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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

進展する電子新聞・電子雑誌のマイクロ取引、ウオールストリート・ジャーナル、ビジネスウイークの電子版の値段は地獄覚悟で激安が過ぎる!!

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<序論>

 今から2年ほど前、ある雑誌の電子版に記事を書いた時の課題は「一体、何時から電子新聞の記事売りが始まるのか?」でした。これはマイクロ取引(MICROCOMMERCEとかMICROPAYMENT)と呼ばれる微小取引です。しかし実態は記者のモティベーションの破壊を恐れた大手新聞社や一流雑誌社は、記事売りには進まず、その代わり値段を過激に下げてきました。これにはiPadの登場も絡んでいます。その結果、日本で最初に電子新聞の有料化を行った日経新聞は既に相当割高に感じられます。最も先進的な日経ですら、米国とは格差が大きくついています。

今後一体、新聞業界・出版業界はどうなるのでしょうか?

 

 

 WALL STREET JOURNAL

 

Bloomberg push "Business Week"iPad application deposit $ 2.99 month

 

 

一週間の値段が1.99ドルや月額2.99ドルで経営が成り立つのか?

 一度はルパート・マードック氏が記事売りモデルの採用を宣言した米国の一流経済誌ウオールストリート・ジャーナルですが、結局、記事売りの方向には行かず、一週間で1ドル99セント(Now Only $1.99 per week)で電子版が販売されています。理由は記者のモチベーション維持の為、「君の書いた記事は一本10セント」とはどうしても言えなかったのでしょう。

また名門経営誌のブルンバーグ・ビジネスウイーク誌もiPad版は、月額2.99ドルです。iPad application deposit $ 2.99 monthlyビジネスウイーク誌の場合には紙版が値下げされ、年間1万6千円になりました。しかし電子版が年間36ドルとはあまりに安いです。

 

こうして記事一本10セントと言われていた新聞がアンバンドリング(情報の束の分解作用)を避けた代わりに新聞や雑誌の束全体がマイクロ取引化しています。

尚、この動きを加速したのはiPadの登場でした。アップルのジョブス氏はメディア王マードック氏(ウオールストリート・ジャーナルも所有)と組んでiPad新聞のデイリー(週0.99ドル、年間39.99ドル)を始めています。

 

 これで経営が成り立つのでしょうか。筆者はこれまで以上の五月雨的なリストラが打ち続くと見ています。それにしても音楽産業をぶち壊したマイクロ取引の破壊力は凄いです。しかしこれがグーグルを寄生虫とか新聞泥棒と呼んだメディア王スパートマードック氏が出した結論ですので非常に重みがあります。米国の大手新聞、大手雑誌は確実に右へ倣えでしょう。

 

一方広告モデルだけで伸びてきたAOLはハフィントンポスト誌と合併して同時にフリーランス記者を殆どリストラしました。広告モデルではどうにもならなかった訳ですね、従ってリストラを避けるためには大手新聞や雑誌は何らかの有料化が必須だったわけです。

 

AOLが最後の賭け、ハフィントンポストを買収

AOLが最後の賭け、ハフィントンポストを買収

 

 

AOLがハフィントンポスト誌のフリーランス記者を大量解雇、無料の貢献者のみ採用!!

 

既に米国の一流紙は最終的には電子新聞やiPad雑誌のみで生き残れるよう地獄を覚悟しています。

 

一方日本の日経新聞の電子版は単独で4,000円、紙版とのセットで5,000円と牧歌的であり、地獄覚悟の米国の動きとはまだまだ値段の桁に開きがあります。

 

新聞は国内でも業界全体で年間の部数減が百万部を超え、広告費の落ち込みも景気に関わらず進んでいます。既に朝日新聞などが連続赤字でリストラを実施していますが、最も好調と見られていた大手の経済新聞ですら電子版と紙版の現状が一体、どこまで持つのか米国の動きを見ると非常に心配になります。

 

日経新聞購読

 

<どんどん進展する新聞・雑誌のマイクロ取引>

 ウオールストリート・ジャーナル、ビジネスウイークの電子版は既に激安のレベルに達しており、「情報の束の分解作用」が働かなくてもマイクロ取引が進展することを意味しています。同じことは日本でも早晩、起こるでしょう。

今更ですが2010年代には出版・新聞業界は日本も大幅なリストラを覚悟した方がいいと思われます。

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