オルタナティブ・ブログ > インターネットの第二の波とソーシャルメディアマーケティング >

テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

メディアの歴史的転換のなかで起こった東日本大震災と言う異界の登場が日本を救うか?

»

<序文>

 東日本大震災に対して日本の良さを見直す声が海外から一杯、聞こえてきます。海外報道の記事などには「略奪が起きない洗練された文明」とか「大きな揺れにコンビニのアルバイト達は逃げもしないで献身的に棚を支えた」など日本人と呼ばれる日本列島に生まれ育った人々の伝統的な文化やライフスタイルを評価する声が満ちています。またそれを受けて日本人は自信を持とうと言う掛け声が国内にも聞こえ始めています。インターネットの文脈で考えれば東日本大震災は日常と全くかけ離れた異界であり、バーチャルワールドと呼ばれる仮想世界と類似しています。異界は近代化の中で一面化した社会に必要な変化を促進する為に必要だと考えられてきました。メディアの歴史的転換が進む中、果たして東日本大震災は復興を越えて日本に21世紀型の変化をもたらし、日本を先進国からの脱落の危機と言う衰退から救うきっかけになるのでしょうか。

 

注) 異界は文化人類学や民俗学、ユング心理学などの概念であり、社会の硬直化を妨げ、社会を豊穣なものにさせるために必要なものと考えられています。異界は「かぐや姫の月の世界」だけではなく、現代の都市伝説やネットコミュニティやセカンドライフのような仮想社会も異界と考えられます。尚、筆者も阪神淡路大震災で地震の齎す異界の中身は嫌と言うほど経験しました。

 

注)JPモルガンチェースのCEOの発言

「日本人の献身的な姿勢や節度ある行動は賞賛されている。」(日経新聞)

 

 


  引用 (英国エコノミスト誌)

 この震災で、さらに意気消沈するという見方もあるが、エコノミストが過去23年観察してきたところによると、日本にはどうやら静かな革命が起きている ことが分かった。国民の政府への期待も高まり、若者層にも多様な動きが出ている。09年の総選挙で、民主党が自民党を倒して政権を握ったのは、その「革 命」の一端だったと思う。

 といって、新しい時代がまだ始まったわけではなかった。政治体制がまだ古い仕組みのままなのだ。この震災をきっかけに、透明性が高く、国民の声を汲み上げるような政治が次第にできてゆくのではないか。

引用終わり

 ★ 東日本大震災を試練に日本は自信を取り戻す――英メディアが見た大震災下の日本(1)

 (引用した英国エコノミスト誌の全文です。)

http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/7b78588dd49be0ae5802692dd4fe2e26/page/1/

 

 ★ PrayForJapanPrayFromKoreaを添えて~日本に届け韓国からのTwitterエール

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110316/1030799/

 

<明治維新の前に登場したメディア革命と異界>

 

 

引用 (英国エコノミスト誌)

京だけを例にとっても、150年間で3回、破壊されている。例えば1855年の安政の大地震、1923年の関東大震災、1945年の東京大空襲だ。日本は大きな危機を経験し、しばしば驚くべき方法でこれを切り抜けてきた。

 安政の大地震は、米ペリー提督による黒船来航(1853年)からまもなくして発生した。当時、多くの日本人が地震と黒船来航がつながっていると考えた。黒船と地震のトラウマが日本人の心理に影響を与え、これが後の、文明開化を導いたと私は見ている。

 1945年の東京大空襲によるトラウマは、戦後の経済の奇跡を達成するための起爆剤となったと思う。日本は、過去に非常に大きなトラウマを経験したが、がんばって、国が一丸となって生き延びてきた。

引用終わり

 

 

 確かに一部の海外のメディアが指摘しているように約150年前の明治維新時には、黒船の到来と同時に安政の大地震(1855年安政江戸地震)が起こり、江戸では死者約4300人、倒壊家屋約1万戸とされています。そしてペリー艦隊の黒船はその2年前に到来しています。ここで歴史の転換点となった明治維新のきっかけをメディア論と異界論で切って見ると以下のようになります。

1、 メディア論上のインパクト

黒船と言う高速で大規模な輸送形態は一種のメディア革命と考えることも出来ます。ジャンボジェットのような黒船で西欧との距離が近くなり、コミュニケーションが変化しました。

2、 異界の出現

これまで長崎の出島に閉じ込めておいた西洋、南蛮人の世界が黒船と言う形で再度、登場すると共に安政の大地震が起こり、非日常的な異界が出現しました。

 

 これが日本の人々を覚醒し最終的には、朝鮮、中国に出来なかった日本型市民社革命=明治維新を引き起こし、産業革命(文明開化、殖産興業、富国強兵)へと進んで東アジアで唯一西欧からの植民地化を免れるきっかけとなったと言う見方です。

 

一方現在起きているメディアの歴史的転換の中で日本の衰退が目立ち始めています。しかし今回の東日本大地震はそれに立ち向かうきっかけとなるかも知れないという見方ですね。

筆者はこの視点が非常に大切だと思っています。

1、 メディアの歴史的転換

インターネットがテレビ(2011年の地デジ)や新聞に対して主役の座を取って代わろうとしています。そしてグローバル社会が出現しています。現に「オフィスにはテレビが無い」ことに気が付いたNHKTBSは即座にインターネットを正式チャネルとして認定し、地震特番を流しました。ロケフリ裁判の姿勢とは、180度異なる判断をしています。

 

2、 異界の登場

これまで仮想社会=(何が起こるかわからない、問題だらけの)異界と一部のマスコミから嫌われ卑下されていたインターネットの異界(ネットの友達、ゲーム、仮想社会)に対して本物の異界である東日本大震災が出現しました。

 

 

注)メディアの歴史的転換

グローバルに進むマスメディア(新聞、テレビなど)からインターネットへのメデァの主役交代劇の意味であり、日本国内でも20117月のテレビの完全デジタル移行(地デジ)が、その転換点となるという見方。メディアの転換は社会の再編成をもたらします。

 

<異界が日本を救う>

 MITメディアラボのシャリー・タークルは、インターネット心理学の第一人者として有名です。地震が起きた時、筆者は彼女の新刊「Alone Together」を読んでいました。その中で明らかに異界の話が出てきます。ネットの異界を彼女は現実の異界と同様に異界と考えています。異界に浸ることをエリクソンのライフサイクル論を応用して一種のモラトリアムと考えています。

 

(注)モラトリアム=結果を気にしない、異常なことが出来る人生の猶予期間

 

一般に異界論では異界は人々の硬直的一面的なものの見方に打撃を与え、成長欲求を引き出し、創造性を開放するといった事が議論されています。無論、彼女の話には地震のお話は出てきませんが、アメリカの若者の欧州無銭旅行などが異界との出会いに当たり、自分探し=アイデンティティ確立を促している事例などが出てきます。

 

 東日本大震災の場合には異界との出会いが被災者のみならず、夕方電車が最寄の駅について終ぞ経験したこともない「真っ暗闇の駅前の自分を発見」するという停電のもたらす異界を経験したり、義捐金を送っている方々にもテレビで災害と言う異界を見ています。このことはある意味で「集団的な自分探し」=日本のあり方というアイデンティティの見直しを迫っていると思われます。「略奪が起きない洗練された文明」や「献身的な小さな努力」など海外から指摘されている日本列島に暮らす人々の「集団的な自分探し」の中で日本が立ち直り、復興においても国際的にもまた経済的にも21世紀型の自律をする国になることを望みます。

 ★★ Alone Together: Why We Expect More from Technology and Less from Each Other

Alonetogether51juipm8fhl_sl500_aa30  

Comment(0)