スマート革命とブランド、アップルのiPhone 5が計画程、売れない訳
<序文>
アップルのiPhone 5が当初計画より売れておらず、その為アップルは2013年第一四半期の部品の発注を計画の半分に据え置いたと米国の各紙が報道しています。
iPhone 5が開発されて既に5年が経っており、アップルの得意な上澄み顧客にも市場の飽和感が出ているようです。
株価も最高時(昨年9月)の700ドルから500ドルまでさがりました。
一方ライバル企業はサムスンだけではなく、中国のファーウエーなどがアンドロイド勢が伸びています。
★★ iPhone 5 PANIC at Apple? Demand is 'weak'
★★ Apple、「iPhone 5」の需要軟化で部品注文を削減---米メディアの報道
<出所:iPhone5、wikipedia>
<ハードウエアブランド神話は崩壊する>
一人一台のパソコン時代から一人が七台のスマートデバイスを使い分けるスマート革命(ポストPCコンピューティング)の時代になって「モノ支配論理」から「サービス支配論理」への転換が進んでいます。新しい創造の経済の下では、「仕様の死」「バリューエンジニアリングの崩壊」と呼ばれているように、ハードウエア=モノの価値はどんどん下がります。一方ソフトウエアが作り出すサービスに基づく経験価値が重視されます。豊かな物質文化から自己表現による経験の創造の時代に移行し始めています。
ハードウエアの価値は、ムーアの法則(18か月で生産性が倍)やギルダーの法則がパソコンからサーバー、更にスマートフォンやスマートテレビなどの家電全般、自動車や産業機械に波及し始めています。こうしてモノの値段はどんどん下がり、逆に生産性は確実に高まります。日本家電の崩壊もこの流れに沿ったものです。(スマートデバイスの低下価格化の波)
更に発展途上国の中間層市場からの下げ圧力が、この傾向に拍車をかけています。(例、インドのタタグループは二千ドルの車を作った)これらの流れが相乗して第三次産業革命が動き出したと言う見方が有ります。
<ブランドが通用するのは上澄み市場だけ?>
アップルはこの傾向の中で唯一ブランド価値を全面に出して50%前後と言う粗利を稼いでいました。iCloudやItunesなどサービスの価値をハードに転嫁して稼いでいたと考えられます。しかしこの戦略が通用するのは先進国の上澄み市場だけであり、それがiPhone 5に関しては飽和状況になり始めています。
そうなれば今後アップルは、発展途上国向けや一つ下の層向けのiPhone を計画すると共にスマートテレビなど上澄み層がとれる新市場を狙い始めるでしょう。
例えばパソコン市場におけるマックの値付けは、一昔前のソニーのプレミアム価格に近い戦略です。(他社より少しだけ確実に高い)今後のiPhoneは、下の層を狙う製品を出すにせよ出さないにせよ、昔のソニーの戦略に移るかもしれません。