離陸する電子書籍ビジネス(2):電子書籍リーダーの攻防(CESから)
(1)でも紹介しましたが、調査会社米Instart社の調査によると、世界における電子書籍リーダーの普及台数は米国を中心に300万台に対し、2013年には2860万台に達すると予測しています。また、米調査会社米アイサプライの調査によると、2009年の電子書籍端末の全世界の販売台数は500台を突破し、2010年は1200万台にまで急増すると予測しています。
現在電子書籍リーダーのシェアにおいては、米市場でシェア65%とソニーの約30%と2社で9割以上のシェアを占めていますが、今後の事業者の参入によってシェアは大きく代わり業界地図が塗り変わる可能性も十分に考えられます。
米ライスベガスで1月7日に開催された世界最大級の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」では、初めて、電子書籍関連のコーナーが設けられており、これから本格的に電子書籍市場が動き出すといった予兆を感じることができます。いくつか注目すべき電子書籍リーダーをあげてみましょう。
英ベンチャー企業のプラスチック・ロジックは、電子書籍リーダー「QUE proReader」を発表し、オンラインストアで予約受付を開始し、4月に米国で発売される予定です。
端末のディスプレイは、10.5インチで通常使われるガラスよりも丈夫な独自開発のプラスチックを使っています。将来的にはYahoo!、Google、Windows Live、Microsoft Exchangeのメールと予定表を直接QUEで閲覧できる計画をたたています。また、「ぺーパーレスな書類ケース」と呼んでおり、他社の電子書籍リーダーとの差別化をはかっています。価格は容量4GバイトでWi-Fiのみ対応モデルが649ドル、8GバイトでWi-Fiと3G対応モデルが799ドルとなっています。
また、韓国のサムスン電子も電子書籍市場に参入しています。注目されるのは、柔軟な電子ペーパー使った11.5インチ電子書籍リーダーです。米出版社Hearstの小会社のSKIFFが発表し、年内に米国で発売を予定しています。解像度1200×1600ピクセルの11.5インチのフルタッチディスプレイとこれまで発表された電子書籍リーダーの中で最も最薄なのは魅力的です。
そして、採用するステンレススチールホイルを基盤とする次世代電子ペーパーディスプレイを採用しており、薄くて柔軟性があり、多くの電子書籍リーダーで使われているガラス基板の電子ペーパーと比べて、耐久性に優れるということです。
マイクロソフトは、タブレット型の「Slate PC」のプロトタイプを披露しています。アマゾンの「Kindle for PC」でのデモを行っています(関連記事)。
その他、ネット閲覧用の3.5インチのカラー画面を搭載する米スプリング・デザインの「Alex(アレックス)」や本のように閉じることができ、両面に白黒とカラーの画面が搭載されている米アントラージュ・システムズの「eDGe(エッジ)」なども展示されています。 一方、圧倒的立場にいるアマゾンはCESで「キンドル」の出展をしていません。
特に、プラスチック・ロジックの「QUE proReader」と、サムスン電子が開発したSKIFF(スキフ)社のリーダーは、端末の機能に限って言えば、アマゾンの「キンドル」やソニーのリーダを脅かす可能性を持っていると言えるのではないでしょうか。今後、電子書籍リーダーと電子書籍コンテンツを提供する事業者との連携など、様々な業界再編がおきることが予想されます。
次回は、アマゾン対抗の最右翼となるソニー、グーグル、アップルなどがどのように業界地図を変えようとしているか、少し整理をしてみたいと思います。
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