途が中心であれば、電波政策が推進されたとしても、上空・宇宙における多層的な空間利用における電波利用は限定的で収益獲得モデルが難しいことも想定されます。

ドローンや空飛ぶクルマなどの既存のイメージに加えて、電波を多層的な空間利用を可能にする、これまでの創造を超える新たなビジネスモデルの創出・展開が期待されるところです。

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