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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

スマート革命とスマートテレビ、NHK放送技研のハイブリッドキャストは国内のインターネットとテレビ視聴者にアピールするか!!?

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<序文>

 恒例のNHK放送技術研究所による技研公開が実施されました。NHK放送技術研究所の成果を一般公開するイベントです。2013年の技研公開は530日から62日の間に実施されました。筆者も参加しましたが多数の人々が見学に訪れてスマートテレビのハイブリッドキャスト(国内放送業界の標準となる)やスーパーハイビジョン(8K)のデモに見入っていました。

 

特にNHK放送技研がデザインしたハイブリッドキャストは総務省の支援の下、IPTVフォーラムが標準仕様作りを主導しており、2013年中に対応テレビや放送も開始されると見られています。対応テレビは各家電メーカー各社(シャープ、パナソニック、東芝、三菱電機)から販売されると見られています。またKDDIAndroid搭載セットトップボックス「Smart TV BOX」によるハイブリッドキャスト対応版が展示されていました。既に東芝は5月28日に対応テレビを発表しています。(以下の「レグザ Z8Xシリーズ記事参照)

 

既にタブレットもスマートフォンもリモコンとして扱われています。

 

スマートテレビ側にブラウザーとして従来からのデータ放送用のBMLではなくHTML5を搭載するハイブリッドキャストは一般視聴者に普及するのでしょうか?

 

★★技研公開2013

 

NHK技研公開2013HTML5と放送の連動「ハイブリッドキャスト」などを展示

 

★★ ハイブリッドキャスト、スーパーハイビジョンの最新技術を披露--NHK技研公開

 

★★ Hybridcast」はテレビとネットの融合を実現するか

 

★★4K対応液晶テレビ「レグザ Z8Xシリーズ」の発売について

 

 

Hybridcast 技術仕様書

 

               
               
             

放送とHTML5コンテンツが連動する「ハイブリッドキャスト」。年内にも試行サービスが開始される予定

<出所:インプレス>

 

       
         
            
             
               
               
             
放送局以外の事業者もアプリを提供できる仕組みについては現在検討中             
            
             
               
               
             
ハイブリッドキャストアプリの制作支援ツールなども展示

<出所:インプレス>

            
         
       
      

<ハイブリッドキャストの基本原理>

 ハイブリッドキャストは従来、データ放送から送られてきた内容をリモコンのdボタンを押すことによって放送画面を縮小しデータ放送の内容を表示していました。しかしハイブリッドキャストではブラウザーがHTML5に変わる為、データ放送の代わりにインターネットから表示内容を引っ張ってきます。これが最も基本的なハイブリッドキャストの使い方です。そしてインターネットから見逃し放送やYouTubeなどの動画を引っ張ってきてHTML5により画面に表示すると言った具合です。テレビの制御信号がテレビ側のHTML5アプリを立ち上げてテレビ画面に関連情報やスポーツ選手のプロフィールなどを表示することも可能です。

 

HTML5アプリを使うかどうかは別としてここまでは、既に国際標準化が終了している欧州(EU)のHbbTVと基本は変わりません。ハイブリッドキャストもHbbTVも共に放送波とインターネットからの動画や情報を共に併存させて画面を形成する思想だからです。(HbbTVの場合は従来アプリを活用)

 

<独立型サービスと連動型サービス>

 ハイブリッドキャストで面白いと思ったのは番組からの「独立型サービス」と放送番組との「連動型サービス」です。

 

「独立型サービス」と「連動型サービス」共にアプリを活用しますが、独立型サービスの場合は番組との関連が無い為、別にスマートテレビはハイブリッドキャストで無くても構わないのでこれ以上触れ無い事にします。(従来からのデジタルテレビでも構わない)

 

面白いのは番組連動型サービスです。この基本的な仕組みは以下のようになっています。

1) 放送波にアプリ制御信号を埋め込む。

2) 放送波を受けたハイブリッドキャストのテレビ側にあるHTML5アプリがタブレットやスマートフォンのアプリを自動的に起動させる。また制御する。

3) タブレットやスマートフォンのアプリとハイブリッドキャストのテレビ側のHTML5アプリを連動させる。

 

