SaaSをリードしたセールスフォースがスマート革命に適応できないと言う見方は正しいか?
<序文>
テッククランチにシリコンバレーの投資家の記事が掲載されています。それによればスマートフォンやタブレットの社会における普及度合いは、驚異的なスピードだそうです。(下記掲載のMITの調査結果)
記事の主題はSaaSをリードしたセールスフォースの運命は技術転換における選択を間違えたため、今後明るくないと言う内容です。しかしクラウドコンピューティングにおいては、セールスフォースはSaaSをリードした英雄企業とされています。その企業が既に時代についていけないとなれば、まるで平家物語のような早い展開です。
その理由は驚異的なスピードで進むスマート革命(モバイルを中心としたポストPCコンピューティング)に対応できていないと言う指摘です。そしてセールスフォースはソーシャルネットワーキングのチャター等HTML5に過度に集中し、iOS やAndroidを無視していると言う点が危惧されます。
確かにチャターが参考にしたとされるフェースブックはネイテイブアプリを軽視してブラウザー中心のHTML5を優先し、その結果、二年間と言う貴重な時間を失い、株価は低迷し、2012年の予測ではツイッターにさえスマートフォン関連の広告売り上げで抜かれるだろうとされています。
フェースブックのCEOマーク・ザッカーバーグさんは、「HTML5優先の施策を自己批判し、ネイテイブアプリも同等に力を入れ始め」ました。ではセールスフォースは企業SNSのチャター開発などでiOS やAndroidを無視しし続けることが出来るのでしょうか?
ICT業界では大きな変化は10年ごとに起こり、早晩、Windows8によるパソコンの再発明も含め、2010年代の企業内にはスマートフォンやタブレットが溢れる可能性があります。それにセールスフォースがついていけるのかが主題です。(CEOのマーク・ベニオフ氏も古巣のオラクルと喧嘩している余裕はなさそうです。)
★ ★ How Will Salesforce Adapt To The Next Platform Shift: Mobile Computing?
★★ Are Smart Phones Spreading Faster than Any Technology in Human History? (MITの調査結果)
<武田にも鉄砲隊は存在したという歴史的事実>
テッククランチの記事はセールスフォースは歴史に学んでいないと主張しています。そしてコダシル型データベースがリレーショナル型に転換した時や大型汎用機の時代が去ってサーバーへのダウンサイジングが起こった歴史を想起せよと述べています。確かに変化は数年の内に一挙に進みました。
筆者自身が思い当たるのは長篠の戦いです。長篠の戦いにおいて織田信長に負けた武田家にも鉄砲隊は存在しました。しかし重要な点は、飽くまで武田の主体は騎馬隊であり、鉄砲隊は補足的なオプションだったと言う点でしょう。言うなれば控えの選手といった処です。一方織田軍団では鉄砲隊は主力メンバーでした。
技術の変化の時期には、中途半端ではだめで一挙に転換しないと時代に捨てられると言う歴史の教訓は確かにあります。
セールスフォースは、HTML5に注力し、ネイテイブアプリは全く手を出していません。わかり易く申し上げれば鉄砲隊は全く持っておらず、騎馬隊にピストルで武装させたイメージです。フェースブックのように今から鉄砲隊を作っても遅くないと思うのですがいかがでしょうか。
<問題は変化のスピードをどう見るか>
国内企業は一時期、シンクライアントと言うことでノートパソコンが一斉に導入され、企業内のデスクトップパソコンが一掃されました。また一部の企業ではアップルのiPadがどんどん入っています。記事の調査結果が正しければ、今後Windows型のタブレットの導入も含めてパソコンがスマートデバイスに代わります。(懐疑的な日本企業も少し経てばば一斉に動くでしょう。)
変化がゆっくりならば、HTML5でも暫くしのげるかもしれませんが、上記の調査結果が正しいとすれば、セールスフォースもフェースブックの道を歩むしかないでしょう。