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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

スマート革命に追われた国内家電メーカーの悲惨

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<序文>

20123月期決算では国内大手家電メーカーは6社全てがデジタルテレビにおいて赤字だと発表されています。特に国内のテレビ事業を中心的にけん引してきたシャープ、ソニー、パナソニックの赤字額は合計16千億円でした。その全てがテレビ関連では無いにしても、2012年には国内でもいよいよスマートテレビ時代に突入する矢先に出鼻をくじく出来事でした。

 

一方勝ち組と言われる韓国サムスン電子やLG電子は今年初めのCES2012において、幻のアップルテレビを追いかけていました。その成果は既に国内の家電量販店に於いて韓国LG電子のマジックリモコン付きのテレビが大人気となって表れています。(マジックリモコンによるゼスチャー操作、音声でのテレビ操作)これは一種のサービスです。

 

一人一台のパソコン操作時代から一人が7種類のスマート機器を操るスマート革命の時代に移り変わって、新しい個人コンピューティングの形が登場し始めています。パソコンやガラケー(簡易版パソコン)時代には着歌もありましたが、インターネット活用の主流はネットサーフィンでした。一方アップルがリードするスマート革命ではメディア消費(音楽、電子新聞や書籍、映像、ゲームなど)が主体になります。そしてモノ支配論理からサービス支配論理への転換の中でハード機器の「仕様の死」などが叫ばれ始めました。

飽くまでもバリューエンジニアリングを重視し、情報家電=スマート機器=機器の性能や機能と理解する国内家電メーカーが、アップルやサムスンなどに負けたのも当然でした。

 韓国LG電子の人気のマジックリモコン

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<出所:ITMEDIA>

 

<国内家電メーカーが追随でいないエコシステム> 

 さて国内家電メーカーの大赤字=家電敗戦の理由とは一体、どこにあるのでしょうか?一つにはオープンなモジュール部品を組み合わせる情報家電=スマート機器の生産形態で手の技に頼る国内家電メーカーは負けたとの見方があります。

 

しかしアップルのイノベーションを見れば判りますが、スマート機器群とその上に生え出たサービスの森を「摺り合わせ型生産」で作り上げている処がアップルやアマゾンの強みになっています。

 

では国内家電メーカーはどうでしょうか? ソニーもパナソニックもシャープもスマート機器の上に生えたサービスの森に2010年から2012年にかけて懸命に取り組みました。流石にアップルやアマゾンのやり方が勝ちパタンであると言う認識は持っていたからです。

では何故国内家電メーカーは負けたのでしょうか?その理由をダートマス大のロン・アドナー教授は「エコシステムの差」にあると見ています。情報家電=スマート機器や情報消費財(音楽、電子書籍、映像、ゲーム)などの業界の社会的速度(スピード)は、非常に早く、アップル、アマゾン、グーグルの持つネットベンチャースピードで動いています。それに国内家電メーカーは追随できない、社内に技術の種は十分持っているのに彼我の時差の観点で敗れたと見られています。この点の遅れは国内家電だけでは無く、モトローラやHP、デルも同じです。韓国メーカーは必死で勝ち組企業を追いかけています。

ソニーの電子書籍リーダーの事例が有名ですが、アマゾンやアップルの洗練されたサービスにフォロウするスピードが過去遅く、明らかに時差がありました。

 

一方東芝や日立、三菱電機が得意な重電の分野では、保守やシステム一括提供を含む機器とサービスの一括販売に日本企業は成功しています。これが可能な理由は重電のエコシステムが求める社会的速度が遅く、その為、時間のかかる日本の稟議制度でも十分に追随で来るためであると見られています。

 

スマート革命=情報家電、情報消費財の販売はサービスであり、一定の速度を保って新たなサービスに対応する点もまた、サービスの内と考えられます。

 

<日本の今後の進路>

 情報家電=スマート革命で負けた日本の進路は今後どうあるべきでしょうか。重電と部品産業で十分なのでしょうか?それともネットサービスに注力し、グリーやDeNAなどに頑張ってもらうのが良いのでしょうか?

筆者は時々昔のホリエモンの活躍を思い出します。もしホリエモンと三木谷さんが競争していれば、もっと国内の電子書籍は早く洗練されるかもしれません。

ホリエモンに関しては色々あったのかもしれませんが、明らかに刑が重すぎ、安政の大獄のようなネットベンチャー弾圧の要素があると言う見方があります。

もしネットサービスを重視するならば、ホリエモンのような人々が出やすい環境が必要ではないでしょうか。

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