<良くできている民放の番組連動型サービスアプリ>

 

 デモを見る限りフジテレビやTBS、WOWOWなどの番組連動型サービスアプリ(テレビ側はHTML5、タブレットやスマートフォンはアプリ)は良くできていました。

 

 例えばTBSが実施していた歌番組の「カウントダウンTV」のデモでは、歌番組の進行に伴ってスマートフォンの画面の表示内容が自動的に変化します。またカラオケの第一興商と組んで歌を視聴者が一緒に唄えば、スマートフォン側のアプリが採点してくれます。そして歌い終われば結果をテレビ側のHTML5アプリが吸い上げてインターネット経由で集計し、テレビ画面に集計結果を表示します。スマートフォンで作った自分のアバター姿を表示する事も出来ますし、当然、遠隔の友達と競う事も出来ます。(複数人のアバターの同時表示)

 

ここまで来ればもうこれは完全にM2M型の連動ですね。但し、ハイブリッドキャストのサービスに閉じている点(ハイブリッドキャスト対応テレビの購入前提)が特徴ですが。

 

フジテレビのデモでは複数の女性歌手が歌っていてその中の一人にタブレットでフォーカスするとその後は彼女ばかりをテレビ画面に表示します。インターネットとテレビを連携すれば簡単にできる訳ですね。(この場合、全体の放送は放送波を使い、各歌手の映像はインターネットから来ます)

 

WOWOWさんの事例では、全国の視聴者がアバターになってテレビ画面下に表示されていました。自分のアバターを飛んだり跳ねたりさせると盛り上がり度が上がり、全国のファンの番組進行中の盛り上がり度がテレビに表示されます。

 

<番組「連動型サービス」はIPTVフォーラムによる閉鎖的アプローチ>

 「連動型サービス」は二画面方式によるサービスです。

これは明らかに一種のクローズな垂直統合型のアプローチと考えられます。

何故ならばIPTVフォーラムが標準化したハイブリッドキャスト対応テレビ(HTML5対応テレビ)が家庭に入っている事が前提であり、IPTVフォーラムの標準化に基づくSDKによるHTML5のアプリ開発が前提だからです。テレビ側のアプリは管理されたアプリ(マネッジドアプリ)としてIPTVフォーラムの標準化対応チェックの後、IPTVフォーラムが今後立ち上げる見込みのアップストアなどから提供される形になります。従がって「連動型サービス」の場合には、全てのテレビ側アプリはIPTVフォーラムの管理下に置かれることになるでしょう。テレビ側のHTML5アプリに連動したタブレットやスマートフォンの従来アプリの開発がそれに続きます。

 

またこのやり方だとゲームのような独立型アプリは兎も角、番組連動型のテレビ側アプリは実質的に放送業界の管理下におかれるでしょう。

 

第三者がテレビ側アプリのSDKを活用してタブレットやスマートフォン上で動く番組連動アプリを開発し、それをグーグルプレイやアップストアから提供する場合、どうなるかは全く不明です。(実際問題なほとんど無いでしょうが)

 

<面白ければ売れるだろうが・・・・・>

そのようなテレビ局側が一方的に管理するテレビは生活者にとって面白ければ売れるでしょうが、果たして実際はどうでしょうか。テレビ市場は2010年の年間約2,500万台の出荷から2012年度には600万台を切るところまで縮小しています。

 

欧米のスマートテレビのアプローチは、主に操作性に重点を置いており、マイクロソフトのXboxOneやアップルテレビの話題もそこに集中しています。またスマートテレビとタブレットやスマートフォンの自動連携は、テレビ側の音声信号などを上手く活用しており、ハイブリッドキャストのような特別仕様のテレビは不要です。従来型のデジタルテレビでも番組の進行に合わせたタブレットの画面遷移を自動操作できます。(ABC放送のグレートアナトミーなど)

 

 日本の放送業界のハイブリッドキャスト標準の場合、各家庭に十分普及するにはかなりの時間がかかりそうです。

 

ハイブリッドキャストの標準仕様がガラパゴス的だとしても恐らく各テレビ局は、それを参考にしつつ実際的なABC放送などの米国のテレビ局の動きを同時にフォロウするのでは無いでしょうか。

 

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