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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

ソーシャルゲームトップ企業ジンガの没落を促したスマート革命の破壊力!!

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<序文>

 パソコンとブラウザーの上に乗っかったフェースブックのプラットフォーム上で2007年から急成長した米国ソーシャルゲームのトップ企業「ジンガ」が没落を始めています。一時ソーシャルゲームは日の出の勢いであり、仮想社会サービスのセカンドライフを蹴散らし、コンソールゲームさえ脅かしていました。いわゆるカジュアルゲームのジャンルの隆盛はここにきわまりました。

ソーシャルゲームと言えば国内でもミクシィにおけるサンボクなどが有名でした。

 

しかし「ジンガ」は2012年は第二四半期、そして仮発表された第三四半期共に赤字決算であり、幹部社員がどんどん辞めています。役員だけで10人前後に達すると言う報道もあります。

株価も20123月の15ドルから大幅に下がり、2ドルに迫る酷さです。

2011年秋上場した勢い、フェースブックの上場の先鋒と騒がれた頃の勢いは既にどこにもありません。ジンガの危機は売り上げの10%以上をジンガに依存しているフェースブックの危機をも深刻化します。

一体、何が起こっているのでしょうか?

 

★★ Why Zynga Failed



★★Zynga plummets 17% after cutting 2012 outlook


★★Five Takeaways From Zynga’s Earnings Outlook

 

Zynga

<引用元:CNN>


<フェースブックの揺らぎの影響が直撃>

ジンガの没落、そしてパソコン+ブラウザーベースの古い形のソーシャルゲーム全般の没落に関しては色々なレポートが出ています。

第一は広告売り上げの影響です。ソーシャルゲームはフリーミアムモデルを採用しており、フェースブックから集めた参加者に売りつけた一個100円―500円程度の「アイテム」を大量に販売して稼いでいました。(有名なマイクロ取引、アップ経済)。そして稼いだお金の二割程度を広告売り上げとしてフェースブックに還元していました。それによりジンガは大量の参加者を集め、マイクロ取引で大もうけをしていました。このサイクルの関係により両社は持ちつ持たれつの関係でした。そしてソーシャルゲーム各社もジンガの真似をしました。また一般広告主企業も其れを真似て、ファンページ=ブランドコミュニティを立ち上げる目的で一挙に参加者を集めるため、大量の広告売り上げをフェースブックにもたらしました。

 

しかし2009年頃、一クリックあたり0.27ドルだった広告費が2012年には一クリックあたり0.88ドルに跳ね上がったといわれています。理由はフェースブックに対する期待が高まり、その結果、広告単価があがりました。まずこれがジンガの収益面を直撃しました。

 

次に幾ら5分間楽しめる単純なクリックゲームでも5年も経てば飽きが来ます。その結果、多少複雑なゲームが求められ、開発費も増加傾向にあります。

 

<スマート機器の台頭に翻弄されるジンガ>

しかし最も大きな要因と見られているのは、スマート革命(ポストPCコンピューティング)によるフェースブックの揺らぎです。フェースブックへのアクセスはスマート機器からのものがどんどん増加し、既に50%を超えていると言われています。それにパソコン+ブラウザーゲームのジンガなど古いソーシャルゲーム企業は売り上げ面で十分には追随出来てていません。そしてカジュアルゲームを楽しむ生活者は次第にモバイルゲームに移行しています。

ジンガは滞在時間でモバイルゲームのトップ5ゲーム中、3ゲームを抑えています(ニールセン調査)が、売り上げ面での貢献は不十分です。ファームビレのようなビレ=村シリーズの落ち込みを補うには至っていません。グーグルプレイやアップストアに30%の手数料を支払う点も効いていると見られています。

 

古いソーシャルゲームでは、例えばゲーム当たり1千万人のプレーヤーの数%だけがマイクロ取引によるショッピングをしてもジンガは大儲け出来ました。一方1個1ドルとか2ドルのモバイルゲームの場合には100万個単位で売れないと同じようには稼げません。その上30% をアップルやグーグルに持っていかれます。これはフリーミアムに慣れたジンガのビジネスモデルとしてはかなり苦しそうです。

 

ジンガのモバイルゲームでの活躍はまるで太平洋戦争の紫電改戦闘機隊の活躍のようです。松山沖でグラマンを45機撃墜しても選局の大勢に影響なしといったところでしょうか。

 

これらが重なってソーシャルゲームの雄であるジンガの危機が到来しています。

日本のグリーやモバゲーは元々ガラケーを対象とした企業なのでスマート機器への移行がスムースに行きましたが、ジンガなどソーシャルゲームの主流は、イノベーターのジレンマに苦しみ、遅れています。

 

それにしても「社会の液状化」と言われるほど変化のスピードが速い世界です。国内の家電メーカーに追随しろといっても無理な世界ですね。


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